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ほんとに女性蔑視?データが示すトヨタアンケート炎上問題の骨子とは。

世界的車メーカーであるトヨタが炎上した。Twitterに掲載した質問が女性蔑視?だと言われている。

1.どうして大炎上?

女性に対して「やっぱり、クルマの運転って、苦手ですか?」という質問をしたトヨタ。

この「質問」に女性の側からこんな意見が出ている。

「女性でも運転得意な人いるじゃん!」
「男性だって下手な人いるよ!」
「『やっぱり』という言葉に差別意識を感じる」

……うん、なるほど。確かにこの質問単体で見たらそう思っちゃうかも。

特に地方の男女関係なく運転を強いられる社会であればなおさらだ。毎日運転しなきゃ生きていけない、下手も得意も関係ない私たちに?ってことだもんね。

とにかく、「運転技量の差を男女で区別する」ということになんらかの嫌悪感を示す人たちが一定いた。だから炎上したんだ。

2.そもそも「女性は運転が苦手」なの?

トヨタは、「女性は(男性と比べて)運転が苦手だと思う根拠」を一切提示していない。

まさに「正しい根拠を言え!」ってことだよ。

そこでまずは「本当に女性は運転が苦手なのか?」を各種データから検証してみたい。

①男女の免許取得割合

警察庁の最新のデータ(平成29年度)によれば、どの年齢層においても免許取得者は若干男性のほうが多い。(画像からリンク)

「運転できない人(免許を持たない人)」が男性と比べて多いと言えるデータだろう。

②ペーパードライバー率に関するアンケート

警察庁のデータを補足するアンケートが「マイナビニュース」によって2017年になされているよ。

男女約500人ずつに対して「1.免許を持っているか」「2.(1でyesと答えた方に)現在ペーパードライバーか」を訪ねたこのアンケートではこんな結果が得られた。

このデータを見る限り、女性のほうがペーパードライバー率が高いと言える。

つまりは、

「女性は男性と比べて運転しない」
「免許を保有している男女各n人を運転させた際、相対的に運転が苦手な人の数は女性のほうが多くなる」

と言えるはず。

③カーライフに関する調査

「ソニー損害保険会社」では『全国カーライフ実態調査』と題して日本人の車生活について毎年調査を行っている。

その2018年版の結果を見てみよう。

先程までのデータと同じような結果を示すデータとしては「走行距離」が挙げられる。

一年の男女別自動車走行距離は男性一人あたりのソレが女性のソレを約1,100kmも上回っており、これは少なくとも男性が女性よりも多く運転しているという事情を明らかにしていると言えるだろう。

そして興味深いのは「自動車運転が楽しいか?」に関するアンケート。

マイナビニュースと同じく男女各500人に対するアンケートで「楽しい」と答えた男性の割合は約74%。

一方女性は「楽しい」が58%程度に留まっている。

「そう思わない」と答えた人の割合も当然女性が男性を大きく上回る結果だ。

ソニー損保のカーライフに関する調査の結果からは、「女性は男性より運転しないし、運転自体が好きでもない」ということがわかるんじゃなかろうか。

3.「コトバ」に潜む強制性と誘導尋問。

以上の①②③の各種データが示す通り、実は「女性は男性よりも運転する機会が少ない」。

したがってこれらのデータを見る限りでは『女性は運転が苦手』と思われても仕方がないように考えられるよね。

他にも、「トヨタは女性社員に対する独自アンケート」「販売店にやってくるお客さんの男女比」といった独自のデータから『女性は運転が苦手』と言い切っているのかもしれない。

例えトヨタがなんらかの偏見でもって『女性は運転が苦手』などという文言を世に出していたとしても、データの上でそれなりの根拠はあると言って差し支えない。

それはおそらく多くの人がなんとなくはわかっていることだろう。

では何が問題だったのか?

その答えはおそらく「コトバ」だ。

もう一度スクリーンショットをご覧ください。あ、貼りなおすので上にスクロールしなくて結構ですよ。

やっぱり、クルマの運転って、苦手ですか?”

