建立900年 特別展「中尊寺金色堂」:1 /東京国立博物館
指先に……中尊寺金色堂。
新幹線の仙台駅・エスカレーターの下でみつけたご当地限定ガチャ「みちのくフィギュアみやげ」。「断然、これ!」と思っていた金色堂を一発で引き当てることができ、テンションが上がった。
ご覧のように、手のひらサイズながら、なかなか精巧にできている。
だが、扉は固く閉ざされ、壮麗なみほとけたちを拝することまでは叶わない。
黄金の扉を開け放ち、お堂の内部にお邪魔するかのような擬似体験を可能とする展覧会が、上野の東京国立博物館で開催されている。
会場は本館の大階段の真下、仏像展ではおなじみの「特5」。広すぎず、集中力が持続しやすい大きさで、個人的にすきな展示室である。
入場してすぐに、大きなモニターが現れた。325インチ! もはやモニターというより、壁そのもの。そこに8KCG・原寸大で金色堂を再現したVR映像が映され、来場者を圧倒していた。
この種のVR映像に関しては、常日頃より、あくまで補助的なものと捉えている。今回も「高精細だなぁ」とは感じたけれど、複製は複製。臨場感なんて言葉、お気楽に使っちゃあ、おしめぇよ……「早く実物が観たいな」と思いながら、数分間の映像を視聴していた。
モニターを突き当たって右、壁沿いには中尊寺の至宝が並んでおり、金色堂内の諸仏まではまだ、じらされる。正確には、諸仏はすでに背後におわす状態だが、当方、順路はきっちり守る派だ。壁沿いから観ていくことにした。
「中尊寺経」こと《紺紙金銀字一切経》(平安時代・12世紀 中尊寺大長寿院 国宝)はともかく、それらを納める経箱の出品は想定外。黒漆の地に、螺鈿で題字を表す。筆の書き文字とはひと味違うたどたどしさが魅力的で、こういったものを「工芸的な文字」というのだろう。
※中尊寺経の例。
国宝《金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅》(平安時代・12世紀 中尊寺大長寿院)まで来ていたのには驚いた。いま調べると東博の寄託品らしく、ならば出品は当然ともいえるが、なんにせよ眼福。
中尊寺経のような紺紙金字経の世界を、扉絵を含めて再構成し、宝塔をかたどった縦構図の大幅(たいふく)とした珍しい作例。緻密な描き込みを、間近で拝見することができた。
ちょうど反対側の壁沿いには、《金銅迦陵嚬伽文華鬘》(平安時代・12世紀 中尊寺金色院 国宝)や《孔雀文磬》(鎌倉時代・建長2年〈1250〉 中尊寺地蔵院 国宝)といった、金工美術の名品も。
金色堂の内部を荘厳していた仏具で、すばらしい彫技、鉄味(かねあじ)のよさにしばし見惚れた。
本展の出品作に関しては、金色堂の諸仏の他は資料的なものがほとんどかなと勝手に予想していたけれど……よい意味で、裏切られた。はっきりいってこれだけでも、十二分にすごすぎる。(つづく)
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