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物理学史上最大の誤差に挑む

前回、重力波観測がきっかけで量子力学の不確定性原理がバージョンアップされた、という話をしました。

この不確定性原理とは、原子サイズ(10のマイナス9乗かそれ以上)で生じる誤差で、超微細な測定で意味を持ちます。

今回は逆に、物理学史上最大ともいわれる誤差とその原因に挑む話です。

今の宇宙は誕生して138億年たち、インフレーション→ビッグバンを経て緩やかに膨張を続けています。
が、その膨張速度が途中でギアアップしたかの如く早くなっていることが20世紀末の観測(きっかけは超新星)で明らかになりました。

過去にその謎については触れたので、そこに興味のある方はこちらへ。

原因はともかく観測では明らかなため、一般相対性理論を使ってそのエネルギーを計算する試みが行われました。

一方で、上記記事でもふれたインフレーションは
「真空の揺らぎ(これは冒頭記事でいう量子力学上のゆらぎのこと)」
から生じたのだろうといわれ、量子力学(を場の理論で発展させたもの)を使ってそのエネルギーを計算する試みも行われました。
「真空なので計算するまでもなくエネルギーゼロでしょ?」という突っ込みをしたくなる気持ちは共感できます。
が。ここでの「真空」とは物理学上の定義で、空間が潜在的に持つエネルギー(正負両方を取りうる)のことを指します。
イメージ湧きにくいので言い換えると、エネルギーを瞬間的に変化させる仮想粒子が宇宙創成期にあったのだ、と強引に思ってください☺

理屈でいえば、別の道(物理理論)て同じ山頂(物理現象)を目指しているので一致するはずです。

が、後者(量子力学)で計算したほうが大きいことがわかりました。

それが「史上最大の誤差」といわれ、両者の数を比較すると

10の120乗

も異なります。倍ではありません。スケールが120桁違います。

この乖離を説明する理論としてよく知られているのは「マルチバース宇宙論」というものです。これも過去の記事引用にとどめておきます。

ようは、
上記で触れた仮想粒子(のゆらぎ)は、我々が住む宇宙以外でも多様に生じており、だからこそ奇跡的ともとれるチューニングがされているのだ、
という論法です。

以前にもその奇跡的な物理定数についてはふれたので貼っておきます。

ちなみに、この余りにも都合のよい物理定数を説明するために導入された1つが「人間原理」です。
これは恣意的に使われることもあるので、取り扱いは要注意です。(科学と非科学を考えるには良いテーマですが)

過去にも若干ふれたことがあるので、興味ある方はそちらへ。

話を戻すと、この偉大な(?)誤差を何とかしようとする「科学的な」研究は今でも行われており、次回はその一つのプロジェクトを深堀ってみます。

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