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「ゴジラ-1.0」の科学

※タイトル画像はChatGPTによるものです

アカデミー賞も受賞した「ゴジラ-1.0」が、5/3よりAmazon Primeで配信開始となりました。

時間をかけてじっくりと鑑賞し、科学的に興味深かったポイントを皆さんにシェアしたいと思います。ミステリーのネタバレとは違い、作品の楽しみを損なうものではありませんが、未鑑賞の方は自己責任でお読みください。

本作の舞台は戦後直後の日本で、初代「ゴジラ」作品(1954年)よりも前の時代設定となっています。"-1.0"という表記は、敗戦でゼロ(焼野原)になった状態をさらに負(どん底)に追い込んだという意図が込められているのかもしれません。

そんな状況下、ゴジラへの対抗装備は歴代作品の中で最も貧弱です(米国は冷戦で傍観)。知恵を絞った末に考案されたのが「わだつみ」作戦。八百万の神々の「海の神」を指すようです。(諸説あり)

その発想が実にユニークかつ斬新です。

なんと、ゴジラを泡で深海に沈めて深海圧、つまり海の力で退治しようというアイデアです。

沈める場所は現代の南海トラフ地震でも話題とされる「相模トラフ」で、作品内では深さ約1500mです。

Wiki「相模トラフ」

最深部の水圧は単純計算で1㎡あたり1500tの負荷となり、陸上生物なら普段(大気圧は同単位で10t程度)の150倍もの圧力差を短時間で与えることになります。

ゴジラの普段の潜伏場所次第ですが、この発想の素晴らしさには感服せざるを得ません。

この作戦の元ネタの1つとして考えられるのが、名古屋市科学館の「ぶくぶくタンク」という展示です。動画も見つけたので共有します。

原理は浮力の仕組みを理解すれば腹落ちするほどシンプルです。
水面下で押しのけた水の体積分だけ生じる上向けの力が浮力です。それが、海水でなく泡(今回はフロンガス)に置き換わることで失われ、沈んでいくというイメージです。

さて、どこまでリアリティがあるのか?ゴジラのサイズを推測してみます。

設定では、身長は初代作品と同じく約50mにしています。

体重は作品内で「推定2万t」と語っており、これも初代と同じ設定にしているようです。

ゴジラは海水上(ほぼ密度は水と同じで1t/$${m^3}$$)で浮いているため、密度が水(厳密には海水ですがほぼ同じ値)より小さくないといけません。

つまり、

最小体積=20,000t ÷ 1 t/m3= 20,000$${m^3}$$

となります。

現生物で最大の大きさを誇るのはシロナガスクジラで、下記サイトによると、体長最大30mで190tです。

 仮に、クジラを横にたたずんでいるとしたときに、
30m(長さ)×10m(横幅)×10m(高さ)とすると、
体積は3,000$${m^3}$$です。

ゴジラもクジラと同じ姿勢にして、上記で求めた最小体積に強引に当てはめると、下記のスケールとなります。

50m(長さ)×20m(横幅)×20m(高さ) = 20,000$${m^3}$$

となります。最小設定にしてもそうとうずんぐりむっくりなゴジラになりますね。。。

もしかしたら、海中に浸っているモードでは、浮袋のように下半身を膨張させる機能を有しているのかもしれません。
もしくは、比重が1より重いが、浮力に相当する推進力をロケットのように有しているのかもしれません。(あれだけの熱線エネルギーを体内にもっているのならありえなくはない)

と、妄想はそのあたりにしておいて、実作品にもどります☺

深海圧攻撃でうまくいかなかったときのプランBも用意していました。

さて、その結果はいかに?

さすがにそれ以上は書きませんが、この作戦で科学に興味を持つ人が一人でも増えると嬉しいですね。

余談ですが、フィクションで有名な泡活用方法といえば、
「北極海の氷山を泡の推進力で運ぶ」
という国民的漫画「ゴルゴ13」の「アイスバーグ・カット」という話が思い浮かびます。

北極海の氷は地球温暖化で急速に溶けだしており、実現性は上がってきているかもしれません。

もしかしたら、将来のゴジラ作品では気候変動を絡めた作戦が登場するかもしれませんね。皆さんも是非「ゴジラ-1.0」を鑑賞し、科学的視点からその魅力を味わってみてはいかがでしょうか。

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