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逆噴射小説大賞2022ピックアップ(後編)

前回までのワシ
10/26までに投稿された作品のうち、21作を誠に勝手ながらピックアップした。
→前回は【こちら

今回のワシ
その後もじわじわ投稿は増え、最終日にめちゃくちゃモリモリ増えて、読めば読むほどワシは自信をなくした。結果260作品くらいになったので、残り5日ぶんのなかからもピックアップし、ぜんぶは書けないから絞って前編・後編の合計が40ピックアップになるようにしてみた。
※と思って投稿したらカウントしくじって41作になっていたので41です

※注)
前回ピックアップした作者の2作目は、今回含めていません(2作目のほうがYABAI!みたいな作品もあったのですが……)。
なお、これは大賞予想云々をしているわけではありません。
個人的に「好きだな」と思ったものや、「こういう物語を発想できるっていいなぁすげぇなあ」と憧れたもの、「文章がスルスルと頭に入ってきて滑らかに絵が浮かびまくるフデチカラがSUTEKI」など、ワシの嗜好目指す志向にブスリと刺さったものを選んで(さらに絞り込んで)おりますんで、これ最終選考行きじゃね……? みたいなワザマエ作品がピックアップから漏れていたりもします。


22.インタヴュー・ウィズ・ハイオーク・ミックス

オーク、大好物です。ありがとうございます。
タイトルと、冒頭の一文「私達の言葉で彼の名を発音することはとても難しい」と、焚火×鉄兜×軍馬肉ジュー、……この3 HIT COMBOで、ワシのコーフン・ゲージは即MAXに達し赤く点滅した。これは異種族間コミュニケーションですかね、と思いながらフムフム読む進めると、さらにSF要素が加わり、インタビュアーとワシのシンクロ率が激UPし、ハイブリットハイオークの言動にシビレ、ワシのキャメラは止まらなくなった。

23.リーチアウト

台詞ひとつひとつ、行動ひとつひとつにズシリとくるものがあり、テーマもあいまって、冒頭からそれらを感じ取ったワシは姿勢を正し、じっくりゆっくり静かに読んだ。”私”の状態と、場面と、視点の引き方の合わせ技がゴイスーで、ケア行為もR.E.A.Lだもんで、気づけばワシも ”私” になったような気持ちでワシをケアしていた。800字のラストも(いったいこの状態と状況から何が起きるのだろうか)と気になるし、他ではなかなか巡り合えない作品という香りもすごいし、続きが読みたくなった。

24.新地之三郎翁葬別ノ儀

「浅黒く光沢する煮凝り」という表現に、ワシは一発K.Oされた。漢字の割合がめっちゃ多いのに、個性的かつドンピシャな単語のチョイスと、筆づかい&構成のワザマエぶりによってめちゃくちゃ読みやすく、異形のものたちの一挙一動の表現力もゴイスーで、その場……葬儀の特殊な空気感がBIN-BINに伝わってきた。「遺言!」おう、おう、の合いの手とか、涎をすすって小突かれて場が沸くとか、もうすごく好き。
タイトルが「葬別ノ儀」だもんで、砲撃葬でドーンとサヨナラしたら物語が終わっちゃうの!?(終わらないで!)と思う部分もあれど、ドーンした先で何かが起きるのかも……いやまだドーンしてないわけだしドーンする前に問題が起きるのかも……などと続きを想像するのも楽しい。

25.銀の歌と最後の海嘯

FANTASY……。大好物な名詞がどんどんでてくる。読み聞かせてもらっているような気持ちでするすると読めてしまう語り口調と、一文、一文の語彙力と表現力がゴイスーだもんで、言葉を追っているだけでなんだかWAKU-WAKUする。物語の主軸になりそうなものがいくつかあり、それらがどう絡み合って何を起こすのか、続きが気になる。最後の一文は、逆噴射的に言えばどう評されるかはわからないけれども、ワシはこのFANTASYが好きだと思ったので関係ないのです。

26.二十五時坂寒鰤屋

逆噴射小説ワークショップの教えで「冒頭からわかりづらいなこれどんな状況で誰がなにしてるんなどと読者が混乱したらゲームセット」(※個人の拡大解釈です)みたいものがありましたが、本作は時代物ドラマの冒頭としてめちゃんこ上手く情報を与えながら引き込んでいるな……しかもひとつひとつ端的に……と脱帽した(脱帽したのは読後冷静になってからで、読みはじめたときはそれすら考えずにスッとこの場面に気持ちが入り込んでいた)。文章のワザマエぶりもすごいですが、若旦那と末弟それぞれの想い、性格、関係性、そういったところが火鉢やアツアツ餅のようにあったかくて、この二人の物語をもっと読みたいと思ったし、ヤサシイから一転、ラスト、やるときゃやる! って熱さもあって、いいな……と。

