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犯罪調査に使われるDNA鑑定の小史

前回の補足です。

日本での犯罪捜査は科捜研(科学捜査研究所)が担っています。
Wikiによると、法医学(生物科学)・心理学・文書・物理学(工学)・化学の分野があり、それぞれ10名ぐらいの少数精鋭集団です。

このうち法医学チームがDNA鑑定を行います。

DNA鑑定の歴史で大きな転換点はPCR(Polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ぶDNA複製法です。
それまでもフィンガープリント法などいくつかの手法はありましたが、それに比較すると一気に精度が高まり作業も楽になりました。

パンデミック検査でおなじみになったのでPCR自体の説明は不要かもしれませんが、軽く。

ある酵素(ポリメラーゼ)を入れて温度を変えることで、簡単にDNAが倍々ゲームで複製できるという、冷静に考えるとマジックのような技術です。
詳細に関心がある方のために、Wikiから原理図を載せておきます。各ステップの反応は温度を変えることで進行します。

このPCRですが、1983年にキャリー・マリス(Kary Mullis)によって発明されました。この功績でノーベル賞も受賞しています。

日本でも1990年代にはPCRを使ったDNA鑑定(個人特定)が普及していきますが、1つだけ問題がありました。

ただ、この発明には開発会社の特許が絡んでおり、純粋な研究目的以外では使用料を払う必要がありました。

犯罪捜査を純粋な研究、といいきるのは無理があるので、
「PCR法の機器に関する特許を持つ企業が市販している判別キットを、指定手順通りに使う」
という条件付きで、日本の犯罪捜査で使用が認められることになったそうです。
ただ、免除されたのはあくまで特許権使用料で、判別キット自体は高額で購入してました。
参考書籍によると、200回の検査で60万円。一人あたり2回は行うので100名程度しか検定できない算段になります。

既にその特許は2006年に切れてますが、その時の惰性で当時のDNA鑑定の購入ルートは継続しています。

このあたりが今の検定を担える組織の硬直化(科捜研と限られた民間施設)を生んでいるためすそ野を広げてほしい、との意見もあるようです。
そのあたりは、前回ふれた米国の事件を見る限り自由度がありそうですね。

まったく知らない世界なのでとても興味深かったです。

他にも魅力的な話が多いので、少しでも気になった方はぜひ参考書籍をポチって見てください。

<参考書籍>


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