寸志・松恋の百席余談

落語立川流・二ツ目の立川寸志が、寸志滑稽噺百席を中心としたよしなしごとをプロデューサー…

寸志・松恋の百席余談

落語立川流・二ツ目の立川寸志が、寸志滑稽噺百席を中心としたよしなしごとをプロデューサーの杉江松恋とお話します。その他落語に関するお話あれこれも。

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第1回 それは「おじさん」から始まった、の巻(寸志滑稽噺百席ができるまで 前編)

杉江松恋(以下、杉江) さあ、「寸志滑稽噺百席を通して立川寸志が落語を語る」という趣旨でお話をうかがいますよ。聞き手は、会のお世話をしている杉江松恋です。 立川寸志(以下、寸志) 語ってしまう立川寸志でございます。 杉江 「寸志滑稽噺百席」というのは、落語立川流の真打・立川談四楼さんの弟子であります、寸志さんが2017年から続けられている落語会です。隔月で毎回三席、滑稽噺縛りで百席を積み上げていく。順当に行けば6年半くらいか7年くらいで結願するわけです。開始当時、寸志さんは二

    • 第二十三回「寸志さん、お得意の「鮫講釈」の元は誰の講談なの、の巻(寸志滑稽噺其の二十二)

      杉江松恋(以下、杉江) その二十二は、「浮世床」、「鮫講釈」、「反対俥」ですね。 立川寸志(以下、寸志) 「反対俥」がネタおろしです。 ■「浮世床」 杉江 じゃあ、順番に行きましょうか。「浮世床」からです。長い噺で「将棋」「本」「夢」など、分解が可能ですから寄席ではいっぺんに全部聴くことは珍しいですが。 寸志 このときの「浮世床」はフルバージョンでやってます。初演の会の「寸志ねたおろし」でネタおろししたものです。憶えたのはひと月くらい前です。たぶん(立川)左談次師匠の音源

      • 第二十二回「寸志さん、「桃太郎」は昭和の落語黄金期テイストでやりたいの、の巻(寸志滑稽噺百席其の二十)」

        杉江松恋(以下、杉江) 次は第二十一回ですね。このときは「桃太郎」と「悋気の火の玉」と「三方一両損」です。ネタおろしはどれですか。 立川寸志(以下、寸志) 「悋気の火の玉」ですね。形としては(八代目桂)文楽師匠の形そのままをやらしてもらってる感じです。やはり雰囲気が大事な噺ですから。 杉江 ほう。では「悋気の火の玉」から伺いましょうか。 ■「悋気の火の玉」 寸志 良い噺ですよね。寄席っぽくて、さらにシンプルでいいと。この噺で難しいのは、女将さんとお妾さんが、お互い言ってる

        • 第二十一回「寸志さん、コロナの季節は無観客の「武助馬」でどうだったの、の巻(寸志滑稽噺百席其の十九)」

          杉江松恋(以下、杉江) 次は其の二十についての話なんですよ。2020年の4月、と言ったら新型コロナウイルスですよね。 立川寸志(以下、寸志) ああ、もうコロナ二年なんですね。(注:この収録は2022年3月) 杉江 最初のうち、「まあ二ヶ月ぐらいで終息するんじゃないか」って言ってたら全然そんなことはなくて、それからずっと今もコロナ対策をしないといけない状況は続いています。この其の二十で初めて、これはさすがにお客さん入れられない、って話になったんですよね。 寸志 それまではなんと

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        第1回 それは「おじさん」から始まった、の巻(寸志滑稽噺百席ができるまで 前編)

          第二十回「とても落語らしい「普段の袴」は心清らかにやらないとね、の巻(寸志滑稽噺百席其の十九)

          杉江松恋(以下、杉江) では次、其の十八ですか。「普段の袴」、「幇間腹」、「四宿の屁」。問題作、「四宿の屁」ですね。 立川寸志(以下、寸志) 問題作なんですか、これ。いつも、話してて「あの噺のあそこどうだったっけ」って思ったんで、今日は、不安なやつは台本持ってきました。「四宿の屁」はもちろん持ってきました。じゃあ、「四宿の屁」から行きますか。 ■「四宿の屁」 寸志 自分で言うのもなんですが、「四宿の屁」は本当に、この其の十八でトリでやったんですか? 何かの間違いじゃないで

          第二十回「とても落語らしい「普段の袴」は心清らかにやらないとね、の巻(寸志滑稽噺百席其の十九)

          「第十九回 「本膳」「棒鱈」は田舎の人を笑う噺にしなくていいじゃない、の巻(寸志滑稽噺その十八)

