リューベン・オストルンド『インボランタリー』スウェーデン、仲間がいれば怖くない?
祝パルムドール!リューベン・オストルンド長編二作目。娘の誕生パーティで庭にセットした花火が不発となり、それを覗き込んだ瞬間に父親の顔に直撃するという、いかにもオストルンドな厭らしい長回しが冒頭にあってブチ上がる。物語はそのパーティを含めた5つの物語を交互に語っていく。本作品の最も象徴的な場面は、ある授業風景だろう。一人の生徒が教師の出す二本の棒が描かれた画像を見て、そのどちらが長いかを答えるだけなのだが、残りの生徒は明らかに短い方を"長い"と答えるように決めておく。すると、生徒は他の生徒の意見に屈して、短い方を長いとして選ぶのだ。他の場面でもその同調圧力が強調されている。この授業を行った女性教師は別の教師が生徒を殴るところを見ていたが、他の教師はことを荒立てないよう黙り、女性教師にも沈黙を強いる。運転中に若い女性ガイドとおしゃべりに興じるバス運転手は、バスのトイレのカーテンレールが壊れているのを見て、犯人が名乗り出るまで運転を中止する。撮り方は前作『The Guitar Mongoloid』に似てワンシーンワンショットだが、人間の顔が切れるような画角のショットやこちらを向いてないショットなど、個人が判別できないショットが多く、同調圧力の匿名性を上手く映像として表現している。確かに居心地の悪い瞬間は訪れるんだが、それらを分断して並べたことで尾を引かないようになってしまい、全体的な印象も薄くなってしまっているのが難点。人を特定しなさすぎて、どの物語なのか判別しにくかったのもあまり良くなかったのかと。
・作品データ
原題:De ofrivilliga / Involuntary
上映時間:98分
監督:Ruben Östlund
製作:2008年(スウェーデン)
・評価:60点
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