27.little blackbird

(よい意味で)800字とは思えなかった作品のひとつ。冒頭から大野氏がヤバイ人間であることを「背骨が一つ少ないせい」のひとことで一発表現し、その後、彼の考え方や半生が、超スムージースムージーな文章によってワシの頭に入ってくる。300文字くらいで(フムフムこの大野氏が暴力でアレしていくのか……)とワシが居住まいを正した直後、大野氏はモンスターボールに強制収納されて圧死(と一瞬思ったのはワシがさいきんサトシくんとゴウくんのポケモンアニメをたまに見ているせいです、すみません)という急展開に後頭部を殴られた。この死の表現もまたすごく、最後の大野氏のひとこと(心境)もまたすごく、そんなキャラ立ちしまくっている彼がいったいこの先どうなってしまうんだろうか、と、続きがチョー気になるところで800字が終わってしまった。

28.会長の犬

この御方(直接交流はないですがジュージさんと呼びます)の文章センスは、いつもスゴイ。絵も好み。会話は軽快で読んでいて引き込まれるし、場面の描写も上手くて「いったいどういう状況なのか?」と戸惑うことがぜんぜんない。
たとえば本作なら「ヘルメット越しにパチンと頭を叩かれた。西さんだ」の一文。この23文字だけで、主人公が戦場でボーっとしてしまっていた(そしてハッとした)ことや、西さんの性格とかベテラン感とか、そもそもヘルメットを被って、戦っている……ことなどが一発で伝わってしまうし、この軽快なテンポ、ジュージさん節が連続していくことでワシは物語の世界にズイズイと入っていける。タイトル(タイトルも好き)が示す意味や、矢崎さんのアレもチョー気になり、続きが読みたいです。

29.ほほえみを焼き落とせ

逆噴射2020チャンピオンの怪作。摩部さんの作品はいつも凄味がヤバイ。本作の不気味な白黒画像(摩部さんのはいつも白黒で好き)と不穏なタイトルがスッとNote新着に表示されたとき、ワシはGOKURIと喉を鳴らし、SWATがバリスティックシールドを構えてエントリーするときのような心構えで読みはじめた。
二行目、病室のベッドの娘の亡骸に埋めていた顔を引き上げる……ところまでは(ああ、病室……白いシーツ……娘が死んだのか……悲しみ……)と摩部さんらしい開幕で、ワシも気を引き締めた。だがすぐあと、”仏陀(ナンデ?)”、”「アナタ(カタカナだ)」”、といった違和感ワイヤートラップを察知。爪先をひっかけないように慎重に歩を進めていった……のだが、”熱波師” という三文字の巨大鉄球がとつぜん頭上から落ちてきてワシは即死した。
霊体になったワシはそのまま読み進めた。超面白かった。そして、いつもとは違う作風であっても、チャンピオンはやっぱりすごかった。
たとえば技術面では本文
>「一流の熱波師である貴方にしかできないことなのです」
> 一ヶ月後にある、神有月の出雲で行われる神々のサウナ我慢大会。
からはじまる連続、
台詞→地の文で一部→台詞→地の文で一部→台詞…の構成がうますぎるなあと思い、ワシは勝手に唸った。テンポがあがり、リズム感もでて、普通につらつら書くより圧倒的に短文で簡潔にルールを伝えてしまう。果たして神野氏の娘は助かるのか、どういう戦いが繰り広げられるのか、そこでの神野氏の動きとは……気になる。

30.原始人ジロ

猿パルプ! ワシはサルが苦手(子供のときに隻腕のボス猿に襲われたし猿の惑星とかで証明していたとおりいつか人類と対決するしTV動物番組では服を着てまるで人間みたいにいろいろ上手にやって歯を剥き出しにして笑うから正直コワイ)だが、この決戦の迫力はすさまじく、グッと引き込まれた。ただの猿バトルならそこまで惹かれなかったかもしれんけど、本作は「原始人」であり、謎のサラダボウル円盤がずっとチラチラ見えてて頭にこびりつく(異物なのに説明しないあたりが上手いしニクイ)し……で、この話がどう進んでいくのかがとても気になった。
※ご本人のライナーノーツを読んだらいろいろ衝撃的な背景設定(おっぺぇとか)があってバビロニア。

