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セッション定番曲その14:(They Long to Be) Close to you by The Carpenters

歌ものセッションイベントでの定番曲。知らない人はまずいない曲なので、原曲通りでもいいし、ボサノバでもレゲエでもジャズ風にもアレンジして遊べる名曲です。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:どうアレンジするか?

お前は何様だ?と言われそうですが、原曲のカーペンターズ版のアレンジ、今の感覚で聞くとちょっとダサいですよね。歌謡曲っぽいというか、日本の歌謡曲側がああいうアレンジを盛んにパクって使った結果、僕らが聴き飽きてしまったのかもしれません。

あのピアノから始まるイントロだけで「ああ、あの曲か」と分かる素晴らしいアレンジなのですが、それに拘って原曲再生をセッションイベントで目指したところでカレンみたいに歌える訳でもないし。

事前の仕込みが出来ないセッションでの歌唱や演奏の場合、作り込んだアレンジ譜面を渡して初見でやってもらうか、あるいは演奏開始前の直前に口頭で「こんな感じで出来ないですかね」とイメージを伝えることになります。前者はうまく行けばライブ演奏並みのクオリティのセットになることもあるけど、やはり参加者の譜面読みの強さや初見演奏の強さに依存することになって、みんな余裕が無くなってしまうので、ある意味「生バンド・カラオケ」になってしまう危険性も。後者はその場でのアレンジなので、演奏者全員のイメージが揃わずに最初のうちは迷走することもあるけど、途中で軌道修正出来れば「これぞセッション演奏」という結果になることも。その辺りのどこを楽しむかは人それぞれですね。

つまり、原曲再生に拘ることから解放されることで初めて新しい世界が見えてくる(かもしれない)と。それが天国だったり地獄だったりする訳ですが・・・

ポイント2:Just like me, they long to be Close to you

「long to」は「そうしたいと願う」という意味なので「あなたのそばにいたいと願っている」のだ、と。この歌詞の面白いところは「あなたのそばにいたい」のは「私」なのに、それをストレートには言わずに「鳥」とか「(空から降る)星」とか「街中の女の子達」とか「they」を例えに使って、「私と同じ気持ちだね」と婉曲に伝えようと歌っているところ。まさに「詩的」な表現。日本人ならそれでもストレート気味なのかもしれませんが、米国人としてはかなりシャイな女性なのかもしれないですね。

そういう奥ゆかしい気持ちが歌で表現出来るといいですね。原曲のカレンの発声や歌唱は発音のお手本のようにクリアで、結構ストレートにぶつけてくるので、自信たっぷりの女性に聞こえて、歌詞の内容からすると実は少し違和感を感じます。上手すぎるのかもしれません。

ポイント3:On the day that you were born…

このコーラス部の歌をいかにリズムに乗せるか、がこの曲のポイントかと思います。その前のパートに比べて言葉を詰め込んであって、詩的な美辞麗句が並んでいるので、ここのフレーズとリズムが身体に入っていないと歌いきれないですよね。それをマスターした上で自分なりにアレンジしてリズムを崩す工夫もアリかと思います。

On the ,Day ,that ,You were ,Born
The An-gels, got ,to-gether
And de-cided to ,Create ,a Dream ,come true
細かく強弱を付けて歌うとこんな感じですかね。
「弱」の方が難しいですね。まったく発音しない訳じゃないけど、ごく短く弱く発音するとメリハリが付きます。
And de-cided to というパターンもアリかも)

何回も繰り返してみて、自分にしっくりくる歌い方を見つけてみましょう。

ポイント4:転調するかしないか

キーCで始めて2番からキーDフラットに半音上げるというのがよくあるパターンですが、曲中にテンションを上げる為の転調としてはありきたりではあります。これをやるかやらないかは演奏開始前に決めておく必要があります。参加者全員で合わせる快感はありますが、どうしてもコレが必要なのかどうかはみんなの意見を聞いてみた方がいいかもしれませんね。鍵盤楽器にも管楽器にも簡単な転調ではないので。この後の「どこで楽器ソロを回すか」にも関係してきます。

ポイント5:どこで楽器ソロを回すか

アレンジにもよりますが、途中かエンディングでCとGを2小節ずつで回す「Ah-ah-aaah, Close to you」というパートがあり、ここでソロを回すのが良さそうです。もちろんフルコーラス(AABA)をなぞってソロ演奏をするパターンもありますが。

