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詩 『糸/音』

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音にすると 少し離れる。 たけど繋がっている。
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#詩

遊泳禁止

遊泳禁止

遊泳禁止

浜から砂が失われ
海水浴場が閉鎖する
遊泳禁止を示すロープが潮風に吹かれ
さびれた街をいっそうさみしくする

受け入れやすい物語を持って死んでゆくひとたちを簡単に見送り
砂が波に拐われてゆく
不自然はひとつもないと勝手に救われて

侵食されているのかも
そうして生きてゆくのかも
物語の準備をして
焦燥から逃げて

詩「磔」

詩「磔」

#殺すな  とガザを嘆くのに
被災地の獣は必ず仕留めよと腸《はらわた》がいう
喉笛に箸を一本深く突き立てて

その姿を校庭の遊具に磔せよ
体育倉庫の奥に眠る黒と黄色のロープで縛れ
#殺すな  と平和をと
憎しみのない世界を願っているのに

2024.01.03
タスケテのあ行は息が漏れるから
シネと短く叫び突き刺せ

詩 赤い涙

詩 赤い涙

片道の燃料はあります
この飛行機を僕にくれるのです
こんな名誉なことがあるでせうか
出発は明日です
最後の夜です

僕を忘れないで  しあわせになってください
まだ死にたくない  花は散るもの

テロルをすべて憎むなら
若き特攻兵に涙してはいけません
彼らは戦争のきまりごとを破り
白人たちを恐怖の底に突き落とした

僕を忘れないで   来年も知覧の桜は
まだ死にたくない   僕がいなくても綺麗

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「戦争反対」

「戦争反対」

かたく目を閉じ 耳をおおいましょう
そこには静けさがある
なにもいうべき言葉はありません
ここは日が射し
八百万の神々がおもいおもいに暮らしている

かたく目を閉じ 耳を塞いでいるあいだに
乳児すら静かになる
かける言葉は見当たりません
そこは病院
瓦礫がまだ息のあるひとの墓石ともなる

神は祟るもの だから祀るもの
ネクタイをかたく結びあい訳知り顔を並べる人々が
自分の口を閉ざして後ろで手をとり

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あたらしいからだ

ぬけがらだ
いのちがない
だって重みが感じられないもの

羽化するときには
何を思う?
みどりがかった透明の背中

わたしの羽はもう色つき

2020.05.26

………

スマホケースを新しくしようと
中身を取ったら
くったりとして虚ろな姿。
(これまでありがとうね)

ところで、
スマホじたいを
からだじゃなくて魂、
のように感じちゃうのは
なんでなのかなあ?

Fair  trade

Fair trade

  
            こい瀬 伊音

ガーナの赤い板チョコ
だいすき

だけど

言葉には
一粒の
ルビーチョコレイトを

2020.0205

フェアトレード、してよね。

なんて、
普段は口にできないけれど…。

触れなば落ちむ

         こい瀬 伊音

その肩紐はずしてみようか
もう片方も

そう言われるのを待っている被写体

レンズの奥には
どの目があるの
だれの
何個の

まだ
なにもないのに

2020.01.22

だれかにみつけてほしい
いっそほどかれたい

そんな風におもうことも自然だったと受け入れながら

自分で「今だ!」と決めていける
こわさ、自由さ。

ぜんぶてのひらにあるんだなぁ。
ほんとうの

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プログラム、プログラミング

プログラム、プログラミング

ふりかえりふりかえり駅に向かって
ふりかえりふりかえり電車に乗った

すぐに帰ってこれるよ
それは嘘だと知っている

行き先のわからない世界へ向かうんです
未来といいます
ここじゃないところへいくんです
春になったから

2020.01.13

むかし見ていた「いきもの地球紀行」で。
まだ満足に狩りもできない中ぐらいのからだのまま
季節にせかされて縄張りを去る動物たち。
ずっと一緒にいればいいのに

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その肩にのせて

その肩にのせて

100回噛んでも怒らないナウシカがほしくて
プチプチをひねる

「だいじょうぶ」 
「こわくない」

2020.01.12

臆病風に吹かれて
ほんとは何度だって試したくなる。

だから、
あきれた顔を思い浮かべて
じゅもんをとなえます。

だいじょうぶ、きっとだいじょうぶ。

糸電話をしっていますか?

糸電話をしっていますか?

ぴんとはった糸を 声がつたっていく
ぴんとはった意図が 音になっていく

細くて頼りなくて震えている
つたえるために

この糸のむこうに息をひそめて
耳をそばだててくれるひと
片割れをもってくれるひと

糸が張っているのはいま
いま

もしもし
聞こえますか

2020.01.11
細くて尖っている想い、というのは頼りなくて。
大きくてあたたかいところへ誘いたいです。
いま、外へ出るにあたって

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この音に恋して

この音に恋して

             こい瀬 伊音

わたしはもう自分を
生まれたての雛だとは言えなくなりそうです

たまごだと
まだまだ、と
そう言い張るには
時代がずいぶんと進んでしまっている

親鳥の羽のなかはあたたかくて安全
ここを、どうして出ていきたいのでしょう

こわい
足がすくみます
だれかたすけて
だれか

羽はもうすっかり生えかわり
そらを求めています

いと
それはだれかをつなぐ糸
奏でる

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