31.ここに死が終わり海が始まる

(よい意味で)800字とは思えなかった作品のひとつ。海なし県に生まれ育ったワシにとって、海は決して身近なものではなかった。ワシはそれなりに泳げるが、海がコワイ。自然と主人公の考え方に入っていくことができたのは、そういう類似点によるもの……というわけではなく(一部そう言えるかもしれないが)、ワザマエの文章力によるものだった。静かなシーン。主人公の視界にいま見えているもの、五感で感じていること、考えていること、などが淀みなくワシの脳に流れこんでくる。ワシはまるで自身がその場にいて、そう感じ、そう考えているような気持ちで読んでいた。終盤、内面から少し視界は外に向き、少女は一体なんだったのか。失敗した、とはなんなのか。逆噴射的にいえば物語の先へ先へ話を転がすとかそういったドライブ感とは違う作品なんだけども、ワシはこの主人公の思考や行動をもっと追ってみたい……と思った。

32.天煉の祓魔刀

バールさん節が極まっている。ワシが目指そうとしても目指せない/たどり着けない作風だもんで、ただただ正座して目をかっぴらいて真剣に拝読した。ひとつひとつの動作、表現がとにかく洗練されていて、シブカッコよく、観測刀のギミックというか用途もカッコよく、「君たち」の意味もヤバカッコよく、敵の核の情報がショッキングで、ラストはゾクっとする自問で終わる。バールさんにしか書けない、すごい800字に脱帽の帽です。

33.ハッピーエンドメイカー

まずタイトル絵でぐっと心を掴まれた(審査員は審査に関係ないというけどワシは審査とは関係ないのでタイトル絵も楽しむ)。ノリの良い主人公で……ちょっと破天荒な……サイバーちっくな世界の……と思いながら読みはじめると、文章が完全にワシの期待に応えてくれた。余計なものを削ぎ音した端的&センスありありな会話/地の文の連打がパンパンスパパパパンとワシの脳を刺激し、気づけば(もっとくれ……もっとだ……!)と続きを渇望するようになっていた。テーマも面白い上にわかりやすくてキャッチ―、シチュエーションを変えての連載形式にピッタリな作品だもんで、このスピード感でいくつも話を読んでみたいと思ったし、読者のワシも勝手に自分で(こういうステージ(ゲーム感覚)があったら面白そうだ!)などと妄想が捗るので、好きです。

34.背番号74の叫び

ワシが小説を書く上で(こうあらねば)とHISOKAに目標にしているパルピストのひとりがこの御方で、本作もめちゃくちゃ好きです。
冒頭でミイトキーナ、手榴弾、連合軍、と読んでああこれはビルマの守備戦……とワシは完全に前のめりになりつつも、これが歴史にそって進むのであれば悲惨な物語になる……と背筋をのばした。その直後、稲尾氏が投げ返す、敵陣のど真ん中に飛んでいく、ぱっと心持が明るくなる、と続いて、稲尾氏の勇敢さと存在感、厳しい状況下でのわずかな希望……を感じ、俺も少しでも力にならねばと思う主人公の人物像を読み取り、ワシの心持も少しだけ明るくなったのに、稲尾のいる方向から爆音が響いて、ワシは絶望した。
そして、これだけ思考を働かせるシーンが、数えてみれば冒頭たったの150文字くらいでカンペキに表現されていて、カンペキにワシの心を掴んでいることに、ワシは愕然とした。
その後は稲尾氏と俺の回想(稲尾ォ……なんちゅういい奴なんだよ……とワシは心がキュッとなった)があり、過酷な戦場の場面があり、俺の覚悟があり……そこで終わってしまう。このあと、物語はどうなっていくのか。タイトルからして、戦争ドラマ重点で進むというよりも、この体験を経てた主人公のその後の人生が描かれるのだろうか。どういう方向に物語が進んだとしても、ワシは続きが読みたくて、いまこのときもモンモンモンとしている……。

35.うとみ姫とがらくたの玉座

連載小説『サイコロシアン・ルーレット』(note掲載)を読んで餅辺さんファンになったワシは、投稿締め切り31日の夜、(あれ……今年は餅辺さん参戦しないのかな……読みたいな……読めるかな……読みたいけれど……読めないな……年も力も足りないな……でもいま読みた~い……)とケンちゃん&フムフムばりに待ちわびながらブラウザをリロードしていた。そして21時過ぎ、ワシは本作を読むことができた。その直後にもう1作も投稿され、両方一気に読んだワシの心は満たされ、ゾワリザラリとしたものが心に残った。すごいな……と思うのは、両作品とも、かなーり自然な日常風に入って、語られ、そういうものなのだなと読むんだけども、さりげなく、すこしずつ異物となる描写が混ざってきて、あれーおかしいな……どうしたのかな……とワシの心がプルプルし、気づけばもう引き返せない薄暗い場所に引きずりこまれているような読み心地。特に本作のほうは、亜子が「困ったなぁ」とか言うくせに「もうどうでもいいや」感の強さが勝る絶妙な塩梅で、いやいやどうでもよくないのでは……と読み手のワシが思わざるをえないほどヤバイ環境だと伝わりまくる描写もスゴイ。最後はヒャッとなるわけだけど、どうでもいい病の亜子のリアクションやその後の行動がどうなるのかがまったく読めず、続きが気になってしかたがない。

