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第二回絵から小説 作品集

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2022.2.14.20:00~2022.3.15開催「第二回 絵から小説」作品集です。スゲー作品がいっぱい増えるといいな!
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#創作

第二回「絵から小説」作品集 目次と企画概要

当記事は、自主企画「第二回絵から小説」マガジンの目次です。 企画「第二回絵から小説」内容は以下の記事をご覧ください。 タイトル/作者の順です。※制作・創作が対等な立場であることに敬意を示すために、お名前に「さん・様」は付けない表記にしております。 気になるタイトル、気になる作者、選ぶも自由、読むも自由。どうぞご覧くださいませ。 A1.水色の果実と滴る涙/Haruka.•* 2.あおい/志麻/shima 3.はなちるさんどう/へいた 4.盲目の君は何を憂い/shin 5.

果てに焦がれた

桜色のトンネルを暗い方へ昏い方へ、薄布一枚纏っただけの少女が進んでいきます。 少しずつ、少しずつ灯りが少なくなっていく道の突き当たり、大きな岩壁の前で少女は立ち止まりました。 道を間違えたのかもしれないと振り返ってみますが、もう見えなくなってしまった入口からここまでは一本道だったはずです。 ここがおしまいなのかしらと首を傾げながらその岩壁に真っ白な指先で触れると、その壁は大きな音を立てながらゆっくりと開き始め、中から男がひとり出てきました。 男の背後に広がる闇は深すぎて、その

■詩:「螺旋」【第二回絵から小説】

冷たさが数えた。 「重体。」 そして無重力が生まれた。 すべての境界。 臓器が凍る。 裂け、踊り。 青ざめた象徴を見せて。 喜べ。 剥ぎ取られたら また去ってしまうから。 ■参加企画について こちらの企画に参加させていただきました。 noteのアカウント作成から間もなく、使い慣れてもいないもので、何かマナー違反等があれば教えてください。 ■詩について シャイなので隠喩だらけですが、すべての言葉に意味があります。 読み解かれるとシンプルなのがバレて恥ずかしい

【スクールラブ】転校生

 桜の季節には、出会いと別れがつきものだ。各地で開かれる卒業式、それが終わると入学式。小学校から中学校へ、中学校から高校へ、高校から大学へ、大学から会社へという節目節目の別れや出会いがある。同じ地区にすんでいれば、「また一緒になったね」と友達同士で進学した学校で挨拶し合うことも多くあるだろう。涙と笑いの季節は多くの人にいろんな経験を与えてくれる季節でもある。  そして、静かに行われる別れや出会いもある。卒業式や入学式の喧騒に入れなかった別れや出会いというのも学生時代に稀に起

鏡の中のわたし

ようやく眠りにつけそうというところでスマートフォンが鳴り響き、聞き飽きたその音色は私に朝を告げた。 朝が来てしまったならば、例え満足に眠れないままだったとしても私は今日も仕事に行かねばならない。 昨日も遅くまで働いたというのに、デスクに積み上げられた山が大して低くはならなかったことを思い出して溜息が溢れる。 ゆっくりと身体を起こし、そろりと床に脚を下ろした。 素足に触れる床は冷たく、毛布に温められていた足先から急速に温度を奪っていく。 冷え切る前に立ち上がったほうが

遠い、記憶の先で。

ふわり、カーテンが揺れる。生ぬるい空気と痒くなる目元に、春の訪れを感じられた。 午前の仕事を終えた私は、日差しが差し込むソファの上でゆっくり、入れたばかりのハーブティを傾ける。暖かな液体が喉を伝う感覚を、丁寧に味わった。 ふと、今住んでいるところの近くに、昔少しだけ住んでいたことを思い出す。 小さな庭がついた賃貸住宅。細かい砂利が敷き詰められた遊び場で、ざくざくと地面を掘り起こしていたら、ふと柵の向こうにも自分と同じぐらいの歳の男の子が遊んでいることに気がついた。 じー

