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ちあきなおみ 歌姫伝説

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ちあきなおみ~歌姫伝説~をまとめました。
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2022年12月の記事一覧

ちあきなおみ~歌姫伝説~40 悲しみの果てに

ちあきなおみ~歌姫伝説~40 悲しみの果てに

「裸の心」の旋律に乗せ、私のちあきなおみへの恋心は、現在と過去の地平を彷徨っていたようであるが、しかしそれはほんの一瞬の夢であったようにも感じた。
 ふと我に返り視界がクリアになると、頭上からのサスペンションライトだけがあいみょんを白み染めて射ち、ステージ上の淡い光の円の中、闇夜の霞におぼろげに浮かぶ花のように、抑え難き溢れる想いを自らの恋で彩る歌手がそこにいた。その、微かに眼で捉えることのできる

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ちあきなおみ~歌姫伝説~39 恋しぐれ

ちあきなおみ~歌姫伝説~39 恋しぐれ

「おい、はじまるぞ」
 空席を隔てて横にいたゴッド(友人)が、私を促すように声を掛けてきた。
 日本ガイシホールに集う観客は、皆一様に、それぞれの世界をあいみょんと構築しているように見受けられた。その歌には、聴き手が埋めるべく空白が十分に残されている。この歌手も、自らが自らに与えた歌詞やメロディには収まらない呪術師であろう。

 「裸の心」のピアノイントロが流れていた。
 馴染みの喫茶店でこの歌を

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ちあきなおみ~歌姫伝説~38 歌手とは・後篇

ちあきなおみ~歌姫伝説~38 歌手とは・後篇

前回からのつづき

 また、ちあきなおみは、「譜面(楽譜)が読めない歌手は歌手ではない」と語ったが、これはどういう意味なのだろうか、と私は考えてみる。
 その言葉どおり、ちあきなおみは歌う前には常に譜面を凝視し、歌詞はノートに自ら書き込み読み返していた。それはドラマの収録現場でも変わらず、カメラリハーサル、ドライリハーサル、ランスルー、そして本番直前に至るまで、この場では譜面であるところの台本を離

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