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エッセイ集

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小説以外で書いた覚書などを掲載します。
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2014年9月の記事一覧

大学時代の思い出(11)

大学時代の思い出(11)

 この時の東北一周旅行、全て覚えているわけではないので、覚えていることだけ書いてみる。

 国道13号線をまっすぐ北上していく。山形、尾花沢、新庄を通り、県境を越えて秋田県に入る。僕らの年代にとって、秋田といえば桜田淳子だった。つまり秋田美人。秋田に入れば美人がいっぱい。そう思っていた二人の目つきが、秋田県に入った当たりから血走っている。

 湯沢の町に入ってから、車を止め、周りを見わたすと確かに

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大学時代の思い出(10)

大学時代の思い出(10)

 大学2年のとき、同じ間借りに住む化学工学部の同級生と彼の部屋で酒を飲んでいた。この同級生Tは、山形市出身。同じく山形出身で同じ繊維高分子工学科の同級生Sも部屋にいたと思う。いつもは、1階の入口に住んでいる1級上の先輩S先輩の部屋が飲み部屋になるのだが、なぜかその日は、Tの部屋が飲み部屋だった。

 酒を飲んでいると、だんだん気が大きくなって、Tと学生時代でしかできないことをやろうということになっ

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大学時代の思い出(9)

大学時代の思い出(9)

 米沢というところは、福島から山形側に国道13号線で一山越えたところにある盆地だ。福島と山形のどちらが近いかといえばおそらく福島の方が近い。

 傘を手放せない気候で、晴れていても、一日の内一度は必ずどこかの時間帯で通り雨が降る。昼は盆地のため、ものすごく暑くなるが、夜になると掛け布団がないと寝られないほど気温が下がる。

 もっとも、12月に入るとどんよりとした曇り空の日が多くなり、毎日のように

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大学時代の思い出(8)

大学時代の思い出(8)

 みなさんは、高橋留美子さんの「めぞん一刻」という漫画をご存じだろうか。ちょうど大学時代に漫画雑誌に連載されていた古いアパートを舞台としたラブコメ漫画だ。

 管理人の音無響子さんはいなかったけれど、イメージは漫画とほとんど同じボロボロ(大家さん申し訳ない)アパートに2年から大学を卒業するまで住むことになった。アパートと違うのは、台所と便所、そして風呂が共同であることで、当時、間借りといわれていた

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大学時代の思い出(7)

大学時代の思い出(7)

  今回は、懲りない面々。寮に入寮後、同級で知り合った面々を紹介します。それまで、東京の郊外しか知らなかった僕にとって、日本国中には変わった人たちがたくさんいることを教えてくれた方々です。

 まず、空手が得意な一升瓶の似合う医学部一年生。医学部といえば、みんな勉強ができる人たちの集まりなのだが、どう見ても医学部生に見えなかったのが彼だった。頭は角刈り、空手着を着ているわけではないのに、着ているよ

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大学時代の思い出(6)

大学時代の思い出(6)

 今回は、寮での自炊事情について思い出してみたい。アルミ製の片手鍋を買ったことは以前書いたが、この片手鍋が主役になる。何しろ炒め物以外は、全てこの片手鍋で料理していたのだ。

 家にいた頃は、自分で作るのは夜食で食べるインスタントラーメンぐらい。中学生の頃、山に何度か行っていたので、ご飯をコッフェルで炊くけることは覚えていた。

 そこで、片手鍋でご飯が炊けないか考えてみる。姿形こそ違うがアルミの

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大学時代の思い出(5)

大学時代の思い出(5)

 夏休みが終わり、山形に帰って待っていたのは部屋替えだった。3階の角部屋から2階の真ん中の部屋への引っ越し。引っ越しといっても荷物が少なかったので、引っ越し自体は、小一時間もかからずに終了した。今度の部屋の相棒は、同じ工学部の同級生だった。仙台出身の彼は、おとなしい性格ですぐに友達になることができた。

