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健全なフィードバックサイクルを回すために私達にできること

こんにちは、長洲 (@koki_nagasu) です。
SaaSスタートアップにてマネジメントをしていくなかで自分の専門性のあるなしに関わらずメンバーに対してフィードバックを行う機会が多いのですが、最近社内で「フィードバックサイクルを健全に回すことがスタートアップの成長において非常に重要だよね」という話になったので自分なりに気をつけていることをここに記せればと思います。

健全なフィードバックサイクルの重要性

スタートアップ経営はリソースマネジメントである、と考えています。
とにかくカネが足らない。
そしてヒトも足らない。
目指す世界が素晴らしいほど、見据える頂が高いほど、やりたいことに対してリソースが充足しているなどということは決してありません。

カネはシンプルです。使えばなくなるし使わなければ貯まるだけ。決まった残高をどう振り分けるかでしかありませんし、どこにbetしても0円以上の価値にはなります。

しかし、問題はヒトというリソースです。
能力・適正・モチベーション、そういった種々の定量化しにくい要素によって同一人物の出せるパフォーマンスは大きく変動します。特にモチベーションはふとしたきっかけで乱高下しかねないものであり、能力や適性といったその他の定数と掛け算になるものです。モチベーションがマイナスの人は、その負のエネルギーが周囲に伝搬するという点において組織にとってマイナスたりうるものです。日本においてはヒトというリソースは簡単に手放せるものでもないため、リソースの限られたスタートアップにおいては社内の人材に最適な場所で、かつ高いモチベーションで活躍してもらうことは死活問題であるといえます。

とある書籍によるとモチベーション低下の要因は以下の8パターンに分けられるとされています。

① チームの役割・目標・意義が定まっていない
② チームの方針・アクションが定まっていない
③ アサインメントが自分の脳力や意思を活かせるものになっていない
④ チームにモメンタムがない
⑤ 評価に納得できない
⑥ マネージャーが自分の仕事を見てくれていない
⑦ マネージャーが適切なコミュニケーション支援をしてくれない
⑧ マネージャーの人間性に共感できない

長村禎庸『急成長を導くマネージャーの型』(技術評論社)

としたときに、マネージャーは経営と協働して①〜④ (および制度としての⑤) を整備することを前提としつつ、いかにメンバーとの間のコミュニケーションで⑤〜⑧の取りこぼしを起こさないようにするかが重要になります。また、それはマネージャー個人のやり方ですぐにでも改善できるものです。

マネージャーとメンバー間での一般的な業務上のコミュニケーションの流れを以下の1~6とすると、

1. 業務を依頼する (マネージャー → メンバー)
2. 業務を行う (メンバー)
3. アウトプットを共有する (メンバー → マネージャー)
4. レビュー&フィードバックを行う (マネージャー → メンバー)
5. (適宜) ディスカッションを行う (マネージャー ↔ メンバー)
6. ネクストアクションを依頼する (マネージャー → メンバー)
※ 6 = 次のサイクルの 1

その核となるのはメンバーからのアウトプットを軸としたレビュー&フィードバック (4) ですが、その質はそれまでのコミュニケーション (1~3) に大きく左右されますし、逆に4を踏まえたネクストアクション (6) のコミュニケーションが次のサイクルの良し悪しを決めます。この1~6のコミュニケーション全体をフィードバックサイクルと定義したときに、マネージャー (レビュワー) と メンバー (レビュイー) がそれぞれ何を意識するべきかについて整理していければと思います。

レビューとフィードバックの違い

前提として、私はレビューとフィードバックを全く違うものと定義しており、その上でフィードバックこそ重要であると認識しています。具体的には、レビューとはアウトプットそのものに対してコメントすることであり、フィードバックはそのアウトプットに至るプロセス (考え方やアクション) に対して行われるものです。

レビューとフィードバックの違い (1/2)

上記の違いは、時間軸の違いと言い換えることができます。
レビューとは当該アウトプットを最速で最善にすることにフォーカスする短期目線のものであり、フィードバックは改善の余地が残ってしまった原因を紐解き、行動変容による根本的な改善を目指す中期目線でのアプローチです。 

レビューとフィードバックの違い (2/2)

レビューとフィードバックは上記の違いを認識した上で混在しないよう使い分けることが重要です。
また、アウトプットの水準が高かったり時間軸がタイトだったりという理由でレビューを行わない場合にも、フィードバックは必ず行ってください。フィードバックを受けることでメンバーは今後のDo's and don'tsが判断でき、次回以降により洗練された動きが取れるようになります。もし業務依頼をしたくせに出てきたアウトプットに対してノーコメントで次の思考を始めているようなマネージャーの方は行動を改めてください。お礼コメントすらしないような方は論外です。マネジメントにおいて「沈黙は肯定」といったことはありえません。そうした小さなコミュニケーション齟齬がモチベーション低下要因の「⑥ マネージャーが自分の仕事を見てくれていない」等に繋がっていきます。

行動変容を促す良いフィードバックの例は以下のようなものです。

メンバー to メンバーのフィードバック。私は「NICE FB」のスタンプを押しているだけです

健全なフィードバックサイクルを回すために

前項で、フィードバックはレビューと違いアウトプットそれ自体ではなくそこに至るプロセスに対して行うものであると述べました。
とすると、フィードバックはアウトプットだけを見て行うことはできないはずで、どういう前提に立っているのか、どういう仮定を置いているのか、何を (誰を) 参照したのか、その他自分が知り得ない何らかの情報があるのか、といったことを丁寧に掘り下げる必要があります。そこには一定の負荷がかかるため、無理に急がずアウトプット処理が一段落してから振り返り的に行うのも良いでしょう。
より良いフィードバックを行うためには、レビュワーとレビュイーの双方が「自分しか知らないこと」を極力減らすこと、言い換えれば共通認識範囲を広げていくことが重要です。共通認識範囲でしか適切なフィードバックを行うことはできないからです。一般的にメンバーは戦略や他部門連携といった上流側のことを十全には理解しておらず、マネージャーはなんだかんだ現場of現場のことは知らないものです。

マネージャーもメンバーも、相手の知らない情報を前提にコミュニケーションしていないか要確認

共通認識範囲を広げていくために、ひいては健全なフィードバックサイクルを回していくためにマネージャー・メンバーそれぞれが意識すべきことの一例についてもスライド上で整理しました。とりわけ、マネージャーは背景をきちんと伝え複数のタッチポイントを設定すること、メンバーは依頼を受けて今すぐに動き出せるかどうかを自問することを徹底することが重要です。

さいごに

「フィードバック」に対してマネージャー (レビュワー) ・メンバー (レビュイー) それぞれがもつべき心構えについても触れているのでご参考にしていただければと思います。フィードバックがコミュニケーションである以上、どちらか一方ではなく双方からの歩み寄りが何より重要です。ぜひ誰もが健全にチャレンジと成長を繰り返すことができ、高いモチベーションのメンバーが相乗効果でチーム成果が指数関数的に高めていくような組織にしていきましょう。

メンバーが「自分はなんてダメなやつなんだ…」とならないようにすることが重要
せっかくのフィードバック、その場限りにせず次に繋げていくことを意識しましょう


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