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崖の上のポニョ(1)


〇 おかしいところ満載の映画

 この映画は、ご存じのとおり、宮崎駿の映画である。

 最近の宮崎映画は、ストーリーが破たんをきたしているものが多い。「ハウルの動く城」を見た後は、あまりの支離滅裂さに、見てから数ヶ月間、怒りがおさまらなかった。


 だが、ポニョは、子供向け映画である。であれば、さすがに、単純明快なストーリーでわかりやすいはずだし、不満を持つこともないだろうと思い、もしかしたら、「となりのトトロ」並みの名作かもしれないとも期待して見てみることにしたのである。


 ところが、期待は見事に裏切られた。

 この映画のストーリーも、全くおかしいところが満載なのだ。見終わって、唖然としてしまった。


〇 意味不明な世界観

 まず、映画においては、そこがどういう世界で、その世界では何が普通のことで、何が普通でないことなのかという世界観の規定は非常に大事である。むしろ、大事というより、基本的な、必要不可欠な情報である。

 例えば、推理ものや刑事もの、裁判ものの映画で、人が宙に浮かんだりしたらたいへんなことだが、ロード・オブ・ザ・リングで、恐ろしいモンスターが出てきても、そこはそういう世界なのだから、そうしたモンスターたちは単なる退治する対象であるだけで、そんな生物が存在していることに対して人々は驚いたりはしないし、そうした生物の調査を行うために学術調査機関の専門家を送り込んだりすることもない。「ET」では、地球外生命体としてのETの存在は、地球人にとって、全く不可思議な異質の存在で、地球人からすれば驚きの対象であるが、「スタートレック」においては、地球の人々も、他の星の人々と普通に一緒に仕事をしており、彼らの存在に対していちいち驚いたりはしない。こうした前提を、見る者がすぐ理解できるように普通の映画は作られている。

 だが、この映画では、この映画の世界の前提がどうなっているのか、さっぱりわからないのだ。この世界で人面魚が不思議なことなのか普通のことなのかもわからない。この映画の世界では、人面魚が、普通のことでもないようにも思えるのだが、人面魚を見たり、魚が人間になったりしても、登場人物の大人たちも大して驚いていない。この世界が最初から魔法の世界だとか、意味不明な生物たちがたくさん住んでいる世界であるなどというのであればいいのだが、そうでもないようなのに、どうして、人々は、不自然なことが起こりまくっているのに、平然としているのだろうか?こうした登場人物たちの行動を目の当たりにして、映画を見る者は、混乱するばかりなのである。

 そして、この映画を見ていると、どう考えてもおかしな点がたくさんある。

〇 自殺願望?

 例えば、海が荒れ狂っている中、リサが車を運転して家に帰るシーンがある。 その時、リサは、波にさらわれる危険がある水の浸かった道路に、波にさらわれるかもしれないのを大して気にもせずに、わざわざ突っ込んでいく。 家に、絶対に救わねばならない人が取り残されているなど、家に帰らなければならない緊急の用件があるなら、命をかけてそうすればいいが、別にさしたる理由があるようにも見えない。なのに、どうしてそんな危険な道路に突っ込んでいくのだろうか?これで一家が命を失ったりしたら、現実社会なら責任問題にもなるだろうし、そんな無謀な行為をわざわざしたなどということが発覚すれば、そんなことをすると判断した責任を厳しく問われるだろう。それどころか、いったいどういう精神状態でそんなことをしたのか、残された重大な謎としてその解明が行われる事態になるであろう。そして、週刊誌各紙も、不可解なこの事故をこぞってとりあげ、電車の宙吊り広告では、この事故における母親の行動に対して、過激な見出しが躍ることになるかもしれない。


〇 子どもを放置

 嵐が来て、家が波にのまれそうになっているのに、リサが子どもだけ家に残して出かけてしまうシーンもある。子どもが波にさらわれても、リサは困らないのだろうか。アメリカなら法律違反に問われかねない。いや、もしかして、家が波にのまれそうだと思う観客が間違っていて、どんなに海が荒れ狂って波が押し寄せそうになっていても、実はリサの家は安心・安全で、家は絶対に波にのまれたりしないということを、リサは知っているのだろうか?全く不可解である。


〇 海に沈んでも平然としている人たち

 洪水が来て町全体が海に沈むシーンがある。映画に出てくる町の人々が、いくら鈍感でおかしな人たちでも、大洪水で自分たちの命にも関わると共に、家などが水につかり、財産が危機にひんしていれば、慌てふためくはずである。だが人々はなんだかのんびりとしているだけで、あまりにも危機感がない。そうした人々の精神がどうなっているのかも意味不明だし、そうなってくると、こうした洪水は、我々の世界における、ちょっと雨の強い日ぐらいのことで、別に何の問題もない出来事のようにも思えてきて、わけがわからなくなる。


(2)に続く!



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