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Gastón Solnicki『Kékszakállú』アルゼンチン、少女たちの将来への不安

ガストン・ソルニツキ(Gastón Solnicki)長編劇映画一作目。バルトーク・ベーラ唯一のオペラ作品『青ひげ公の城』に緩く基づいている他、それをフリッツ・ラングがノワールに翻案した『扉の陰の秘密』にも影響を受けているらしい。バルトーク版ではペロー版やメーテルリンク版と異なり、主人公が扉を開けるタイミングで毎回青髭本人が付き添っており、怪物としてではなく一人の人間として青髭を描いている。あまり関連性は見いだせないが、ソルニツキ的に言わせてみれば原作と一致させることには興味がなく、映画敵素材を見出すことの方を優先したらしい。確かに最後まで観ても青髭要素はあまり感じられないし、先に知っていたら寧ろノイズになったかもしれない。とある中産階級出身の少女は、一家で休暇を過ごした後、ブエノスアイレスに帰郷する。しかし、主人公と思しきこの少女はフェードアウトし、彼女の姉の友人が入れ替わるように物語を先導していく。そして、休暇時と同様に、少女/少女の姉/その友人の日常風景が紡がれていく。友人の工場でのバイト(父親が工場長のようだ)、専攻決定の不安、自動車事故、知り合いの結婚等々、友人は将来への不安に囲まれて、少しずつ摩耗していく。ありのままの自分でいた時代とそれを許さない社会との戦いの映画であるとするならば、それはバルトーク版『青ひげ公のの城』における主人公たちの"成長"と掛けられているのかもしれないと思うなど。視点人物となる三人は、多くの場合で画面の中央に顔が置かれるのだが、三人とも虚空を見つめていて何にも焦点が合ってない感じがする。この映画の不穏さはここから来ているのだろう。

・作品データ

原題:Kékszakállú / Bluebeard
上映時間:72分
監督:Gastón Solnicki
製作:2016年(アルゼンチン)

・評価:80点

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