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疫学と疫学研究について



みなさん、おはこんばんは!
これから1か月程度は、国家試験前の最後の追い込みということで、苦手な人が多い部分について、キーワードを中心にまとめていきます!


今日は「疫学と疫学研究」について。
これは、自分も覚えるまではかなり時間がかかったし、いまだに聞かれると「あれ?どれがどれ?」となってしまう部分。

しっかりと何を目的に、どんな調査を行うのかを理解しておこう!







疫学


・特定集団における健康に関連する状況、事象 (疾病・死亡・行動など)の頻度や分布を調べて、それらの規定因子との関連を検討する研究分野。
・研究方法には、いくつか種類がある。

=「人の健康に影響する生活習慣・健康状態など (曝露要因)を調べる分野の学問」




目的

・ある要素と疾病との因果関係 (原因と結果)を明らかにする。




曝露要因

・疾病の発症に関わっているかもしれない要因。
・必ずしも健康に悪い影響を与えるものとは限らない。
 「性別」「年齢」「生活習慣」を指すこともある。



危険要因

・曝露の中でも疾病を発症する確率を高めるもの。



・集団の問題を知るためには、集団を対象にした疫学研究データが必要になる。




疫学研究


疫学研究には、「記述疫学」「分析疫学」「実験疫学」の3段階ある。



疫学研究の種類


第1段階:記述疫学 (疾病の頻度・分布を記述し、仮説を立てる)
      横断研究

第2段階:分析疫学 (記述疫学などで立てられた仮説を検証する)
      横断研究、生態学的研究、症例対照研究、コホート研究

第3段階:実験疫学 (対象に対して介入を行うことで治療効果などを評価する)
      介入研究、臨床試験






研究デザイン


・研究の種類や方法。
・研究統計する際には、明らかにしたい研究内容の種類・条件・環境を踏まえつつ、適切な研究デザインを選ぶことが重要。




記述疫学

・疾病頻度と分布の正確な記述から目的とする疾病発生パターンの特徴を明らかにすること。
・目的とする疾病の発生要因に関する仮説 (疾病発生との関連が疑われる要因)を提唱することを目的とした研究。



横断研究

・「ある時点でのデータを並べてその結果をみる」という原因と結果を同時に測定して、両者の関係性を検討する。


・集団の中の個人を対象として、調査票などで曝露に関する情報と疾病に関する情報を同時に調べる研究。



・情報収集が比較的簡単に行える。
・観察期間が短い。
・追跡調査が不要。



・原因が先なのか、結果が先なのかを見分けることが出来ない。
・因果関係は検証できない。

*有病率、オッズ比を指標とする。




コホート研究

・対象集団 (コホート)を曝露群と非曝露群に分けて、原因と考えられる因子について、「未来に向かって」集団の様子を観察すること。
・「前向き調査」をして比較すること。


・ある集団における仮説として、立てられた因子の曝露を受けている群と受けていない群を対象として、仮説で立てた曝露因子の有無で2群に分けた集団を長期間追跡し、危険因子の有無・程度によって、疾病の発生・死亡リスクについて違いがあるかを明らかにする研究。


*横断研究ではできない因果関係について明らかにできる研究方法。


対象者:観察開始時点で調査したい疾病を発症していないこと。


・因果関係を検証できる。
・曝露と非曝露から発生する疾病頻度を直接測定できる。
・罹患率、相対危険度を算出することが出来る。


・発症率、発生率が低い疾病は、多くの対象者に対して調査しなければならない。
・県・国レベルの大きな規模で、10年以上の期間で行われることもあるため、時間とお金がかかる。


*罹患率、死亡率、相対危険度、寄与危険度を指標とする。




症例対照研究 (ケースコントロール・スタディ)

・対象集団を症例群と対照群に分けて、原因と考えられている因子について、現在から過去に遡って集団を追跡する。
・「後ろ向き調査」をして比較すること。


・ある集団における注目した疾病に罹患した群 (症例群)と罹患していない群 (対照群)を対象に、症例群と対照群の両群において原因と仮説したものに影響を受けていたかを比較する研究。



