ゆくりなくも耳にした言葉に心が和んだ話
そう遠くもないある夏の日
とある山のふもとにある神社で
老人に出会った
あいさつをしてやいなや
フレンドリーに会話が始まった
その方は16歳で親と別れ
親戚のうちに引き取られたそうだ
お金にも余裕がなく学校も行けなかったから
ひとりがむしゃらに働いたんだとか
時は経ち
やがて大人の仲間入りができた20歳の頃
九州に出稼ぎに出たという
そこで運命的な出会いに恵まれ
結婚、そして二人の子を授かった
夫婦共働きではあったけれど
心のある大人に育てくれたという
それでも夫婦生活、山あり谷ありで
数えればすでに52年という歳月が過ぎて
今もなお一緒にいてくれることに
感謝してるんだといっていた
(老人の目には、寂しさと優しさが入り混じっていたように僕の目には映っていた)
嬉しそうに笑みを浮かべて話す姿に
僕も思わず笑顔になっていた
別れ際にこんなメッセージをもらった
“天狗になっちゃいけないよ、
どんなにいろんなことを知ったり、
得ても天狗になっちゃいけないよ。
謙虚にいたら食べていけるから。
そんで、どんなことがあっても
人を大切にすることを忘れないでいてね”
笑顔で手を振りあって
また会いましょうとバイバイした
人気のない忘れ去られたようなこの神社で
たまたま出会った人と心に残るメッセージ
人は出会いと別れを繰り返しながら
経験の知恵バトンのようなものを
受け渡し合っている気がした
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