36.その機械は死を視る

剣禅さんご本人が「導入がスムーズに読み込めるかとか基礎部分を強く意識した(ワシ解釈)」と仰っていたとおり、冒頭一文の掴みもすごいし、そのあとに続く一人称の描写や世界観の提示も丁寧で、五感も刺激されちゃったりしたワシはスッスッスッツスッと話を追いかけ、惹かれていった。一人称ならではの、俺の見たこと感じたこと考えたことが絶妙なワードセンスで挿入されいって、読み終えるころにはこの主人公のことを気に入っているワシがいた。少女のラストが神託=回避不能を思わせるが主人公だいじょうぶか! 三日しかないぞ! (どうなる!)と気になり、どう回避するのか(できない結果に終わるのか)など続きが読みたいと思った。

37.鉄色少女は、夢を見る。

冒頭の一文がすごく好き(そしてスゴイ)。この物語の発端になる事象をにおわせる一文としてキマりまくっていて、ワシもこういう一文キメたいな……と憧れを抱いた。主人公のアマリリは水晶玉に将来を決められてしまう、それが当然という風習をもつ村、それがこの村だもんで……と受け入れようとしているアマリリ……しかしその本心は……やっぱ違うんですよね、と読者に伝える描写を、男との静かな会話、鴈撃ちしながら、という手法に重ねながら絶妙に表現しているのがゴイスー。首都の表現もステキで、因習が根ざす村との対比がカンペキにキマっている。話をどんどん進行させて読者を引っ張っていくタイプの作品ではないけれども、ワシはじっくり、焦らず慌てずアマリリの進む未来を追っていきたいなと思った。

38.夜に質量・明日はパフェ

タイトルも絵もシャレオツで、ワシは(夜に質量ってなんだろう……)と引き込まれた。ワシはこういう独創的な物語(設定)を発想するのがとても苦手で、とはいえ自分にも一定必要なモノだと思い悩んでいるだけに、本作には脱帽するしかなかった。しかも、この独創的な舞台をさらに魅力的で奥深いものにする要素として、不思議現象を活かしたスポーツまで考えられおり、もうワシは10個被っていた帽子をひとつのこらず脱帽した。話の展開もすごく、これも800字とは思えぬ濃さで疑いの目をもって文字カウントしたら、なんと710文字しかなかった。「きゅ、90文字も余らせてこのクオリティ!」と叫びながらワシは息絶えた。

39.霊薬を飲み干して

今年は爺さん/婆さんが活躍する作品が少なく、ワシは悲しんでいた。そんななか、締め切りGIRI-GIRIの23:45に出現した本作を読んで、ワシは満足de満足の意と経緯をこめ・・・拝んだ。ありがとうサブロウ・・・。
ワシはサブロウに固い握手を求め、右手の骨をすべて粉々にされた。

40.夜を知らない

”俺”、つれぇな……エッ、労働まで……エッ、眠効剤……? 読んでいくと ”俺” の境遇がしんどくてツライ(と思わせる文章力やキーワード、小物などがゴイスー)。絵にみんなでお祈り(しかも双子の腕、とかよく思いつきますね……)もなんかヤバイし、サラっとヤバイ質問をしてくる男もヤバイ。あきらかに異常な世界に、少しまともだけど諦めの境地にいるような ”俺” がいて、そこに謎の大揺れがきて、ワシの心も大揺れした。”俺” はどうなるのか。めちゃくちゃ気になる。

41.童戯の不始末

音、臭い、虫、暗い。とにかく当主と、当主がいる部屋から離れたくなるワシ。でも部屋は豪奢で、時代を感じさせる各種要素の出し方もマイウーで、語り口も絶妙で、ついつい当主の話に聞き入ってしまうワシもいる(主人公とシンクロ中)。でもブブ、とか虫が飛んでるのはちょっと……と部屋から退出しようとすると、旧友の情報も開示され(ははぁなるほど……)とワシの心は前めりになる。そうやって気持ちを前後させられるゴイスーな文章なわけです。そして重要な一点、妙な餓鬼=座敷童=おかっぱでちょっとカワイイ……座敷童を怒らせたのかしら……とワシは勝手に想像していたので、あまりゾクリ感はないかな……などとたかをくくっていたのですが、土の中から~でズーンとやられました。この主人公は何者で、どうやってこの事態をおさめるのか、続きが気になる!

ほか220作品にもゴイスーがたくさんあるので、片っ端から読んでみてください!

以上です。

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