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12.趣味の話⑤ 読書(3)

はじめに

はい、こぼば野史です。

見出し写真は「ジョフラン夫人のサロン」という絵画。啓蒙思想の時代らしい絵画である。思想討論、情報交換の場であり、文学談儀などもしていたそうなので、この記事に的確ではと思い、附してみた。

因みに、歴史上のサロンとは、

17~18世紀を中心にフランスで流行した社交場。貴族・上流階級の女性などが主催し、文人・学者・芸術家らが文化・思想について議論した。のちにフランス革命の指導者となる思想家たちの集ったサロンもあり、芸術家にとっては自身の才能を認められる機会の場でもあった。

全国歴史教育研究協議会編『世界史用語集』(山川出版社、2014年)

である。

今回も今回とて前回の続き。

理由は何か分からないが、現時点で最もスキが多い投稿になっている。あまり気にしていないとは言ったが、やはり多いと嬉しい。人間の性なのだろうか。

さておき、紹介である。
前回の投稿で、新潮社文庫から始める、という風に書いたはずだが、少し変更する。というのも、フリマサイトで購入した図書が届いたからだ。前回見て頂いた方は宮本常一『忘れられた日本人』(岩波書店、1984年)ではないか、と思うだろうが残念ながら異なる。期待をさせてしまっていたら申し訳ない。

五十音順で紹介する、というのが私のルールなので、先ずこの図書から紹介しよう。

講談社学術文庫

今回の購入が、唯一の講談社の文庫である。

図書は川勝義雄『魏晋南北朝』(講談社、2003年)である。貴族制社会への見識もある名著らしい。また、紹介文にもある、「華やかな暗黒時代」という矛盾したキーワードがあり、この意味を知りたい方はぜひ一読してほしい。

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出典は不明だが、講談社「中国の歴史」シリーズの旧版の一らしい。シリーズ全てを一応附す。

1.貝塚茂樹、伊藤道治『古代中国』(2000年、初出『原始から春秋戦国』か、出版年不明)
2.西嶋定生『秦漢帝国』(1997年)
3.川勝義雄『魏晋南北朝』(2003年、初出同題1974年)
4.布目潮渢、栗原益男『隋唐帝国』(1997年)
5.周藤吉之、中嶋敏『五代と宋の興亡』(2004年、初出『五代・宋』、1974年)
6.愛宕松男、寺田隆信『モンゴルと大明帝国』(1998年、初出『元・明』、出版年不明)
7.増井経夫『大清帝国』(2002年、初出『清帝国』、1974年)
8.佐伯有一『近代中国』(1975年)
9.野村浩一『人民中国の誕生』(1976年)
10.日比野丈夫『目で見る中国の歴史』(1975年)

隋唐帝国以後の歴史については詳しくないのでわからないが、貝塚茂樹先生や西嶋定生先生は古代東洋史の大家である。ただ、栗原益男先生や愛宕松男先生は大学図書館に論文集があったような気がする。

そして、上記は旧版「中国の歴史」シリーズなので、もちろん新版がある。

1.宮本一夫『神話から歴史へ 神話時代 夏王朝』(2020年、初出2005年)
2.平勢隆郎『都市国家から中華へ 殷周 春秋戦国』(2020年、初出2005年)
3.鶴間和幸『ファーストエンペラーの遺産 秦漢帝国』(2020年、初出2004年)
4.金文京『三国志の世界 後漢 三国時代』(2020年、初出2005年)
5.川島芳昭『中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』(2020年、初出2005年)
6.氣賀澤保規『中華の崩壊と拡大 魏晋南北朝』(2020年、初出2005年)
7.小島毅『中国思想と宗教の奔流 宋朝』(2021年、初出2005年)
8.杉山正明『疾駆する草原の征服者 遼 西夏 金 元』(2021年、初出2005年)
9.上田信『海と帝国 明清時代』(2021年、初出2005年)
10.菊池秀明『ラストエンペラーと近代中国 清末 中華民国』(2021年、初出2005年)
11.天児慧『巨龍の胎動 毛沢東vs.鄧小平』(2021年、初出2004年)
12.尾形勇、鶴間和幸、上田信、礪波護、王勇、葛剣雄『日本にとって中国とは何か』(2021年、初出2005年)

これも旧版と同じく鶴間和幸先生、金文京先生、川島芳昭先生、氣賀澤保規先生、杉田正明先生、尾形勇先生は知っている先生である。礪波護先生は宮崎市定先生の一番弟子である。

これらは旧版も新版も、貯金が貯まれば揃えたいシリーズである。

少し横道に逸れてしまった。続ける。


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新潮文庫

持っているのは安部公房『砂の女』(1962年)ゲーテ著、高橋義孝訳『若きウェルテルの悩み』(1952年、改版2010年)高村光太郎『智恵子抄』(1951年)である。世界史や受験のための文学史で学んだ名著。言葉がまだ文語のものもあり、読むのを少し躊躇ってしまっている。