          杉江松恋(以下杉江) 「百席余談」、ひさしぶりの再開でございます。 立川寸志(以下、寸志) よろしくお願いします。 杉江 前回は其の十六まで行って終わりました。今回はその次、其の十七からですね。「疝気の虫」、「棒鱈」、「本膳」でした。ええと、ネタおろしは。 寸志 「本膳」でした。いいですか、この噺からいっちゃって。 ■「本膳」【噺のあらすじ】 とある村にて祝い事があり一同が招かれた。それはいいのだが、本膳の作法をみんな知らない。しかたがないので全員が先生の真似をする。最初の

          「第十九回 「本膳」「棒鱈」は田舎の人を笑う噺にしなくていいじゃない、の巻(寸志滑稽噺その十八)

          「第十八回 寸志さん、釣りが好きじゃないのに『野ざらし』やってるの、の巻(寸志滑稽噺その十七)」

          杉江松恋(以下、杉江)さあ、次です。「大安売り」、「芋俵」、「野ざらし」です。このときは「芋俵」がネタおろしでしたっけ。 立川寸志(以下、寸志) はい、「芋俵」がネタおろしです。 ■「大安売り」【噺のあらすじ】 町内の若い者が関取に声をかける。しばらく顔を見なかったが、どうやら巡業の旅に出ていたらしい。旅先の取り組みではさぞや買って星を重ねたでしょうと聞くと意外なことに。 杉江 「大安売り」。これは誰から稽古付けてもらいましたか。 寸志 これはですね、その頃の快楽亭ブラ坊

          「第十八回 寸志さん、釣りが好きじゃないのに『野ざらし』やってるの、の巻(寸志滑稽噺その十七)」

          「第十七回 寸志さんが「片棒」の発明をしましたよ、の巻(寸志滑稽噺百席其の十五)」

          杉江松恋(以下、杉江) では次の回です。「弥次郎」、「おすわどん」、「片棒」です。 寸志 これは「弥次郎」がネタおろしです。割とこの回は、今でもわりとよくやっている「武器」が揃っていますね。 ■「弥次郎」 【噺のあらすじ】 ホラ吹きで有名な弥次郎が北海道に行ってきたという。馴染みの旦那に聞かせる土産話は、いかに寒いかということから始まる。尾籠な話、おしっこもした先から凍るというのだ。 寸志 「弥次郎」は、うちの師匠(立川談四楼)からいただきました。ではあるんですけど、実は

          「第十七回 寸志さんが「片棒」の発明をしましたよ、の巻(寸志滑稽噺百席其の十五)」

          「第十六回 寸志さん、「小林」ってどうやって作ったの、の巻(寸志滑稽噺百席其の十四)」

          杉江松恋(以下、杉江)じゃあ次です。「牛ほめ」、「辰巳の辻占」、そして寸志さんオリジナルの「小林」。このときは「小林」をかけるという予告を出したから、お客さんがいっぱい来たんですよ。 立川寸志(以下、寸志)そうでしたっけ。 杉江 たしか寸志さん、どこかで初演をやって、これが確か二回目なんですよ。だからかな、再演しますよ、って言ったら聴き逃した人がたくさん来てくれたの。 寸志 ああ、そういうことでしたか。初演は四月の〈シブラク〉(渋谷らくご。サンキュータツオ氏をキュレーターとす

          「第十六回 寸志さん、「小林」ってどうやって作ったの、の巻(寸志滑稽噺百席其の十四)」

          「第十五回 「芝居の喧嘩」って実はおもしろい構造の噺なんですよ、の巻(寸志滑稽噺百席其の十三)」

          杉江松恋(以下、杉江) 次は「元犬」、「六尺棒」、「芝居の喧嘩」ですね。 立川寸志(以下、寸志) それぞれ短い噺ですから、寄席サイズに合った、という滑稽噺の趣旨としては合ってますね。 ■「元犬」 【噺のあらすじ】 野良犬のシロが人間になりたいと思って神社に願をかける。本当に人間の姿になったのはいいものの素っ裸である。顔見知りの上総屋が世話してくれて奉公に上がることになるが。 杉江 「元犬」は、(立川)笑二さんについて以前何度も言及ありましたね。 寸志 そうなんです。笑二兄

          「第十五回 「芝居の喧嘩」って実はおもしろい構造の噺なんですよ、の巻(寸志滑稽噺百席其の十三)」

          「第十四回 今回はバレ噺について。ちょっぴり大人の話ですよ、の巻(寸志滑稽噺百席其の十二)

          杉江松恋(以下、杉江) 其の十二が二年目の最後になった回です。「転失気」、「紀州」、「嫁の力」、このときは「転失気」がネタおろしですか。 立川寸志(以下、寸志) いえ、「紀州」がネタおろしですね。「転失気」は前座でもやっていい噺ではあるので比較的早期に憶えています。 ■「転失気」 【噺のあらすじ】 体調を崩して往診に来てもらったご住持。医者の「転失気はございますかな」の一言がわからない。珍念に「自分の勉強のため」と言い含めて意味を聞いてこいと使いに出すが。 杉江 僕ね、こ