 引っ越しが済むと、すぐにクロが部屋に遊びに来た。クロ自体は前の部屋が居場所だが、移った部屋に

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大学時代の思い出(4)

大学時代の思い出(4)

 一年の夏休み、実家に帰省した。帰省といっても東京の郊外にある実家に戻るので、帰省というよりも都心に出るという雰囲気だった。

 少しでも安上がりにするため、深夜バスで寮で知り合った同級の医学部生と東京に向かった。乗った深夜バスは、座席は狭く、冷房もあまり効いていなかったので、朝まで寝ることはできなかった。早朝、新宿について、バスを降りたとき最初にやったのは、背伸びとあくびだった。

 実家でじっ

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大学時代の思い出(3)

大学時代の思い出(3)

 寮のめしが、あまりにひどかったので、自炊をはじめることに。食事代を抜くと寮費は1万円。親からの仕送りが6万円だったので、残りの5万円で生活を維持していくことになった。

 まず、自炊のためにアルミ製の片手鍋を買った。これで、最低限インスタントラーメンぐらいは食べられる。あとは食器類、箸やスプーンなどを購入。冷蔵庫とフライパンは寮共有のものをしばらく使わせてもらうことにした。

 朝と、昼は、大学

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大学時代の思い出(2)

大学時代の思い出(2)

 こうしてクロとの生活が始まった。同居人の先輩は、実験等が忙しいのか、寝に帰る以外ほとんど寮にいない。結果的にクロの面倒は、まだ授業しか受けない自分が担当することになる。

 クロは、おとなしい犬で、滅多なことでは吠えない。また、一緒に暮らしはじめると非常に頭が良く、人なつこいことがわかった。誰からも好かれるタイプの犬だった。

 大学は、寮から国道13号線を越え、市の中心地へ向かって40分ほど歩

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大学時代の思い出(1)

大学時代の思い出(1)

 初めての一人暮らしを始めたのは、一浪して大学に通い始めた19の春だった。それまで、一度も訪れたことがなかった山形。まったく未知の世界でのスタートだった。

 高校2年の時の担任が変わった先生で進路相談のときに、希望は国立大学だというと、「おれは、山が趣味だ。おれが山に行くときにベースキャンプにできる大学を選べ」と言われた。実家が山に関する仕事をしていることを知っていたから言ったのであろうが、真剣

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北千住の立ち食いそば

 いつものように千住手前の鉄橋を列車が渡るころ読んでいた本を閉じ、降りる準備を始める。

 すると、おもむろにクリーム色のコートを着た歳は五十後半ぐらいのおじさんが、ドアの前におもむろに現れた。

 北千住駅で毎朝見られる日比谷線三階ホームへ駆け上っていく、いつも見る集団の一人かと思ったが、今日はいつも載っている車輌ではないことを思い出した。

 今日は、北千住一階ホームにある立ち食いそばで朝飯を

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なぜほとんどのものに色がついているのか?(3)

なぜほとんどのものに色がついているのか?(3)

 金が貨幣以上に重要視される理由はご存じですよね。長期間安定してその質量が変わらないため、金のそのものを長い間保存できるからです。こういった使われ方をしているものはごくわずかです。だから希少価値が生まれる。ものが単一構造をとり、安定してそのままを維持するのは非常に難しいことなのです。

 どの分子も最終的には安定した状態で落ち着き、他からエネルギーが供給されなければ形を変えないようになります。それ

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なぜほとんどのものに色がついているのか?(2)

なぜほとんどのものに色がついているのか?(2)

 前回、光(電磁波)はエネルギーであり、波長が短い物ほど、エネルギーが高いことと、電子は、飛び飛びの場所しか入ることができず、かつ入れる数に制限があることを述べました。

 今回は、核心に入っていこうと思います。

 まず、色が着いているものを二つに分けます。目的をもって色をつけたものと結果的に色がついているものに分類します。前者は、人間が意図的に色をつけたものです。例えば、身の回りにある衣服や文

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