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小説の世界を感じたくて『寄席』に行く

女性の落語家、甘夏が主人公の小説『甘夏とオリオン』(増山実 著)

人が抱えている哀しみ、やさしさに心動かされた物語だったので、小説の世界、寄席をいつか体験したいと思っていました。
その「いつか」が、さきのばしグセのある私には、なかなかこなかったわけですが、

真剣に舞台にあがる人たちのエネルギーを感じてみたい!

そう思い立った日があったのです。
(エネルギー不足を感じた日だったので)

開演ぎりぎりの時間に、デパートの中にある多目的会場に到着。
当日券のみの寄席でしたが、100人入る会場は、すでにいっぱいの模様。

えっ、落語って今、こんなに人気あるんだ……。

私が知らなかっただけで
落語を楽しむ人は多いのです。

係りの人が、先に並ぶお客さんを会場に入れながら
あぶれそうな私含め、あとからきたお客さんの人数を数えながら
「入ってもらいましょう」と会場後ろの壁際に丸椅子を追加で出してくれました。

その日は、6人の落語家さんが演じられましたが
よく声が通る。
声はエネルギーやと思いました。
体に響く。
みんなそれぞれに違う味がある。

落語家さんの独特の語りは
流暢で波があって

お客さんが笑って
その笑い声も場を熱くするエネルギー。

これが生で芸をみる良さなんかと思いました。
寄席って、落語家さんとお客さんの熱さが人を元気にしてくれる。

6人の中には、女性の落語家さんがおひとり。
本の謝辞の中に、名前があった桂二葉さん。
人柄のよさがにじみ出てて
演目で演じている人物にも愛嬌がありました。

小説の中では、男性用に作られた落語を
女性の落語家、甘夏がどのように演じていくか
試行錯誤しているところが描かれています。

リアルに舞台で演じられる二葉さんを見ながら

「どんだけ稽古しはったんやろ?」

と今に至る背景を想像しました。

実際に足を運ぶことで
架空の物語が、実はリアルにあるんじゃないか。
そのぐらい、今見ている落語家さんたちと
小説の登場人物が重なる。

小説はフィクションだけど、その世界をのぞくのは自分のリアル。
もう自分の一部になっている。

たった一日の寄席体験が
ずいぶん私にエネルギーをくれました。

いつも行く本屋さんがよくいう

本を読んで心が動いたら
行動するのが大事だよ。

というのは、こういうことなのかなぁと
思ったのでした。

寄席って、みんな笑うために来ている。
笑う目的で一致しているっていい場です。

そんな世界に興味を持たせてくれたのは
『甘夏とオリオン』

また、小説の世界を
リアルに体験してみようと思います。


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