「ノーマライゼーション」「インクルーシブ」って何?
「ノーマライゼーション」や「インクルーシブ」という言葉は、なかなか直観的に理解しづらいことがあります。日本語で表現すると、「標準化」や「包摂的」になるのですが、もっと混乱する人もいるかもしれません。
そこで、授業ではこのような図で表現して説明しています。
私たちはつい日常の中で、「普通は・・・」という言葉を使います。ただ多くの場合、それは「『私が思っている』社会的な物差し」や「『私がこうあってほしいと願っている』当たり前のこと」でしかありません。
社会を構成する人についても、つい私たちは「弱者」というカテゴリーを用いて、福祉の対象を規定します。そのとき、「弱者」以外の人のことを、「強者」と表現することはあまりありません。ただ、そもそも言葉をあてがうことは少ないのですが、どこか意識の中で「普通の人」と規定している場合が多いかもしれません。
「ノーマライゼーション」や「インクルーシブ」という概念の理解に大事なのは、この「普通」の指す概念を再定義することです。すなわち、もともといろんな人がいるのが本来の『普通』の社会の状態であり、すべての人が暮らしやすい社会にしていうことがそもそも必要だということです。
そのため、いわゆる「弱者」という存在が「社会から取り残さている」現実があるのであれば、それは本来のあるべき社会の状態ではないので、当然「本来ある状態に『戻す』」必要があるということです。そして、その営みが「福祉」と名付けられている、ということです。
福祉の歴史の授業では、エリザベス救貧法が福祉制度のスタートとして説明されることが多いかもしれません。大事なのは、その延長線上に今があるのではなく、「ノーマライゼーション」や「インクルーシブ」という概念の登場によって、いわゆる「パラダイムシフト」が起きているということです。
「困っている人を助けたい!」という気持ちが、福祉の仕事を目指すきかけになることは多いですし、それ「想い」自体は否定するものでは全くありません。大事なのは、「支援する」「される」の関係で社会がそもそも成り立っているのではなく、本来は誰もが「ともに」存在しているという世界が「もともとある」というパラダイムで社会を再発見することです。
これこそが「福祉」の学びのスタートでありたい、と考えています。