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女子小説のお部屋

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女子による女子のための小説 会社帰りに、休日前夜に、シュワシュワを飲むように
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#仕事

年下の男の子 4

 次の日、課長が珍しくみんなを集めた。
「えー。すまんと先に謝るが、今週末内部監査があるのを忘れていた」

ざわわと動揺が広がる。内部監査があとたったの三日後?
「だからな、謝ると言ったじゃないか。とにかく本社が来るからデータまとめといて。えーと、武田がやって」

武田くんがやる、イコール私がやるということだ。
「内部監査…」
武田くんは長い指を整ったくちびるにのせ考え込んでいる。

「ぼーっとし

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年下の男の子 3

金曜日になって、今度は課での歓迎会が開かれた。真ん中に座る武田くんの横には、和葉が陣取っている。

主役と離れて座る私の周りでは、新入社員とは関係ない、各々の家庭や夫の話が繰り広げられている。みんな既婚者の方々だ。

「美咲さん、新入社員、どうなんですか」

隣のパート社員さんが聞いてきた。私が話に入れないのを察してくれたのかもしれない。

「そうですねぇ。若すぎて心配でしたけど、思った以上に気が

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年下の男の子 2

ちらり、と横のデスクを盗み見る。

入社したばかりの、23歳武田くんは、私が渡したマニュアルを元に、せっせと資料を作成している。細長くきれいな指でパソコンを叩く。

ふーん。アリユウも手がきれいなんだよねぇ。あの指先まですっときれいなところが、手袋をしていてもなお、彼の演技をよりいっそう引き立てていて…

いやいや。有本選手と一緒にするなんて、冗談じゃない。私は現実では年下は好きになったことはない

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年下の男の子 1

「優勝は有本選手!!ファイナル決勝へと駒を進めました!」

あぁ寝不足。だけど幸せ。

そんな、のろけのような感情に浸りながら、変わり映えもなく今日も出社する。

彼氏の家にお泊りしたから、なんてどうでもいい可愛らしい理由ではない。

私の寝不足は、もっともっと美しさであふれた高尚なものなの。

*****

「美咲先輩!昨日…観ました~?」

朝からテンション高く話かけてきたのは、三つ下の和葉。

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