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今夜は何の話かな・・・

村上春樹さんはある日ふと、タイトルが降りてくるそうだ。『騎士団長殺し』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』・・・それから一年かかるか二年かかるかわからないけれど、タイトルと向き合って、一日必ず十枚書いていく。書いていくうちに、複数のモチーフが絡み合っていく。村上さんにとって「書く」行為はご自身の地下二階へと降りていくことにつながっている。

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この本の第二章タイトルがそのものずばり、「地下二階で起きていること」。二階建ての家をイメージしてください。一階はみんなが団らんしたりするわかりやすい場所。社会とつながってる。二階は自分だけのプライベートな場所。自分の本とかCDとかね、置いてある。階段降りて地下一階は寝言とか酔っ払ったときつい思わず出てしまうホンネとか。人に話せる自分が感じているトラウマとか。多くの文学作品は一階と地下一階を行ったり来たりしてる。理解されやすいし、共有もされる。

ところが地下二階にまで入ると、そこは人類の集合的無意識とつながってるので、「自分んち」だけの話ではなくなる。奇妙で、理解不能で、よくわからない世界。

村上さんの作品でいうと、『ねじまき鳥クロニクル』、路地が重要な役割を果たす。狭い行き止まりの場所が深いところでどこか他の世界とつながっている。井戸も出てくる。『騎士団長殺し』だと山の中に不思議な「穴」があって、主人公の住む小さな家があって、谷を挟んで向かいに免色さんの屋敷がある。谷は間にあれど、地下二階でつながってる感がある・・・。

ぼくの専門はマーケティングなので、「広まる」科学に興味あって、ずっと研究しているんだけど、村上さんがこの本でおっしゃっている「洞窟の語り部」が「そうか、そうだった!」と響いた。

洞窟といえば、cave。2013年にホノルル行った時、VINTAGE CAVEという隠れサロンみたいなクラブで講演した。ここは人で賑わうアラモアナショッピングセンター駐車場にありながら、入口がわかりにくい。まさに「知ってる人だけが入れる」。一歩入ると薄暗く、そしてこの薄暗さが人をまとめる空気を出している。

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紗栄子さんが時々ここを商談に使っているとその時聞いたけど、たしかに人の目を気にしなくていい。

洞窟の語り部に話を戻すと、ほら、暖炉とか、キャンプファイアーとか、炎の前に座ると、なんか、Hな気分がしたりしない? ニューヨークで女の子をくどくならここ、と紹介されたのが、暖炉つきのお店だった。ではなぜHな気分になるかというと、かつてぼくたちが古代に生きていた頃、夜はみんなで洞窟の中にこもり、話上手な人が語る物語に耳を傾けて過ごした地下二階の記憶。それがなぜか、人間の脳の最下部に位置する爬虫類脳(欲望などを司る)を刺激するんだろうね。

シンプルで、わかりやすい話は、一階も地下一階も突き抜け、ストレートに地下二階へ届きやすい。ロジックもなにもないヘイトスピーチなんかがそれで、たとえば、トランプさんも天性のうまさを持っている。

America First ,  America Firstと繰り返すのはストレートに地下二階へ届く。

今日は特に結論というものはなくて、いま準備中の「地下二階マーケティング」のためのメモみたいになってしまいました。ちゃんちゃん!

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