縄文時代と火焔型土器のクニ:2 /十日町市博物館
(承前)
火焔型土器が、ずらり。
通常ならば「1点だけでもたいへん!」というクラスの作例が、ここには何十点と集められている。いずれも、十日町市内からの出土品。
国宝の火焔型土器は、向かいの専用ルームに展示されていた。
文化財指定の対象は笹山遺跡出土の928点一括であり、この専用ルーム内にある土器はすべて国宝。
なかでもいちばんよく知られた、大きさ・完成度・コンディションともに極上といえる火焔型土器が、中央の独立ケース内に鎮座していた。
現代人の目には独創的に映るこの造形は、けっして突然変異的に生み出されたものではなかった。東北や関東を含めた周辺地域のスタイルを部分的に採り入れ、ミックスさせて成立した様式であったことが、研究により判明している。
こういった火炎型土器の内側には「おこげ」があり、なんらかの煮炊きに使われたことは確実。かといって、日常のうつわというよりは、祭祀に用いる特別な道具であったと推測されている。
「おこげ」の存在は、科学的な年代測定も可能とした。これにより、火焔型土器のスタイルがどのような変遷を遂げていったかについても、導きだされている。
初期の火焔型土器は寸胴に近く、ずんぐりとした姿形。口縁の装飾はまだまだ控えめで、コンロの火加減にたとえるならば、弱火だ。
これに対して、最盛期の火焔型土器は、くびれがきいたメリハリあるシルエット。鶏頭冠突起はさらに大きく・高くせり出して、うつわのかたちを呑み込んでしまっている。間違いなく強火、最大火力である。
火焔型土器をひとしきり観て学んだあとは、奥の部屋へ。
ここでは火焔型土器以外の縄文の遺物を展示するとともに、火焔型土器をテーマとした体験コーナーが設けられていた。
「立体パズル」に挑戦。ホンモノを型取りしたと思われるプラスチック製の破片を組み合わせて、先ほどまで凝視していたあのかたちを、みずからの手で再現していく。中央の軸とそれぞれの破片には磁石がついており、難なく完成。たのしい。
実物大・素材も同じやきもののレプリカを触って、持ち上げてみることもできた。
いや、これ、かなり重いです……小学校中学年以上推奨。
煮炊きをするとしたら、これに液体の重さも加わるわけだ。すると、ひとりではちょっと厳しいくらいの重さにはなる。
ただ、ひとりで抱きかかえる分には、意外に安定感のある形状だということも、この体験によってわかったのだった。
——このあと「雪と信濃川」「織物の歴史」の展示、さらには、十日町市博から歩いて10分ほどで行ける「越後妻有里山現代美術館」を拝見。3年に1度開かれる「大地の芸術祭」の中心施設である。
——縄文と現代美術。
どちらの展示も一気にまわってしまえるとは……十日町、じつに欲張り。じつに、すばらしい。
2館ともに常設の展示であるから、いつ来てもよい。アート好きには広くおすすめできる街といえよう。
それでもやっぱり、いちばんのおすすめは、雪の季節だとは思うのだけれど。
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