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Zvonimir Berković『Rondo』クロアチア、恋模様はチェスゲームの如く

傑作。ズヴォニミル・ベルコヴィッチ(Zvonimir Berković)長編一作目。クロアチア映画史において、"作家"の時代だった60年代に登場した新世代のうち、ベルコヴィッチによる本作品は様々な映画祭で激賞され、欧州各国で上映された数少ないクロアチア映画となった。独身貴族のムラデンは毎週日曜日午後、友人の彫刻家フェジャの家にチェスをしに行くことになった。雨の日も雪の日も、14時になったら玄関のドアを叩き、午後いっぱいチェスをして、フェジャの妻ネダの作った夕飯を一緒に食べて帰る。本作品はロンドの形式を映画に採用しており、毎週日曜の午後だけを延々と繰り返すことで、次第に変化していく三角関係を描いている。そこにはチェスの盤面も示唆的に絡まり合う。クィーン(つまりはネダ)を守る戦法を取るフェジャに対して、クィーンを最前線に投入するようアドバイスをするネダ、そしてチェックメイトを躱しつつ盤面を優位に進めるムラデン。"愚か者は初手すら打てない"という格言。チェスの白黒は画面の陰影とも呼応し、それらが"両陣営"となるよう緻密に構築されている。ネダの明るいブロンドに、明るいドレスの日は白陣営、黒いドレスの日は黒陣営。停電でネダの顔にだけ光が当たったり、フェジャが真っ白な仮面を作っていたり。暗闇の中で駒を動かし、すべてを知りながら道化を演じるフェジャの不気味さも良い。

・作品データ

原題:Rondo
上映時間:95分
監督:Zvonimir Berković
製作:1966年(クロアチア)

・評価:80点

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