・因果関係を検証できる。
・観察期間が短い。
・費用がかからない。
・追跡調査が不要。
・稀な疾患にも向いている。
・複数の原因について評価が可能。 (エビデンスレベルはコホート研究に劣る)


・交絡因子、思い出しバイアスの影響を受ける。


*オッズ比を指標とする。




介入研究

・一部の対象者に何らかの働きかけ (介入)を実施して一定期間追跡し、介入を受けた人 (介入群)と受けなかった人 (非介入群・プラセボ群)を比較して、その影響を検討すること。


・ある集団における何らかの働きかけ (介入)を受けている群 (介入群)と、受けていない群 (非介入群・プラセボ群)に、参加者を無作為に振り分けて、一定期間追跡して結果を比較する研究。


*プラセボ効果:効果のない薬を飲んだのに、効果があったように感じること。

*安全性、倫理的な見地から、より厳しく審査されるもの。



・因果関係を検証できる。
・曝露と疾病発生の関連を明確にするために優れている。
・無作為の振り分けにより、未知の交絡因子の防御が可能。


・エビデンスレベルは高いが、時間とお金がかかる。
・インフォームドコンセントを取る必要がある。
・無作為化できない曝露がある。

*罹患率、死亡率、予後、相対危険度、危険因子の変化などを指標とする。




無作為化比較試験 (RCT)

・結果に影響を与える要素を出来る限り排除して研究を行う必要があるため、交絡とバイアス (特に選択的バイアス)による影響を最小限にするために無作為化比較試験を使用する。

・介入群と非介入群の振り分けを無作為に行う。


疫学研究:結果に影響を与える要素を可能な限り排除する。
介入研究:選択による影響を最小限にするため、介入群と非介入群の振り分けを無作為に行う。

例:
研究対象者を1人ずつランダムに振り分けると、とても簡単に介入群と非介入群の振り分けを行うことが出来る。


・無作為に行っても、偶然ある要素を持った対象者が一方に偏ることもある。
・研究者が気づかない交絡因子が存在していたとしても、無作為化で誤差が最小限に抑えられる。




盲検法

・被験者・研究者に、誰が介入群に振り分けられたかを知らせずに行う研究。
・「単盲検」「二重盲検」「三重盲検」の3種類がある。



単盲検:被験者が自分は「介入群」「非介入群」のどちらなのかを知らない状態で行う方法。

二重盲検:被験者だけでなく、研究者も被験者がどの群なのかを知らない状態で行う方法。

三重盲検:評価者 (測定・診断する人)に対しても盲検を行う方法。
     結果解釈に生じるバイアスに対しても、考慮することが出来る。



系統学的レビュー

・明らかにしたいテーマを抽出・評価して結果を示すこと。

・複数のRCT、コホート研究などにおける仮説として立てられた曝露因子を受けている群 (介入群)と受けていない群 (非介入群)を対象として、検索エンジンを使用して論文を検索し、エビデンステーブルを作成して方法・プロセスの質的評価を行う。


*エビデンステーブル:個々の研究に関する情報を含めた一連のプロセス、評価を要約したもの。
           複数の研究を集めて、特徴と結果を整理する。


・因果関係を検証できる。
・中立的、客観的な視点で方法・結果を検討できる。
・情報収集が比較的簡単にできる。
・個々の研究結果を数量的に1つ統合できる。


・論文数の少ない稀な研究テーマには適さない。
・出版バイアスが起こる可能性がある。
・研究における対象者数、介入方法などが異なること、数値をいろいろな角度から解釈できるため、系統的レビューだけでは結果を数値として結論づけることは難しい。

*罹患率、死亡率、予後、相対危険度、危険因子の変化などを指標とする。




メタアナリシス

・個々の研究の質、個々の研究方法の重み (研究の対象者数など)を考慮した上で、研究結果を統合して解析する方法。
・1番エビデンスレベルが高い。

・メタアナリシスで研究結果を統合することで、信頼度の高い結果が得られる。







以上が、最低限覚えておくべき大切な疫学のキーワード!
実際に問題を見ていると、かなり違いがあるから理解しやすくなると思います。


第36回国家試験でいうと、問5だね。



最後までお読みいただきありがとうございました。
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また次回~!



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