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知能の原因は「地磁気逆転」という仮説

前回、200万年前ごろから存在したホモ・エレクトスの話をしました。

初めて高い知能を備えたご先祖さんではないか?という趣旨ですが、その原因は謎のままです。

1つの仮説は、外部環境でDNAが突然変異を起こして脳が急に大きくなった、というものがあります。

その外部環境でユニークな「地磁気の逆転説」を紹介します。

「はぁっ?」と思うかもしれませんのでそのつながりを触れておくと、
地磁気が逆転することで宇宙線の数が急増して、それが我々の先祖のDNAを壊して突然変異を誘発した、
というわけです。

まず、地球は巨大な磁石であり宇宙線の防波堤となっていることは知られていますが、まだその機構は謎が多く、過去にもその差分があった話をしました。

そもそもですが、地磁気の発見者は、16世紀後半に活躍したウィリアム・ギルバートといわれています。(日本は戦国時代!)
ギルバートは様々な場所で磁石(コンパス)の向きと北極点の方向を測ることで証明したわけですが、亡くなってから事態が変わってきます。

同じ場所で測った上記の量(偏角)が40年後の同計測で変化していることが判明します。
そしてその後の研究によって、核内の液体金属の動きであることが徐々にわかってきます。

ただ、それでも地磁気逆転までの発想には至りません。

地磁気を計測する手段の1つに、火山岩に刻まれた磁気の跡を調べる方法があります。(残留磁気と呼ばれます。今風に言えばPCのハードディスクのような磁気記録みたいな現象です)

地球科学を研究していたベルナール・ブルン(1867-1910)は、その跡を調べた結果、現在の地磁気から逆転しているという仮説を提唱します。

ただ、当時は懐疑的で(革命的な理論ではあるあるです)他の物理現象によるものでは?という反論もあり盛り上がりませんでした。

それが、半世紀経った20世紀中盤に思わぬ援護射撃で復活を遂げます。

「プレートテクトニクス理論」とそれが示す「大陸移動説」です。
参考までに、前者の理論提唱者が2023年に亡くなった記事を書いたので、興味ある方のために貼っておきます。

ざっくりいうと、従来の仮説(地磁気逆転もそこから説明)に従って大陸を超えた2拠点での地磁気変化を調べると、見事にその移動曲線が一致した、ということです。

これで地磁気観測の確からしさがぐんと増し、結果として地磁気逆転の研究が改めて注目されます。

幸い火山岩の解析も放射線年代測定法の登場(カリウム-アルゴン法)で改良され、ついに1960年代ごろに地磁気逆転の存在が認められます。

元々開拓者のブルンが当時推計した逆転時期は約77万年(細かくは後年に補正)でしたが、それ以前に何度も逆転していたという学説もありました。

その開拓者は松山基範(もとのり、1884-1958)という科学者です。

その功績をたたえて、直前に起こった地磁気逆転のことを「松山-ブルン逆転」と呼び、その1つ前からの逆転期を「松山期」と呼びます。

松山期は現在、
「258.1万年前 - 77万年前」
とされており、まさにホモ・エレクトスが活動していた時期と重なります。(厳密には前回触れたとおり、最古の化石は200万年前)

まとめると、
この時期に地磁気逆転で宇宙線が大量に降り注ぎ、結果として我々の先祖が突然変異で脳容量が肥大化して知能を高め、火の使用や社会形成などをなしたのではないか、ということです。

まだ定説というには粗すぎる仮説ですが、実際に社会形成と脳容量との相関関係はありそうです。1つ関連記事を紹介します。

上記記事内の図

ブルン・松山の学説が当初埋もれて蘇ったように、この仮説もどこかで復活することを願っています☺

<本文引用以外の参考リソース>


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