          「第十四回 今回はバレ噺について。ちょっぴり大人の話ですよ、の巻(寸志滑稽噺百席其の十二)

          「第十三回 入れごとは気づかれないようにそっと、の巻(寸志滑稽噺百席其の十一)

          杉江松恋(以下、松恋)この回は「意地くらべ」、「やかん」、「目黒のさんま」。これはネタおろしはどれですか。 立川寸志(以下、寸志)「意地くらべ」です。 ■「意地くらべ」 【噺のあらすじ】 八五郎がさる旦那に五十円の借金をして、隠居の家にやってくる。やはり五十円を借りていて、その期限なのだ。しかし隠居は、無理をして作った金は受け取れないと言うのだ。 杉江 「意地くらべ」、私は好きですけど、寄席ではあまり聴いたことがないです。 寸志 正直難しい噺ですよね。これは昔の速記を見て

          「第十三回 入れごとは気づかれないようにそっと、の巻(寸志滑稽噺百席其の十一)

          『第12回 「半分垢」のおかみさんはかわいそう、の巻(寸志滑稽噺其の十)』

          杉江松恋(以下、杉江) では、次の回です。「半分垢」、「権兵衛狸」、「親子酒」ですね。 ■「半分垢」 【噺のあらすじ】 巡業から関取が帰ってきた。昼寝をしているところに贔屓衆が訪ねてくれたので、おかみさんは関取が旅先でいかに体が大きくなったかと自慢した。それを関取が陰で聞いていて。 杉江 たいへん申し上げにくいのですが、「半分垢」は今までのところ、アンケート評価の最低記録なんですよね。当時寸志さんも「こういう汚い系の噺は今は評価されない」とおっしゃってました。 立川寸志(

          『第12回 「半分垢」のおかみさんはかわいそう、の巻(寸志滑稽噺其の十)』

          『第11回:もう「後生鰻」はできない時代なのかしら、の巻(寸志滑稽噺百席其の九)』

          杉江松恋(以下、杉江)次が「町内の若い衆」と「後生鰻」と「ろくろっ首」ですけど、これは何がネタおろしですか。 立川寸志(以下、寸志)「ろくろっ首」がネタおろしです。 ■「町内の若い衆」【噺のあらすじ】 男が兄貴分を訪ねていくと留守でおかみさんが応対に出る。茶室を普請しているそうなのだが、その受け答えに感心させられた。男は自分の女房にもなんとか見習わせようとするが。 杉江 「町内の若い衆」、これは(立川)左談次さんのが好きでした。 寸志 はい、僕もです。これはもう、左談次師

          『第11回:もう「後生鰻」はできない時代なのかしら、の巻(寸志滑稽噺百席其の九)』

          『第10回:今回は地噺についてあれこれ考えましょう、の巻(寸志滑稽噺百席其の八)』

          杉江松恋(以下、杉江) さて、其の八です。この回は「権助魚」と「お血脈」と「崇徳院」と、けっこうバラエティに富んでますが、どれがネタおろしなんですっけ。 立川寸志(以下、寸志) 「お血脈」がネタおろしです。 ■「権助魚」 【噺のあらすじ】 毎晩どこかに出かけていく旦那を怪しんだ奥様が、飯炊きの権助に後をつけろと命じる。妾宅に急ぐ旦那は権助を買収して、大川に網打ち遊びをしに行ったことにしろと告げるが。 杉江 今さらなんですけど、いつも口にするたびに「ごんすけ・ざかな」か「ご

          『第10回:今回は地噺についてあれこれ考えましょう、の巻(寸志滑稽噺百席其の八)』

          『第9回:なぜ『猫と金魚』に虎さんを出さないの、の巻(寸志滑稽噺百席其の七)』

          杉江松恋(以下、杉江)さて、寸志滑稽噺百席其の七です。実を言うと、其の六までが第一期で新宿五丁目・電撃座が会場、其の七以降は現在もお借りしている神楽坂・香音里なんですよね。こっちを第二期って便宜上呼んでいます。宿替えしたのはいろいろ事情もあるんですが。 立川寸志(以下、寸志)それはまあ、おいおい話題にすればいいんじゃないですか。いろいろ長くなりそうですしね。 杉江 そうですね。というわけで其の七ですが、19・20・21は「天災」「猫と金魚」「花見の仇討」。この三席でした。 寸

          『第9回:なぜ『猫と金魚』に虎さんを出さないの、の巻(寸志滑稽噺百席其の七)』