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フィフィのクリスマスのあさのおはなし(前編)

文・noly
絵・清世



ほーほっほっほぅ!

ほうほう、ほろつくほうほう!

いつも森の奥でよびかける梟の声にまじって聞き覚えのない声がします。

ほーほっほっほぅ!

ほうほう、ほろつくほうほう!

フィフィは耳をすませて声の主をさぐっています。

夜更けすぎにふりはじめた雪はあたりの音を全てすいつくすようにして地面に舞い降りていました。舞い降りた雪は一面をうっすらと白く染めたかと思うとあれよあれよという間に降り積もっていきます。

あしたのあさは「たいへん」だ。

外の静けさに雪がどれほど降っているのかを感じながら、その静けさをやぶる声の主はいったい誰なんだろうとフィフィは考えていました。

ふくおさんによくにているけれど。

ふくおさんというのはフィフィの森に棲んでいる梟のことです。梟のふくおさんはたいそう物知りで、物知りだけれどちっともえばらない。いつも楽しそうな梟です。

そうだ。ふくおさんに聞いてみたらこの声の主もわかるかな。

ほーっほっほっほぅ!

また声がしました。

一人で森にいっちゃダメだっていわれてるから。そうだ入り口までにしよう。朝になってから、ちょこっとならきっと大丈夫。

お気に入りのマフラーをまいて、フィフィはふくおさんに会いに森へ出かけることにしました。


ぺたぺた、ペタペタ歩き出します。

夜のうちに雪がふったので、にんげんたちは雪かきで大忙し。フィフィがこっそりと出かけたことに気が付きません。

降ったばかりの雪はさらさら。
さらさらまっさら。

まっさら雪のキャンバスにフィフィのあしあとが続きます。

雪の森はどこもかしこもまっしろ。
しろしろまっしろ。

雪をかぶった針葉樹はその葉の緑の濃さで雪の美しさをたたえているかのようです。

淵だけ凍った池はまるで銀縁の鏡。あたり一面の銀世界をその水鏡に映し出します。

妖精たちは凍った結晶の姿をして、朝の光にキラキラと輝きながら踊っています。

それはそれは美しく、その風景はまるで物語の氷の国をみているかのようでした。

ほーっほっほっほぅ

フィフィがあまりの美しさにうっとりとみとれているとまた声がしました。声のする方へ首をかしげましたが姿は見えません。

なんてこった。ぷれぜんとがとどいてないのがいるらしい。なんてこった。

ふくおさんみたいな声がしました。けれど話すのはぼそぼそとひとりごとのようでしたからフィフィにはきこえません。

おや?あんなところにガチョウがいる。なんてこった。ちょうどいい。

木の上のてっぺんあたりからガチョウがいるという声がしたかと思うとフィフィの目の前にどさっと音がしてぷふあっと白い雪がまいあがりました。

舞い上がった雪であたりはまっしろ。
フィフィも真っ白。

雪がすっかり落ち着いて、そっとのぞいてみるとそれは布のようなものでできた袋みたいにみえました。

なんだ?なんだ?なんかふってきた!なんかふってきた!


後編



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