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Mikhail Doronin『The Second Wife』ウズベキスタン、豪商の第二夫人になったら…

大傑作。ウズベキスタン最古の映画スタジオであるウズベクフィルム(後にタシュケントフィルムスタジオに改名)で製作された最初期の作品。ウズベキスタンは中央アジアの映画発祥の地であり、中央アジア初の長編映画が製作されたのもウズベキスタンだった。加えて、本作品はウズベク人の女性が女優として参加した初めての作品らしい。というのは当時のウズベク人の女性は"チャチュワン"という開閉可能な網状の布で顔を隠していたため、女性の役は他国から女優を招いて撮影していたというのだ(ちなみに、主演はリトアニア出身の女優レイチェル・メッセレル、なんとマイヤ・プリセツカヤの母親である)。本作品の主人公はアドラト。草原を駆け回る自由奔放な少女だ。しかし、この時代に女性の発言権はないに等しい。幼馴染クムリとの仲も引き裂かれ、子供のいない豪商タジバイの第二夫人として嫁ぐことになる。とうことで、今回も結婚式が登場。ハモ・ベクナザリアンによるアルメニア初の長編映画『Namus』でも結婚式が登場していたが、やはりどの国でも最初期の映画となれば、結婚式や葬式といった儀式や街での祭の情景など、民族誌学的な側面が強く押し出されるのだろう。しかも『Namus』も本作品も"無理矢理好きでもない男に嫁がされた無垢な若い女性が無念にも亡くなる"という物語であり、もしかするとソ連に翻弄されるアルメニア人或いはウズベク人の現状を表しているのかなどと邪推してしまう。特に本作品は地方の農村での生活から都会の金持ちの生活、祭や儀式から近所のおばちゃんたちの集まり、近代的な職場から伝統的な職場まで様々な場所の様々な人々が映像に収められている。それだけに留まらず、ドイツ表現主義の極北みたいな映画だったロベルト・ヴィーネ『芸術と手術』のような艶やかな陰影が効果的に用いられており、感服。これはマジで凄すぎますわ。

・作品データ

原題:Вторая жена
上映時間:62分
監督:Mikhail Doronin
製作:1927年(ウズベキスタン)

・評価:90点

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