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AXでいこう!

DX(デジタル・トランスフォーメーション)、騒がしい。

DXの本質は、デジタルを使うことによって夢にも思わなかったJOY+WOW+LOVE and FUNな体験を生み出すことなのだが、その多くはひと昔前ビジネスの絶対基準「効率(efficiency)を高める」にとどまっている。
「効率化」というのは、言い換えれば「バージョン・ダウン」だ。

ぼくはあるホテルに15年以上泊り続けている。いわゆる高級ホテルである。
このところ、バージョン・ダウンが激しい。
たとえば、客室スリッパが安っぽいものになってる。百均で買ってるのかと思うくらい。セブンプレミアム洗えて清潔スリッパ税込869円のほうがよほど立派。

部屋のお掃除もあちこち気になる。部屋こそ、ゲストの第一印象を創造するCX(顧客体験)の出発なのだが、「申し訳ないけど、これまで2人でやってもらってたのをコストの関係で1人でやってもらうことになりました。かつ、一部屋15分目安でしたが、効率考えると10分で済ませてください。ラリーやります。優秀な人にはホテルのクーポン差し上げます」みたいなしょーもない企画があるんじゃないか。

ほか、ほか、バージョン・ダウンはあちこちにある。

部屋のインターネットつながらないし、つながっても90年代の電話回線かと思うくらいの遅さ。

今日泊まって、今度いつ来るかわからないゲストならともかく、ぼくは毎月、必ず来る。館内レストランで食事する。毎年1月には年末までの予約を済ませる。これほどLTV(ライフタイムバリュー、生涯価値)の高い上得意客はいないはずなのだが、部屋の割当てにせよ、なんか、「お得意様だから、許してくれるだろう」な空気受けるぜ。

これに限らず、世の中全体がバージョン・ダウンしている。

スターバックス・アメリカは、「スタバ」ブランドのアイデンティティであるところの、「ダイレクトなつながり」(バリスタと来店客、店舗スタッフと経営陣)をスマホアプリ&スターバックスカード(プリペイド)というDXによる効率化をしたがゆえに、壊してしまった。ビジネスは「関係」なのに、その「関係」断ちをしたわけで、坂道転がるのは火を見るより、街でスタバ看板を探すより明らかである。

マンハッタン

スタバ店舗がピックアップ窓口にしかならなくなったわけで、そりゃ、ブランドがブランドであるところのアイデンティティは、壊れるよ。

近所のスーパーマーケット行ったらロボットが何やらしゃべりながらうろつき回ってる。じゃまである(笑)

人件費削減になって手元の電卓叩いているうちは嬉しいかもしれないが、中長期的に見たら、坂道だ。

某大手住宅メーカーが、住宅展示場を3割削減し、インターネット窓口を充実させるとの報道があった。住宅展示場を維持するのに年間3,000万から5,000万かかる。その削減になると。
しかしですね。住宅一戸売ったら3,000万。利益率わからないけど、仮に20%とすれば、3,000万×20%=600万。ということは5戸でトントン、6戸目からはまるまる儲けになる。これ、年間の話であり、年間でわずか5戸しか売れないということはあり得ない。かつ、ぼくは良く知っているのだが、この会社、営業マンが素晴らしい。彼らは売る力を持っている。

「**くんだから、任せたい」
「一生一度の買い物だからこそ、君にお願いするよ」

これが、なくなる。Webになったら、「どこでもいいけど、まー、安いとこにしようか」

DXは、ビジネス側にとっても、買う側にとっても、味気ないバージョン・ダウンしか生み出さないのだ。

だからこそ。

ぼくはAX(アナログ・トランスフォーメーション)を提案する。
徹底的に人が前に出て、徹底的に対話する。
ビジネスに大事な「関係」を結び、耕すのだ。

DXなんかやめて、AX、人を前に出そうよ。

昨日の夕方、雲見てた。連なりが、「連続性」(sequences)を示唆してくれた。やはりAXだよ、と。

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