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ジャムシェド・ウスモノフ&ミン・ビョンフン『Flight of the Bee』タジキスタン、ミツバチのみちびき

ジャムシェド・ウスモノフ&ミン・ビョンフン初長編作品。タジキスタン映画鑑賞会企画。ソ連崩壊後、タジキスタン映画界も他の東欧~カフカス~中央アジア諸国と同じく苦境に立たされたが、それらの国と異なるのは、イランの支援があったことだろう(タジク人がイラン人と同じペルシャ系というのも関連しているのかもしれない)。モフセン・マフマルバフも『サイレンス』など数本をタジキスタンで製作している。さて、本作品の主人公はある小さな村の学校長である。謙虚で厳格な人物で、村人からも慕われているが、本来の職業は物書きなので収入は少なく、妻からは呆れられている。そんな彼は今、ブルジョワで尊大な隣人がわざわざ校長宅の真横にボットン式トイレを建て、更にはトイレ前後で校長宅を覗き込むという信じがたい行為をしていることに頭を悩ませている。村長に進言しても全く取り合ってくれない、隣人も足蹴にしてくる。ならばこっちも隣人の家の横にトイレを作っちまえ!という中々治安の悪い映画である。ソ連崩壊から7年が経過したタジキスタンの寒村で、縁故主義や金持ち崇拝といった旧時代と新時代の問題が絡み合って膨れ上がる様を滑稽に描いている。そういった点で、近隣国ウズベキスタンの『UFO少年アブドラジャン』にも近いエッセンスを感じる。題名の"ミツバチの飛行"とは、アレクサンダー大王時代に、本来なら年齢を理由に殺されていたはずの宰相の父親が、知恵袋的知識で瀕死の部隊を救った逸話から来ている。本作品に感じるそこはかとない嫌悪感の正体はそれかもしれない。

・作品データ

原題:Parvaz-e Zanbur
上映時間:90分
監督:Min Byung-hun, Jamshed Usmonov
製作:1998年(タジキスタン, 韓国)

・評価:50点

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