成果を再現する力(コンピテンシーの本当の解釈)

巷でいうコンピテンシーとは

コンピテンシー(competency)は、「高い成果につながる行動特性」とか、もっと狭義解釈して「ハイパフォーマーに共通して見られる行動特性」として採用や人事評価の中で結構認知されている、なんならもう使い古されているぐらいの概念です。

要するに、ただ知識や技能を習得するだけでも(=能力評価)、ただがむしゃらに行動するだけでも(=行動評価)、成果に繋がらないんじゃソレ意味ないっすよね、という当然の解釈から導き出された評価軸です。

ただ概念として抽象的かつ巨大すぎるため、これを実際に活用するのは非常に難しく、だから実務上は社内のハイパフォーマーにヒアリングしたものを蓄積し、それと同じような特性を持つ人材を採用したり評価したりするのが現実的な用途となり、徐々にコンピテンシー=「ハイパフォーマーに共通して見られる行動特性」として広まっていった経緯があります。

コンピテンシーの真の定義は「成果を再現する力」

当たり前ですがエース人材だって失敗することがあります。でもその人がエース人材であると引き続き皆が認識するのは、「あの人なら次は必ずうまくやってくれるはず」という「何か」があるからです。その「何か」を明瞭化するのがコンピテンシーの真の意義です。

そして、その正体をヒトコトで言い表すならば、「成果再現性」すなわち「成果を再現する力」です。

実はコレ、実生活でパートナーを選ぶときも賢い皆さんなら無意識にやっていることなんです。
・いまこの瞬間の年収が高い人よりも、ちゃんと稼ぎ続けてくれる人かどうか(⇒だから高学歴や大企業の人が婚活でモテる)
・いまこの瞬間が化粧でどれだけカワイイかよりも、歳をとっても美しいかどうか(⇒だから男性は結婚相手にはナチュラルメイクの人を好む)

恋愛と結婚ではモテる人が変わるのは、まさに恋愛は「成果」(=今日または今夜が幸せ)、結婚は成果の再現性(=将来にかけて幸せ)で相手を評価しているからといえるでしょう。

財務にある程度知見のある人ならこういう言い回しがしっくりくるかもですね。成果はPL(損益計算書)、成果の再現性はBS(貸借対照表)です。多くの人はPLにばかり目を向けがちですが、経営において最も重要なのはBSであり、BSとは言ってしまえば「企業がこの先の苦難を乗り越える力」を表したものです。人件費をPL的(費用)に捉えると、今期の利益を最大化する人を採用したり評価してしまいますが、ではBS的(資産)に捉えると、どういう人が評価されるべきでしょうか。明確ですよね。

コンピテンシーレベル(成果の再現性の判断軸)

では、そんな成果の再現性なんてものを、どうやって評価すればいいのでしょうか。

下表は、とあるコンサルタントが無料で動画配信されている内容に強烈にインスパイアされ、それを何度も聴き返し、私なりの言葉で再構築したものです。

もともとコンピテンシーレベル(1~5)という共通定義が存在していますが、ここに中間的な2.5や3.5といったものを追加している点がミソであったりします。

そしてここには2つ、多くの人の成長の壁となる死の谷(デスバレー)が存在します。

それは、レベル2.5⇒3.0と、レベル3.5⇒4.0です。当然、上層ほど対象者は少ないので、今回は全ビジネスマンの85%が脱落するといわれる第一の難所、レベル2.5⇒3.0について簡単に触れたいと思います。

「経験則」という思考停止ハニートラップ

人間は考える生き物ですが、考え続けられるようには出来ていません。非常にカロリーを使うからです。

そのため経験を積み、日常の大半は自身の経験則で省エネジャッジメントをするようになっていきます。

アメリカ人、中国人、アパレル女子、大企業のおっさん、経理課、外資系コンサルタント、港区のIT社長、さて皆さん、それぞれにどんなイメージを持ちましたか?

同様に、皆さんの職場において、「納期を早めろと交渉された」「返品クレームが来た」「会議がまとまらない」「部長がキレてる」さあどうしますか?

こういうとき、我々はとっさに、自身の経験則に照らして「やっべ、これはどのパターンだ?パターンAかBかCか、ちょっとAからやってみるか」ってなると思います。この時点では、脳の本能的反応なので、確かにそれで問題ないです。ビジネスマンでない方は、「彼氏・彼女(夫・奥さん)から今日は早く帰ってこいと言われた」みたいな想定でもいいです笑

その領域の経験値がそれなりにあるならば、多くの場合、想定するパターンのどれかで解決できると思います。ただ、数回に1度、それだと上手くいかないケースがありませんか?このとき、多くの人は打ち手を失い、思考停止に陥ります。そして、中には他責になる場合もあります。「こんな例外的なことしてくるあいつのほうが異常なんだ」と。

この状態を私は、「経験則という思考停止ハニートラップにかかった」と表現しています。

経験則ハニートラップから抜け出せないのがレベル2.5、トラップから抜け出して新しい問題を乗り越えるのがレベル3.0(プロフェッショナル領域)

ではこの思考停止トラップを抜け出すためにはどうすればいいでしょうか。

問題(イシュー)にはすべて、あるものが共通して存在しています。それを理解しているかどうかだけが、実は2.5と3.0の違いだったりします。

答えは、「意図」です。

彼女に早く帰ってこいと言われた。なぜ怒っているのか、いや待てよ、そもそも怒っているとも限らないのでは?人間は誰しも、生命の危機を感じるときには無意識に相手の「意図」を探ろうとします。人間って本気を出すべきときには本気を出せるのです。

ところが仕事になると手を抜きます。それはぶっちゃけしょうがないです。それを「当事者意識が足りない!」って根性論でやるのは個人的に嫌いというか、そんなんで解決するなら誰にだって解決できます。

問題(イシュー)が複雑だったり例外だったりすると解決できなくなる人は、2.5で止まっている人です。本人でも部下とかでも心当たりがある場合、まずは問題の発生源をつきとめる必要があります。その発生源こそが「意図」です。誰かが上流で発生させた「意図」があるから、それが「問題」となって川をどんぶらこ、と下ってきている訳です。

おじいさんにもしコンサルタントがついていたなら、「この桃はだれがどっから流してきてるのか」を調査していたことでしょう。

理屈がわかった上で訓練すれば、2.5⇒3.0には誰でもなれます。3.0に「論理的な思考」と書いてあるから、俺は論理的じゃないから向いてないや、とかは、そういうことじゃないです。

すべての人が人生を深く楽しむためのコンピテンシーモデル

字数が増えてしまったのでより掘下げた話や、レベル2.5⇒3.0以外については、また日を改めて説明します。

そしてこれは、仕事だけでなく人生、人付き合い、すべてにおいて応用できるので、ニートも主婦も、私はすべての人がこのロジックを理解すべきだと考えています。もっといえば、私のこのnoteのコンセプトでもある、幸せに生きること、にも繋がってくる話です。

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