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この音に恋して



             こい瀬 伊音

わたしはもう自分を
生まれたての雛だとは言えなくなりそうです

たまごだと
まだまだ、と
そう言い張るには
時代がずいぶんと進んでしまっている

親鳥の羽のなかはあたたかくて安全
ここを、どうして出ていきたいのでしょう

こわい
足がすくみます
だれかたすけて
だれか

羽はもうすっかり生えかわり
そらを求めています

いと
それはだれかをつなぐ糸
奏でる弦
そして意図

わたしのなまえ

あなたがもしささやいて
音にしてくれたら

飛び立ちます
いま



2020.01.10
よく晴れた いとの日に

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