持っているもので読んだことがあるのは、最近のもので竹宮ゆゆこ『心が折れた夜のプレイリスト』(2021年)である。竹内ゆゆこさんは『とらドラ!』が有名らしいが、申し訳ないが知らなかった。

しかし、この小説、私にしては珍しく1日ほどで一気に読んでしまった。それほどまでに読み進めるのに楽しかった小説である。登場人物のキャラクターが濃い。あらすじは以下

人生初の彼女に振られた。そして、俺の部屋の窓は閉まらなくなった。怪奇現象? あるいは、メンタルの問題? 悩みを抱える俺に「彼」は飲み会で声をかけてきた。濃見秀一。誰もが振り向くイケメン。しかし、変態。この男、俺の話を聞いてくるかと思いきや……。元カノと窓。最高に可愛い女の子とラーメン。笑って泣ける、ふしぎな日常をエモーショナル全開で綴る、最旬青春小説。

竹宮ゆゆこ『心が折れた夜のプレイリスト』(新潮社、2021年)より引用

ちくま学芸文庫

こちらも岩波書店の図書のほとんどと同じく、資料の作成に使用する節が大きい。持っているのは一大シリーズの一部分。陳寿著、今鷹真・小南一郎・井波律子訳『三国志』1~8(1992~1993年、初出『世界古典文学全集』24A魏書1977年、24B蜀書1982年、24C呉書1989年)の1~4、6、8の6冊である。教授からは「日本語訳に頼らず、原本を見なさい」と言われたため、今はあまり参考にできていない。

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中公文庫

持っているのは2冊。

植村清二『諸葛孔明』(1985年)は日本で「三国時代の有名な人物は誰か」と聞くと答える人が多そうなほど、有名すぎる人物である。諸葛孔明は三国時代のヒーローとして人気である。日本では曹操は悪役としてイメージされてしまっている。私の指導教官が泣きそうである。

平易な文章で読みやすかった記憶がある。

まだ中央公論社の時代に出版されたものだからであろうか、中央公論新社のホームページには見当たらない。

もう1冊は宮崎市定先生の最高傑作と呼び声高い宮崎市定『九品官人法の研究-科挙前史-』(1997年、初出東洋史研究叢刊Ⅰ)である。こちらは完全なる学術書であり、読むのは相当な根気と敬意が必要である。

こちらも中央公論新社のホームページには見当たらない。我が指導教官も「既に絶版になっているため、入手は相当困難であろう」と言われていた。

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徳間文庫

ここから、1冊しか持っていない文庫が続く。

持っているのは1冊のみ、守屋洋『中国覇者列伝』(1985年)である。日常的に読むのも良いが、私は教育実習で資料作成に使わせて頂いた。

春秋戦国時代の覇者(春秋の五覇など)に焦点を当てたものである。故事成語の由来を書いていることが多いので、その点は非常に勉強になる。

しかし、東洋史学者曰く「参考文献が全く書かれていないので、資料に使うには不向き」という評をされている。なので私も学術的なものには使用していない。

なぜだろうか、こちらも徳間書店のホームページに載っていなかった。

双葉文庫

持っているのは、実写映画化、アニメ映画化ともにされた傑作、住野よる『君の膵臓を食べたい』(2015年、文庫2017年)である。

アニメ映画を見たので、あらかたのストーリーは知っているが、心情描写はハッキリとしていない。いつか読まねばならないと思っている。

文芸社文庫

今回最後の紹介である。

最後にこれを紹介できることが、何か奇跡めいたものを感じている。それほどまでにこの図書は私の心を動かした作品である。

最後に紹介するのは小坂流加『余命10年』(2007年、文庫2017年)である。

大学の教職課程、図書館経営の講義のブックトークという授業で、とある学生が紹介したものである。なぜか私に鮮烈な印象を与え、「買って読んでみたい」という衝動に駆られた。だから読んだ。

20歳の茉莉は、数万人に一人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが……。涙よりせつないラブストーリー。

小坂流加『余命10年』(文芸社、2017年)より引用

これは是非とも読んでいただきたい1冊である。感動することをここに保証する。

各章末尾のゴシック体の文章は何を示しているのだろうか、興味のある人は手に取るべし。

実写映画化もされるらしいが、進捗はどうなのだろうか。続報がない。コロナ禍で頓挫しているのかもしれない。


次回予告 -「終わりに」に代えて-

前回よりも文字数は少ないが、個人的にボリュームは同等だった気がする。講談社学術文庫に多く割きすぎた気もしなくはないが。

今回は読めていない文庫本が多かった印象である。それにもかかわらず、紹介してよいものか、と一瞬悩んだが、このような機会はこの後は金輪際なさそうなので、紹介した。

これからも購入し、増加する予定である。今度は1冊ごとの紹介になりそうな気がする。

前回の「次回予告-「終わりに」に代えて-」でも予告したように、次回はおそらく、四六版の図書の紹介になると思う。現時点では5冊しか持っていないので、1つの投稿に纏まるはずである。

以上で「こぼば野史文庫」文庫本篇の紹介を終える。

頓首頓首。

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