そして彼女は彼方へと消えた【短編小説】

一ノ瀬あかりが手紙で示していた住所までの時間は、電車で約一時間掛かった。 頭の中で、あいつが暗い、山の奥へと消えていく姿が頭から離れない。 荷物は何も持たず、背負っているものをすべて脱ぎ捨てて。まるで舞うように。 そのイメージを否定するように首を横に振る。 電車に乗っているこの時間が、煩わしかった。 ようやく最寄り駅に着き、携帯のマップ案内で山のスタート地点まで来た。 「おいおい、ここを登るのか」 山の頂上までの道のりは、約2㎞。時間にして90分と書かれていた。

#第二回絵から小説 詩「棘(いばら)」

今回も詩で参加させていただきます♪ やっとかけました! ::::: 「棘」  いたい と 口にすることが難しくなったのは いつだったのかと 指先に触れた野ばらの棘を ぼんやりと見つめています 母の胎内から この身ひとつで 誰もが生まれてきます いいえ とっくに生まれてきて 待っているのです あのクロッカスも 土に抱かれながら春を 魚たちはさざめく水草に包まれて あなたは羊水に漂って もう大丈夫だよ といわれるのかもしれませんし いわれないのかもしれません その

【小説】 35.6716486 139.6952259 【#第二回絵から小説】

 今朝も留置施設を出て、同じバスに揺られている。六人で暮らす檻の中から出されると、話すこともなく他の男達と一緒に黙々とバスに乗り込む。搭乗中に誰かと喋ることもなく、入口付近に立つ兵隊に俺達は監視されながらいつもの作業場へ向かう。  窓の外の景色はどこもかしこも爆撃や砲撃で傷付いていて、壊れたアスファルトの振動が嫌でも尻から伝わって来る。作業場へ着く頃になると振動のせいですっかり尻が痒くなってしまう。  少し前までは街の隅から黒煙が昇っていたが、それすらも今はもう無くなってしま

眺める -詩-

木を見ると森が見えず 森を見ると木が見えぬ ただ眺めよ 言語の暴力を斥けよ 彼我の区別さえ溶解させよ 【企画概要】

踊る -詩-

踊る 今ここで踊る 行く道を知らず 来た道さえも知らぬ 楽観の旋回 狂躁の演舞 踊る意味を知らず 自分が誰かさえも知らぬ 逃避の跳躍 蒙昧の乱舞 ただ踊る 今ここで踊る 踊りましょう あなた 【企画概要】

集める -詩-

美しいものを集める 近くからも遠くからも集める 集められた美しいものは 大きな美しい塊に変わる 目を奪われるほど美しい塊に 美しい塊はやがて朽ちる 色はあせ 形はくずれ 美しくないものに変わる 目を背けたいほど美しくないものに ときを経て 美しくないものから 美しいものがまた生まれる 小さくて美しいもの 美しいものも 美しくないものも 大地は両の手で受け止める 【企画概要】

未来の約束【絵から小説】

雲の上できみと遊ぶの はらはらと舞う花吹雪 積もった花びらふわふわふわり 地上へと旅立つ前のしあわせな時間 ずっときみと遊んでいたいな はらはらと舞う花吹雪 きみとふたり花びら集めたね 花びらの山からやさしい香りふわふわふわり きみは言ったね 地上のどこかでまた逢えるって その時は小指を見てねって ふたりの左の小指にハートのほくろ 花びらみたいなハートのほくろ それがきみとわたしの目印 はらはらと舞う花吹雪 また逢おうねって約束したね 地上に旅立つ時が来たね 今もはら

第二回「絵から小説」:A 長編『タイダルリバー』

清世さんの企画『第二回絵から小説』に参加させていただきました。 ※注意※ この作品は過激な性的・暴力的描写を含みます。また、非常に不快かつ残虐な描写が存在します。そういった描写が苦手な方はご注意、またはご遠慮ください。 「わが心狂ひ得ぬこそ悲しけれ狂へと責むる鞭をながめて」 夢野久作 『猟奇歌』より 1 磯の香りにまじる、硫黄のような刺激を伴ったきつい香りが鼻をつく。強力な流れが川面のごみを次から次へと海の方へと押し出していく。濁りの入った汚い川面は、時々南から