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脳の再生と不老の夢:ARPA-Hの野心的プログラム

以前に、ペンタゴン(米国国防総省)のR&D組織DARPA(国防高等研究計画局)をお手本にした、生物学の基礎研究組織ARPA-H(米国医療高等研究計画局)を立ち上げた話をしました。

初代所長は合成生物学、つまり遺伝子レベルで細胞から創る専門家Dr. Renee Wegrzyn氏を迎えています。

このARPA-Hで、野心的なプログラムが始まろうとしています。1つ記事を紹介します。

脳含む体の部位を交換することで老化を防ぐプログラムを開始した、
という話です。

老化については過去にも何度か触れたので過去記事を貼っておきます。

老化防止のアプローチとしては、上記記事のとおり老化に影響を与える細胞を除去する薬の開発が有名です。

今回はもっと原始的にその部位を交換してしまおうというものです。

特定の部位であれば、再生医療という言葉があるとおり、iPSと遺伝子編集技術で人工的に作ったもの(関節や角膜など)を置き換える治療は始まってています。詳細は過去記事に委ねておきます。

今回は、脳でも実行しようとしているのが、野心的なポイントです。

このプログラムのリーダーとして選ばれたのは、再生医療の専門家エベール(Jean Hébert)氏で、一般向けには下記の著作もあります。(未読)

ただ、脳を入れ替えるとそもそもそれは自分なのか?という素朴な不安が生じます。

エベール氏の方法は、問題のある部位に(分化する前段階の)胚細胞を付加し、それを時間をかけて成長させる、というものです。赤ちゃん細胞がその環境に慣れるまで待つというイメージでしょうか。

すでにマウスを使った実験には成功しているようです。

上記記事内でも触れてますが、このやり方は主流ではないようで、まだまだ初期段階の研究です。

ここで連想したのは、テセウスの船という寓話です。

ざっくりいえば、
船の1つ1つのパーツを順繰り交換して全て交換し終わったら、それは同じ船なのか?
というパラドックスです。

無機物でなく我々の人体でも同じように、新しい細胞に逐次置き換わっており、皮膚だと1か月程度で剥がれ落ちて新しい細胞に変わっています。

と、へ理屈をこねましたが、実は脳細胞だけはこういった新陳代謝がほぼ行われません。しかも、脳内は神経細胞間で複雑なネットワーク構造を形成しているため、安易に交換するだけでは障害が起こりそうです。

そこで極小部位に絞り、時間をかけて自然の力に委ねようというのが今回の方針で、あとはその時間をどれだけ早められるかが気になります。

目的は老化防止と書きましたが、もし実現出来たら不老も行けるのでは?とすら感じました。

まだ詳細が明らかになっていないので、正式にスタートした段階で改めて調べてみたいと思います。

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