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オーストリアの給与形態〜固定残業時間とオールイン契約

昨日、私の勤めている会社の一部の社員が集められて人事部から今後の残業時間の取り扱い方について説明がありました。


これまではびこっていた”固定残業代”が今年は廃止され、残業の規定についてよりクリアにするとのことでした。
固定残業代がなくなるという噂は前からあって、私は先週個人的に人事部へ赴いてだいたいの変更内容を予期していたので驚きはなく、今月は残業なしのつもりで働き始めていました。

今後は、個人ごとに決められた残業時間上限以上に達した時間に対しては給与に乗せて月ごとに支払いが行われ、それ未満の範囲に収まっている残業時間は振替休日や時短分に使う取り決めになるそうです。

この決定を受けて多くの同僚は不満や給与への不安があったり、反響は大きいです。
私の同じ班の同僚で15時間とか20時間の固定残業代を締結している人なんかは、それだけでも取り分が多いはずなので、打撃は大きいと思います。


私の会社では、実際に機械をラインで製造する製造部門(シフト制、フレックスなし、夏と冬の製造休止期間固定)と、営業や製品管理などのマーケティング部門(フレックス制あり、年次休暇は自由な時期に取得可能)に分かれています。


マーケティング部門の大多数の人は、基本給とは別に”固定残業代”を雇用契約時に締結していました。
基本的にフルタイム雇用は週に38.5時間の勤務が義務付けられていますが、例えば固定残業代を締結している人は、義務付けられた勤務時間に加えて残業をしなければなりません。
固定の残業手当がつくので、月によるばらつきがありません。

通常勤務時間は38.5時間を均等に5で割った7.7時間で、8時9分から16時51分がこれに該当します。
昼食は12時から13時まできっちり引かれます。
もし13時より遅く戻った時は、その時点からカウントです。

日本でもみなし残業手当というのはあると思いますが、それは別にみなしの残業時間をこなさなければいけないという強制ではないと書いてあります。
けれど、オーストリアの制度の固定残業代は、締結した残業時間をこなさなければなりません。


私は転職した際に、以前の会社と同水準もしくは少々高い給料を希望提示しましたが、
その水準に届かせるために、10時間の固定残業代の枠を提示されました。

私としてはもちろん残業はしたくありません。
けれど、給与水準を維持するためにやむを得なく了承した次第です。

私たち営業部署は、オフィスでフレックスタイムで勤務する以外にも時には外国への出張がある月があります。

オーストリアでは、平日20時以降6時前と土曜日は50%、日曜日と祝日は100%の換算がされます。
計算の仕方は土曜日に5時間働いたら5x1.5で7.5時間、日曜日に5時間働いたら5x2で10時間です。
この50%と100%の残業時間は、固定残業代の義務残業時間とは別です。
固定残業代に関わる残業時間は、会社にいて働いている日のフレックスタイムでこなさなければなりません。

そのため、10時間の固定残業時間がある私は、週38.5時間の代わりに約41時間をこなすため、一日につき平均30分長く勤務しました。
朝早くきたり夕方長めに残ったり。
また、多く残業時間を達成した分の余剰時間は次の月に持ち越されるため、次の月に余裕を持ちたいとかその余剰時間を使って振替休日に使いたいと思えば、頑張れるときに頑張って残業しました。
それでも、だいたい1時間長く働くぐらいで、ごくまれに外部から来訪があってミーティングが夜遅くまでかかったとか以外は過剰な残業はしません。
オーストリアは早起きな人も多いので、7時過ぎぐらいから出勤して17時台には帰る人が大半です。
ざっくり8時5時ですね。

週末などに働いて出た残業時間は一年間温存されて、年末に「○○時間の残業があるので休みに使いたければ使ってください」というお達しが来ました。
使わなかった分は給与として12月給与分にお金で支払われました。

また、出張手当や出張先でカードが使えなかった時の現金などの自己負担は随時当該月かその翌月に支払われています。
出張先での自分で食べる食事は経費として落とせるのは顧客との食事だけで、それ以外の食事(ホテル代に含まれる朝食以外)は支給される出張手当の中でやりくり…というか自腹ですね。
なので出張で経費として払えるのは交通費、ホテル代、顧客との食事、手土産のみ。


