たった1年で回復?!変わる時代やターゲットを掴む日高屋の戦略とは
こんにちは。ベトナム在住ライターの寺内です。
以前「餃子の王将」と「大阪王将」の分析を行いましたが、その際様々な中華チェーンやラーメンチェーンを調べていて、ニュースになっていたのが「日高屋」。駅前などでよく見るイメージがありますね。
「日高屋」は今期、売上の過去最高を記録し、2023年3~8月期単体の営業損益が前年同期の1億9500万円の赤字から24億200万円の黒字となり大幅回復したそうです。
人気上昇中の「日高屋」。黒字回復にどんな販促施策を行なったのでしょうか?
今回「Knowns Biz」の億単位の消費者データを活用し、「日高屋」について分析してみたいと思います!
熱烈中華食堂日高屋
ラーメンチェーンのポジショニング分析によると"絆・親近感”"利便・合理性”で「日高屋」は上位に位置しています。
認知率は約5割ですが、満足率は72.9%と高めです。
「熱烈中華食堂日高屋(以下、日高屋)」は株式会社ハイディ日高の主力業態です。1973年に創業した中華料理店「未来軒」で培ってきたノウハウを結集し、2002年6月に展開を始めたのが「日高屋」。
ハイディ日高は今年で創業50周年を迎えました。
「日高屋」の看板メニューはラーメンで、とんこつと鶏がらをベースにした秘伝のスープや麺、チャーシューにこだわり、そのおいしさを390円という低価格で提供しています。
また、中華鍋で調理される定食類やニラレバ炒めなどの他のメニューも豊富で、仕事帰りにも気軽に立ち寄れるお店を目指し、アルコールやおつまみも低価格で揃えています。
「日高屋」は自社ブランドの確立のため、下記ビジネスモデルを実現しています。
また創業秘話として、創業者の神田正さんは埼京線の各駅でビジネスマンを観察し、「家庭から持参する弁当ではなく、職場や移動先で昼食や晩飯を手軽に食べる時代が来る」と確信。
そして現在の「日高屋」が誕生したそうです。
利用者層分析
日高屋利用者のデモグラ構成比をみると20代後半~50代前半が多く、またラーメンチェーン全体(グレーのグラフ)と比較すると30代後半~50代前半と60代の割合が高く出ています。
男女比では男性が多く、婚姻有無では既婚者がやや多いです。
年代別比較を見てみると、認知率は20代後半から徐々に高く出ていますが、好感率は20代前半が最も高く出ています。
購入(利用)経験は40代と60代前半が高いです。
「日高屋」の7Journeyを見てみると、未認知率が50%を超えていて意外に感じました。しかし離反が2.5%と低く、ブランド選好率は高めなので、一定のファンがついているお店であることがわかります。
また利用者居住地は他のラーメンチェーン(グレーのグラフ)と比べると関東のみで200%を超えています。
その理由は「日高屋」を含む「ハイディ日高」は関東県内1都6県、特定の地域に集中して店舗を出店しているからです。
セントラルキッチンがある関東の駅前・繁華街を軸に、ロードサイドへも戦略的に出店しています。
どんな人が利用している?
サイコグラフィックを見てみると、個人価値観は便利さや華やかさを好む"都会派”に次ぎ、"倹約家”"健康志向”な方が多いです。
都会派・倹約家が上位にきているのは、前述した日高屋のビジネスモデル「駅前繁華街一等地立地戦略」「低価格へのこだわり」と関連がありそうです。
また社会価値観は"ゴーイングマイウェイ”"マインドフリー”と正反対のクラスターが並んでいますが、さまざまな職業や環境の方に購入されているからかもしれません。
"ワーカホリック”も多く出ているので、ビジネスマンが多いようです。
そして消費価値観は"良いもの良い価格消費""お得感重視消費”が高いことから、気に入ったものやモノの良さやよりお得に購入したい傾向がありそうです。
日高屋黒字の理由は?
