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学生服リユースショップさくらや研究【創業ヒストリー編その2】
英誌「エコノミスト」元編集長、ビル・エモット氏が関心を寄せ、英国から香川の高松まで出向いてインタビューして著書で取り上げた「さくらや」の馬場加奈子社長。そんな「さくらや」の創業ヒストリー(第二話)です。
順風ではないスタート
2010年6月に自宅で創業してから、馬場さんが最初に取り組んだことは商品となる学生服の回収でした。事前にリサーチしてビジネスのニーズに手応えを感じていたのに、いざ起業してみると、「売りたい」という電話やメールはほとんど来ませんでした。
むしろ、学生服リユースに対する馴染みのなさから、「そんな仕事、聞いたことがないからやめた方がいいんじゃない?」「怪しい仕事なんじゃないか」などと否定的な声ばかりが聞こえてきました。
そんな中、馬場さんの一人親であるお母さんだけは、「やってみたらいい」と背中を押しまたそうです。馬場さんのお父さんが消防士を脱サラして立ち上げた中古車販売のお店を運営してきたので、起業への理解があったのでしょう。その声に後押しされて、運転資金が僅かになる中、馬場さんは店舗を構えることにしたのです。
開業から半年で集まった学生服や体操服はわずか50点ほど。販売用の制服が集まったら店舗を借りて本格的にビジネスを始めようと意気込んでいたのが、実際はと言えば商売とは程遠い状況。起業のため貯金も底をつきかけていた頃、馬場さんは思い切って店舗を借りることにしました。そしてオープンしたのが、香川県高松市上ノ町で今も続く「学生服リユースショップさくらや」第一号店です。
親子で奮闘
店舗をオープンしても、相変わらずお客さんは現れず、それでもやってくるのは家賃の支払い・・・。不安と焦りを抱えながらも、馬場さんは「ママコミュニティが希薄化した現代社会に役立つ仕事」と言い聞かせ、自分自身を奮い立たせました。
馬場さんは、「学生服買い取ります」と刷ったチラシを、2月の雪がちらつく寒さの中で、毎夜、幼い我が子と一緒にポスティングをして回りました。馬場さんは39歳で起業したので若い頃のような体力もなく、「もうダメかな」と弱気になることもあったと言います。そんな時、「お母さん、こっちにもポスト(郵便受け)があるよ」とまだ幼稚園児だった長男に励まされたりしたそうです。
救いの一言
ポスティングのほかに馬場さんが力を入れたのは、無料で利用できるブログを使った情報発信でした。毎日1回以上、多いときには1日で10回もブログを更新して情報発信したりと、できることは何でもやったそうです。
チラシ配りを始めて数か月後、一人のお母さんがチラシを持って来店しました。そして馬場さんにこう言ったそうです。
「こんなお店が欲しかったのよ!」
思い切って起業したものの、なかなか周囲に受け入れてもらえず、何度も壁に突き当たり、将来に不安を抱き、「一年やってダメならやめよう」と腹を決めていたときの一言でした。
このお母さんの一言で、馬場さんは進む道が見えたと言います。
地域のお母さんのコミュニティに
それ以降、「さくらや」は来店した人のクチコミや、ブログを見たミニコミ誌の取材記事のおかげで地域で知られる存在になり、次第に来店客が増えていきました。新聞の地域版や地元テレビ局の取材も入るようになったそうです。
開業当時わずか50着だった商品の数も、それから1年足らずで約2千着にまで増えました。さくらやには売り買いに来る地域の人が集まり、自然と母親たちのコミュニティができていったのです。
(↑さくらやの「だいたいのこと」は、この本で分かります。)
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