このやり方でいいところは、出張などで週末や夜間まで働いたときの対価はちゃんと払われるということ。
残業代がプラスでつく。

悪いところは、ほとんどみんなが給料を上げるために固定残業代を締結しているので、長時間労働(とは言ってもだいたい18時までにはほとんど帰りますが)や金曜日の午後もほとんどの人が仕事をしています。
多くのオーストリアの会社では月曜日から金曜日の業務開始時間が早い分、金曜日は12時きっかりで終業になる場合が多いです。


前働いていた会社では、確か勤務時間開始が8時より前で、出勤は9時までにしているべきで、昼は30分だけ差し引かれて、夕方は16時30分以降は帰ってよく、金曜日は12時で終業でした。
オールインの契約だったので、残業代はつきません。
出張に関わるお金(出張の日の朝食、昼食、夕食、ホテル代、交通費、手土産代などなど)が全て実費で会社負担なぶん、出張手当もなく、出張に伴い時間外労働が生まれるとその時間は給与では支払われず、残業時間は自分の裁量で振替休日として消費するしかできません。
私的にはわかりやすくて好きな勤務形態でしたが、ずっと出張が続く冬の期間は土日に移動したり週をまたいで出先にいることもあったので、そういう時は+の残業代が欲しいなと思うこともありました。
オールイン契約の良いところは、会社全体が残業をしないことが当たり前の風潮だということです。
午後も夕方に近づくと新しい業務は始めない、木曜日以降は新しい課題は降ってこない、金曜日にミーティングなどはほとんどない。
効率よく仕事できる仕組みだと思います。



話は私の現在勤務している会社に戻って、私個人としては、会社が残業代を基本的に支払わない方向に舵を切るのは正しいことだと思います。
固定残業代を締結している人が、取り決めた分の残業時間をこなすために何をしているか知っています。
私の隣の同僚がまさしくそうだからです。
朝のんびり来て、頻繁に席を外したり間食したりで午前中はほとんど何も片付けないで、夕方みんなが帰るころから何通かメールを書いて19時くらいまでだらだらする。
そんな風にして残業代を稼ぐことがどれだけ非効率的か。

あくまで残業代は業務上必要に迫られた時のみ行って、社員主導でダラダラ時間を過ごすことで給料を多く得るのはそもそもおかしいと思います。
その分早く帰って別の仕事を追加でするか、基本給の高い会社に転職するしかないのではないでしょうか。

残業をたくさんしたから今年は年収が高かったと言う人もいるけど、それって費用対効果が見合ってるのか?
会社に人生を捧げて得る対価だし、会社の方針次第で左右されてしまう諸刃の剣です。


私は実際のところ、残業を毎月10時間しないといけないことを苦痛に感じていたので、給料が減っても残業なしで余暇が増えることのほうが有益だと思います。

最近たまたま、単発の副業の仕事を請け負ったので時間があるときにやっていますが、全然違った仕事をすることも気分転換になって楽しいです。
この単発の仕事が終わったら、似たような副業を考えてみようかと思います。


オーストリアの企業は基本的に、25日以上の年次休暇、病欠は傷病扱いで休暇日数には響かない、通院は勤務時間内にできる、といった条件は共通です。
誰かに気兼ねすることなく2週間や3週間休暇に行く権利をみんなが行使しています。
中には休暇中でもPCをチェックしたりするタイプの人もいますが、私は社用携帯もPCも置いていきます。

会社も、社員も、お互い貸し借りのない状態がベストだと言った人事部長の話には納得です。
まず、固定残業代がないと給料が足りないこと自体がおかしいんです。
残業代はあくまでプラスアルファととらえるべきで、固定残業代をあてにするのはどうかと。
家や車のローン、子供の教育費や固定費など、月々の支払いを大いに残業代に頼っている人は、今回の取り決めで一番焦っていると思います。
そう思うと、なるべく生活水準は低く保って置き、長期間の固定費はあまり増やすべきではないなと思います。

ローンは特に何十年もかかるので、最低限で計画しておかないと怖そうです。
今のところローンを組むような予定はありませんが。


来月以降の給与明細で、ひとまず今後の働き方は様子見ですが、残業を”しなければならない”風潮が会社からなくなることは一番嬉しいです。

社内にしみついた風習はなかなか変えるのが容易ではありません。

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