”やっぱり”という言葉が特に問題視されていると聞く。男性である僕だってこの「決めつけるような上から目線での物言い」には女性に対する差別意識を感じざるをえない。

「コフンねこくんってやっぱり○○は苦手だよね」なんて根拠なく感覚で言われたらダブルラリアットをかましちゃうよ。イラっと来る人がいるのもわかるってもんだ。

この上から目線の「やっぱり」の原因もおそらくデータにあるんじゃないかなあ。トヨタからしたらデータの上で既に「女性がクルマの運転を苦手としているらしい」ということまではなんとなくわかってしまっているわけだし。

もしかしたらこのアンケートを作成したのは女性だったかもしれない。「私は運転苦手なんですけど、やっぱりみんなもそうなの?」。この場合、そういった個人の経験だって立派なデータだ。

だけどそれにしたって、「やっぱり」という言葉にはどこか棘がある。だからこそ批判の的になってしまったのだよ。根拠を示さずに使う言葉ではないもん。

トヨタは「やっぱり」というような言葉の持つ強制性というか、誘導尋問的なニュアンスを排除するべきだった。これは間違いない。

「クルマの運転は苦手ですか?」

と単に尋ねるか、

「〇年の調査でこういうことが言われてますが……女性の皆さん本当に運転が苦手ですが?」

と根拠を示して尋ねればよかったんじゃないかな。

一方で根拠となるデータが見つかる以上、『女性は運転が苦手』と言ってしまうことそれ自体は特段問題ではない問題なのは強制的で棘のあるその「言い方」であって「中身」ではないというのが僕のスタンス。

なんの根拠も示すことなく「やっぱり」などという言葉を使うのは差別的であると言われても仕方がないよね。

4.男女差別の問題ではない?

大炎上してしまったトヨタ。

とにかく僕は「『女性は運転が苦手な傾向にある』ことは各種データから何となく推察できるので、その根拠を示さずに『やっぱり』などという高圧的な言葉を使ったこと」に問題の骨子があると考えている。

根拠なく誘導尋問をすることはジェンダーの問題とか全く関係なく「悪」。まさに「結論ありき」。ホントに良くない。

しかし冒頭で述べた通り、批判が殺到しているのは「運転技量の差を男女で区別している点」。

つまり「女性に対する差別だ!」という声が大きいの。なんでも男女差別の問題にしたい人がいるんだろう。ちゃんと各種データを見て!

5.まとめ:トヨタはアンケートで何がしたかった?

話を再びアンケートそれ自体に戻そう。

炎上してしまい現在は削除されてしまっているけれど、トヨタは女性に対して「あなた運転苦手でしょ?」と確認することで何がしたかったんだろうか。

考えられる道は一つではないが、便宜的に僕なりの推測をここに記す。

おそらくはその「女性は運転が苦手!」というアンケート結果をもって、『女性が使いやすい、苦手意識を払しょくできるようなクルマ』の提案or製作にとりかかりたかったのでは?

もしこの推測が正しかったとすれば、「コトバの問題」を「男女差別の問題」にすり替えてトヨタに対し批判を浴びせた人々は正直間違っていたと言わざるを得ない気がする。

たしかにこの場合「やっぱり」という言葉には女性に対する偏見のニュアンスが伴う。だけどその主な原因は根拠を示していなかったからであって、男性に対して「やっぱり」という言葉を用いた同様のアンケートを実施していても問題になってたはずだよ。

したがってベストな批判は「アンケートの中身そのものに対する批判」ではなく「コトバに対する批判」であるべきだった。

その"やっぱり"をやめるかもしくは「根拠」を示してください、偏見と思われても仕方ないですよ。

このくらいじゃダメだっただろうか。

既にトヨタはアンケートそのものを削除し、謝罪に追い込まれてしまった。

もしかしたらアンケート結果をもって、女性が運転を苦手と思わなくなるような「女性に優しいクルマ」が世に出ていたかもしれないのに。

『女性は運転が苦手』というデータにある程度示されているコトに対して批判の声をあびせた結果、かえって女性が不利益を被ることになっては本末転倒では?

少しネットサーフィンをすれば「トヨタの言っていることは一概にも女性差別とは言えないかもしれない」、「ある程度きちんとした分析に基づいているかもしれない」と気づくことができる。

それでもなお女性差別と感じるならば、それはそれで正しい意見として尊重されるべき。僕はそういう批判が正しい批判だと思ってる。

根拠なき批判も時には大切だけど、それによってかえって不利益を被ることもあるから気を付けないと!

みんなで肝に銘じなきゃね。

(コフンねこ)

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