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セッション定番曲その91:Will You (Still) Love Me Tomorrow? by Carole King

歌ものセッション定番曲。女性シンガーがレパートリーにしていることが多いですね。どんな内容の曲なのでしょうか。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:明日のことは分からないよね

今夜は確かに愛し合っているふたり。
でも、ふと不安になってしまう。
「明日になっても私のことを愛してくれているの?」

Tonight you're mine completely
You give your love so sweetly
Tonight the light of love is in your eyes
But will you love me tomorrow?

この歌詞は曲のテンポやアレンジ、歌い方で解釈が変わってきます。

ポイント2:不安な気持ち

Carole Kingのピアノ弾き語りでは、そんな不安が気持ちが前面に出ています。「そんな質問をするのも怖い」ので、独り言で呟いてしまう。内気な少女の歌に聴こえます。この曲がずっと聴かれ、歌い続けられているのは、そんな感情に共感する人が多いからでしょう。


ポイント3:無邪気な気持ち

The Shirellesの1961年のヒットしたバージョンでは、ポップス・アレンジで比較的速いテンポで歌われていて、無邪気に相手に「明日になっても私のことを愛してくれているよね、もちろんそうだよね」と呼び掛けています。

この曲をプロダクションから提案されたThe Shirellesは「なんかカントリー音楽っぽくない?」と否定的だったようですが、アレンジでカントリー臭さを決してこの時代の黒人女性コーラスグループっぽい曲に仕上がっています。「明日は今日よりもいいことがある」と無邪気に信じることが出来ていた時代の音楽。オールディーズの魅力はその無垢さにありますね。

ポイント4:大人の女性

Roberta FlackCarole Kingのピアノ弾き語りでは、もっと大人の女性の歌。相手との駆け引きで語りかけているのもかもしれません。その場には2人きりではなく共通の友人もいて、単に問い詰めるような雰囲気にならないように。「こんな歌があるけど、貴方のことじゃないから」と。


ポイント5:カントリー音楽

Lorrie Morganの1997年録音。
元々のかたちに先祖返りしたようなアレンジで、カントリー音楽特有の「酒場の匂い」もしますね。明るい歌声ですが、きっとこの恋はうまくいかないのかな、という雰囲気もあります。こんな強い女性が不安感を抱いた時点でお終い。


ポイント6:吐息の魔術

Is this a lasting treasure
Or just a moment's pleasure?

長く続く素敵な関係なのか、それともひとときの快楽なのか・・・
まだまだ分かりません。

Can I believe the magic of your sighs?
Will you still love me tomorrow?

「ため息」だと悲しい感じだけど「吐息」だとちょっと素敵な感じ。
意識して言葉の中に吐息を混ぜているのだとしたら高等テクニック。


ポイント7:夜が明けたら

Tonight with words unspoken, You say that I'm the only one
But will my heart be broken, When the night Meets the morning sun?

「When the night Meets the morning sun?」
夜が明けたら、明日になったら、ということの詩的な表現ですね。
他で見かけないから、この歌詞独特の表現かと思いますが。
恋人達の時間の中では、夜中を過ぎても夜が明けるまでは「明日」じゃないんだと思います。

ポイント8:Carole KingとGerry Goffin

Carole Kingが17歳の時、2人は結婚。それぞれ作曲と作詞を担当して音楽出版社に売り込みを始めて、このWill You Love Me TomorrowがThe Shirellesによってビルボードのナンバーワン・ヒットになって、それまでの仕事をやめて専業の作曲家・作詞家コンビとして活躍し始め、1960年代前半の無垢なポップス曲を量産していました。

この時期のヒット曲は10代の若者向けの、ただ甘いだけのお菓子のような粗製乱造のものが多かったですが、この2人が作った曲は印象に残るキャッチーなメロディや少し深みのある歌詞などが含まれていて、後々までスタンダード曲として残っています。残念ながら1968年にはコンビを解消してしまいますが。

Gerry Goffinはその後も「Saving All My Love for You」「Tonight, I Celebrate My Love」「Nothing's Gonna Change My Love for You」などの名曲を作詞しています。

ポイント9:歌手としてのCarole King

作曲活動と並行して1960年代初期から自分でも歌ってレコーディングしていたようですが、美声ではなく、いわゆる「歌ウマ」さんでもない彼女の歌声はなかなか評価されず挫折していました。

しかし歌い続けていて、彼女の歌がようやく評価されたのは、1960年代末に吹き荒れたブルースロック〜ハードロックの大波が少し落ち着いてから。1971年に発表したソロアルバム「 Tapestry(つづれおり)」は大ヒット〜ロングセラーに。この時期は各レコード会社もいわゆるシンガーソングライター達を発掘して売り出すのに熱心だったし、米国のリスナーも落ち着いた、個人的な心情を歌った曲を聴きたがっていました。ジェームス・テイラー、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ジャクソン・ブラウンなどそれ以前から活動していたアーティスト達の作品もこの時期に大ヒットしました。

もちろん作曲能力があってのことですが、「歌は個性が大事」と証明してくれたおかげで、様々な個性的な歌手が活動しやすくなったのは間違いないと思います。

ポイント10:色々なバージョンを聴いてみよう

意外なことにロック系の男性シンガーが歌っているものも多いです。

Amy Winehouse
大袈裟なイントロからの派手なアレンジ。相手の男をじわじわと問い詰めている感じ。


Norah Jones
このバージョンが一番好きかもしれません。シンプルなギターのアレンジがいいですよね。


Joe Walsh


Dave Mason


Graham Bonnet
Rainbow時代のライブでもやってたみたいだけど、リッチーは嫌だっただろうなぁ。


Dusty Springfield


Bossa Novaバージョン


Pam Hall(Reggaeバージョン)


◼️歌詞


Tonight you're mine completely
You give your love so sweetly
Tonight the light of love is in your eyes
But will you love me tomorrow?

Is this a lasting treasure
Or just a moment's pleasure?
Can I believe the magic of your sighs?
Will you still love me tomorrow?

Tonight with words unspoken
You say that I'm the only one
But will my heart be broken
When the night (When the night)
Meets the morning sun?

I'd like to know that your love
Is love I can be sure of
So tell me now and I won't ask again
Will you still love me tomorrow?
Will you still love me tomorrow?


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