価格の上げ方
近年、原材料費などのコスト増大で様々な飲食店が値上げを行なっており、日高屋も半年で約10%増の値上げを行なっています。
しかし一律に値上げを行うのではなく、20年間販売している「中華そば(税込み390円)」は値段を据え置き、それ以外のメニューを値上げしたそうです。
値上げを行なってもビジネスモデルの"低価格の実現”へのこだわりから、セット割で利用者の負担を最小限に。また一部外国産を使用していた野菜を国産化し、看板商品のブラッシュアップを図ることで単なる値上げではなく価値を高めることに成功しています。
現在日高屋利用者がもつイメージからも、"コスパ・経済性”"ベーシック・定番的”が上位にきており、顧客のイメージを裏切らない値上げに成功していることがわかります。
店舗の出退店
多くの飲食店に打撃を与えた新型コロナウィルスの蔓延下では、キャッシュレス決済やテイクアウト専用のメニューの増加、自動販売機向けの冷凍食品を店頭で販売などの対応もいち早く実施しました。
また利益確保が困難な業績不振店の退店を進め、従来のオフィス立地や繁華街立地から、乗降客数3万人程度と比較的乗降客数の少ない駅前へ着目し、消費者の自宅に近く、低い賃料と競合の少ないエリアへと新規出店を進めています。
これまでの利用者は男性やビジネスマンが多いと出ていましたが、出店するエリアが変わってくることにより今後女性やファミリー層も増えていきそうですね。
ターゲット層の拡大
「日高屋」は立地だけではなく、メニューでもターゲット層の拡大が伺えます。公式サイトではそれぞれのタイプに向けておすすめメニューの紹介なども行なっています。
実際にKnowns Bizにある消費者の声の注目の意見では、女性の意見が上位にきていました。お子様メニューやちょい飲みも好評な意見が多く、今後はさらに様々な人やシーンに利用される機会が増えていきそうです。
まとめ
日高屋利用者の特徴
・30代後半~50代前半と60代前半、男性が多い
・都会派、倹約家、健康志向、ビジネスマンが多い
・良いもの良い価格消費、お得感重視消費の傾向
原材料費の高騰やコロナ禍などにも関わらず、時代やニーズに合わせて柔軟に適応し黒字になった「日高屋」。
今後の展開にも注目していきたいですね!
野菜を摂りたい人が多い!?
ちなみに、日高屋の利用者は他にどこを利用しているのか気になったのでそちらも調べてみました。
ブランドスイッチ分析を見てみると、現在「日高屋」利用者が他に検討するラーメンチェーンとして選ぶのが「リンガーハット」「天下一品」でした。
「天下一品」はラーメンチェーンとして何となく納得がいきますが、「リンガーハット」はちゃんぽんのイメージが強いので個人的には意外でした。
理由は何だろう?と調べてみたところ、どうやら"野菜”が関係しているようです!
サイコグラフィックの個人価値観を比較すると、どちらも"健康志向”の方が多いことがわかります。また"時間にシビア”も共通して多く出ています。
忙しいけれど健康も気をつけたい方が多いのでしょうか。
さらに「日高屋」と「リンガーハット」の利用者の声を見てみると、どちらでも多く出てきていたメニューが"野菜たっぷり”に関するものでした。
実際に両店舗のメニューを見てみると、日高屋の「野菜たっぷりタンメ
ン」は野菜が350g入っており、1日分の野菜が摂れるメニューです。
リンガーハットの野菜たっぷりちゃんぽんは通常の長崎ちゃんぽんの2倍、480gの野菜が入っているそうです。
どちらも共通しているのが国産野菜がたっぷり、麺の量も選べるところです。"健康志向”且つ"時間にシビア”な方でも手軽に野菜が摂れることが選ばれる一因となっているようです。
この結果を日高屋サイドも調査済みだったのでしょうか!?ハイディ日高創業50周年を記念メニューの第一弾では、何と「日高ちゃんぽん」が発売されていました!
野菜を摂りたい&ちゃんぽん好きに向けたメニューが分析にマッチしていてびっくりしました。
創業50周年記念メニュー(第二弾)
またハイディ日高創業50周年第二弾では2023年10月13日より「温玉旨辛ラーメン」を期間限定で復刻・販売開始しました。
「温玉旨辛ラーメン」は豚挽肉の旨味とピリっと辛いあんかけの醤油ベースのラーメンで、2016年2月のグランドメニュー改定をもって販売を終了しましたが、販売終了以降復刻の要望が多かったそう。
日高屋利用者のサイコグラフィックの消費価値観では"ノスタルジー消費”も上位にきていましたが、今回の復刻メニューの発売は顧客の性質に合った取り組みに感じました。
筆者のひとこと
以前東京に住んでいた頃、駅前に「日高屋」があったので仕事帰りによく利用していました。特に日高屋の味噌ラーメンが好きで食べていたのですが、代謝がとてもよくなるようで私だけサウナにいるの?ってくらい毎回大汗をかいて食べていました。
そのため気が置けない人とか一人でしか行かなかったのですが、同じ症状が出る人いますか…?笑
つい同じメニューばかり頼んでしまうタチなのですが、今度機会があれば利用者に人気だった「野菜たっぷりタンメン」も食べてみたいです。
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