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【デビルハンター】ジュディ婆さんの事件簿 #6(第2話:2/3)

おやおや。
こんなに沢山、殺れるかね。
……殺れるね。
-ジュディ-

<前回のジュディ>
エリザベスと山奥の田舎町までピクニック。教会で ”奴ら” に襲われた。リーダー格っぽい牧師とザコ4匹を処分したが、まだまだいそうな予感。
前回(#5(第2話:1/3)
目次

……………
■#6

<ジュディNote>
「エリザベスの能力テスト結果」

・左右いずれかの ”手” で触れた対象を瞬間移動させる
・運動エネルギーも物体とともに移動する
・彼女自身を移動させることは不可
・”実際に行ったことのある” 場所にのみ移動可(記憶に左右される可能性も考えられる)
・移動可能距離は不明(5,000マイルまで確認)
・移動の法則には本人の認知が強く影響
-e.g. 服を着ている ”人” = 人も服も移動
-e.g. 物を持っている ”人” = 人も物も移動
-e.g. 車に乗っている ”人” = 人のみ移動
-e.g. 人が乗っている ”車” = 車のみ移動
-e.g. 家屋、ビルなどの建築物 = 移動不可
-e.g. 樹木、鉄塔 = 移動不可
-e.g. 木箱、タンク、コンテナなど中身が見えない容器 = 中身ごと移動
-e.g. 液体、気体 = 量や状態による?
※「ひとまとまり」「移動をイメージができるかどうか」あたりがポイント?

ジュディとエリザベスが教会で5匹を処分している間に、珍客の来訪を訝しんだ ”奴ら” が教会へと集まりつつあった。

閉ざされた教会の正面入り口を見つめる奴。裏口にまわる奴。ジュディの車をのぞき込む奴。教会に近い建物の屋根から様子をうかがう奴。素手の奴。武器を持つ奴。この時点で ”殺意” と呼べる感情を抱いていたのは数匹だったが…… 教会の中から銃声と爆発音が響くと、全員の表情が一斉に変わった。

「ひとまず外に出たいけど大量の気配が湧いたね。10…… 20チョイってとこか。囲まれてるよ」
ジュディは考えていた。
いい訓練になるかもしれない、とエリザベスを連れてきたものの… そう生ぬるい状況ではなくなってきたね。さて…… 油断はできないが殲滅は可能だろう。先制攻撃といこうじゃないか。
一瞬で考えをまとめ、すぐさま行動に移す。
「エリザベス! 奴らがなだれ込んでくる前に正面の扉から出るよ! お前は飛び道具の奴らを優先的に排除しな」
「はい!」
正面の扉は観音開きの2枚。先ほど処分したザコらが閉ざしたままになっている。オーク材で作られた重厚な扉で、高さ15フィートほど。田舎町の教会にしては立派すぎる代物だった。フロストブリンガーを抜いたジュディが扉の一方をめがけて大きく跳躍し、端部の蝶番をまとめて縦に斬り裂く。着地と同時に祭壇側へ5ヤードほどバックダッシュすると――
ドゴォォン!!
軽い助走をつけながらふたたび扉へと突進し、強烈なドロップキック!

………… ギ、ギギギ、ギギギギギ
「え? おい」
「ちょ、ドアドアドア」
「下がれ! 下がれっデアアアア」
「イデデ、イデエェェエ!」
「オゲボォ」
巨大な扉がゆっくりと、しかし確実に外側へと倒れてゆき、われ先にと詰め寄っていた奴らを下敷きにする声が聞こえ…… 斜めに傾いたまま動きを止めた。その扉を踏み台に跳躍し、宙を舞いながら外に飛び出したジュディが空中で――
ドンドンドン!
左手のリボルバーから放った3発の銃弾が付近で傍観していた3匹の脳天にめり込む。男たちが密集する位置に着地したジュディは間髪入れずに屈みこんだまま…… 右手に構えたフロストブリンガーを360度薙ぎ払った。
ザザザザッ!
回転斬り。ジュディを取り囲むように立っていた4匹の足首、合計8本が氷刃によって血を噴き出すことなく凍りつき… つららの如くポキッと音を立てて折れ砕けた。
転んで立てなくなった4匹をひとまず放置し、次の獲物へと詰め寄るジュディ。その頬を銃弾がかすめる。
「エリザベス! 教会正面、屋根の上!」
「はい!」
遅れて教会から出てきたエリザベスはすでにポーチから手榴弾を取り出し、安全ピンを抜いていた。ジュディの指示を受け、握っていた安全レバーを外す。
1、
2、
3、
手榴弾がエリザベスの手元から消える。
ボンッ
屋根の上で猟銃を構えていた男の頭が吹き飛んだ。
「おっし!」
「コムスメッコロス!」ドゥルルルルルル!
ガッツポーズを決めるエリザベスめがけ、ひときわ大柄の男が携帯用の削岩機を水平に構えて突進する! …… がしかし、男の外側にすれ違うように入り身で回避したエリザベスが筋骨隆々の腕に触れると、瞬間移動させられた男は突進の勢いやめられない止まらないまま… 別の男のドテッパラへと削岩機をお見舞いした!
「オッオッ? エッ、ゴメンゴメン」ドゥルルルルルル!
「イテテデアバババババ!」ドゥルルルルルル!
「ト、トマンネゴメンゴベッ」ボンッ
大男の頭が吹き飛び、削岩機のエンジン音が鳴り止む。

路上に集まっていた至近距離の数匹をジュディが片付けている間に、エリザベスも負けじと多くを仕留めていく。リーダーである牧師モドキを失った集団は統制が取れておらず、闇雲に攻撃をしかけては狩られていった。
「ジュディさん、隠し玉が終わっちゃったんで銃にスイッチします!」
エリザベスがヒップホルスターからグロック19を抜き、両手で構えながら叫ぶ。
「ああ。そっちの残りを頼んだよ」
自分の獲物を見据えたままジュディが答える。背中はエリザベスに任せ―― と、その瞬間。背後に尋常ではない気配が生じ、歴戦の老婆の身の毛を逆立たせた。

この気配、”覚えがある…!”

咄嗟にエリザベスの方へと振り向くと、先ほどまでは居なかったはずの男が一人、立っていた。
「あ、あ …… 」
呻きながらよろめいたエリザベスの足元に………… 彼女の両手が落ちていた。銃を握ったままの両手が。
「エリザベス!」
「面白い手だ。少々厄介だから… 斬り落とさせてもらったよ」

黒い髪をベッタリと寝かしつけた青白い顔の男。
高い身の丈に対して異形と言えるほどの細身。
真紅の虹彩と吊りあがった目つきはまるで爬虫類のよう。
そしてこの凄まじい気配――

「テメェ……!」
ジュディの母親、先代のデビルハンターを殺した悪魔に間違いなかった。

【#7に続く】

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