カーペンターズのイントロから変えるなら、このパートをイントロに持ってくるのもアリかもしれませんね。

ここで上記の「途中で転調するかどうか」が関わってきますね。転調が入るとこれがDフラットとAフラットで回す箇所でソロを回すことになります。ちょっと大変かも。

ポイント6:発音の難しい単語

Why do birds suddenly appear
意外と「suddenly」の発音は難しいです。
子音の間の母音が目立ち過ぎると日本語っぽく聞こえてしまうので、そこをどううまく処理するか。「su-dden-ly」の「u」も「e」も暗めでこもった音なので、練習してみましょう。

Close to you
「close」は何回も出てくるので、ちゃんと発音したいですね。「c」と「l」の間に音が入らないように注意しましょう。「クロース」とは大分違いますね。

a dream come true
耳慣れた言葉ですが、これも意外とちゃんと発音出来ていない場合が多い気がします。「dream」を意識してハッキリと発音すると後が楽です。・・・知らんけど。

ポイント7:バート・バカラック先生

1960年代のポップスのヒット曲が比較的単純なコード進行で単純な構成で出来たものが多かったのに対して、クラシックの素養もあり、映画音楽なども手掛けていたバート・バカラック先生の書く曲は少し凝ったコード進行、歌詞に寄り添った情景描写のようなメロディー、単純な繰り返しではない構成など、とても素直に「よく出来た曲」と呼びたいものが多いです。

逆に言うと、セッションイベントで初見でうまく演奏するにはハードルが高いし、原曲と構成を変えるとイメージがガラッと変わってしまう危険性もあります。それを理解した上で敢えてどこまでアレンジするか・・・。それが全然無いとセッションイベントでやる意味も無いので、バート・バカラック先生に挑戦するつもりでその場の味付けに挑んでみましょう。リズムを変えるだけで全然違う雰囲気のものになります。

カーペンターズに提供する前、バート・バカラック先生の曲はディオンヌ・ワーウィックやダスティ・スプリングフィールドなどソウルフルな歌唱の人達に歌われていました。この「Close to you」も両者によって先行してレコーディングされていましたが、大ヒットにはならなかったようです。両者とも熱唱型のお姉さんシンガーなので、かなり劇的なアレンジ(ミュージカル曲みたいな感じ)で歌われていて、カレン・カーペンターの比較的あっさりとした歌い方とは対照的です。そう考えるとカーペンターズで耳慣れているこの曲の根底にはソウル的な要素が潜んでいるのかもしれませんね。

(ポイント2では「歌詞の内容からすると、奥ゆかしい女の子なのかも」と書きましたが、熱唱すると「自分の気持ちをストレートに言わず婉曲的にぶつけてくる、実はネチネチした濃い女の子」に聞こえるかも・・・)

ポイント8:色々なバージョンを聴いてみよう

Carpenters


Dionne Warwick
意外とビートが効いたアレンジ


Burt Bacharach、実は歌いたがり


Harry Connick Jr.


Frank Sinatra、テンポのズラし方がジャズ歌手ですね


Isaac Hayes、こんな意外な人も

Olivia Ong、歌詞の内容的にはこういう歌い方が正解?
Close to You

Robi Botos、ピアノトリオによるインスト演奏
Close To You - Robi Botos

Soiree、ディスコですな、こりゃ
Close to You

Fujii Kaze
Close To You

paris match、ラテンアレンジ


■歌詞

Why do birds suddenly appear
Every time you are near?
Just like me, they long to be
Close to you

Why do stars fall down from the sky
Every time you walk by?
Just like me, they long to be
Close to you

On the day that you were born
The angels got together
And decided to create a dream come true
So they sprinkled moon dust in your hair of gold
And starlight in your eyes of blue

That is why all the girls in town (Girls in town)
Follow you (Follow you) all around (All around)
Just like me, they long to be
Close to you

Ah-ah-aaah, Close to you
Ah-ah-aaah, Close to you

That is why all the girls in town (Girls in town)
Follow you (Follow you) all around (All around)
Just like me, they long to be
Close to you
Just like me (Just like me), they long to be
Close to you



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