自宅飲み - ホワイトレディ
「キミにぴったりのカクテルをご馳走してあげる」
「マスター、例のやつ」
「きれいなカクテルだろ、ホワイトレディっていうんだ、とっても似合ってるよ」
などとアラン・ドロンのような顔をしてバーで女性にカクテルを押し付けるような荒業はきっと死ぬまで成し遂げられないだろう。
むしろ僕はまあまあみっともない部屋着でこの美しいカクテルをひとりきりで飲んでいる。それでいいんだ。それがありのままの僕なんだ。
これは持論なのだけど、ショートカクテルはバーで飲むより自宅で飲む方が向いている。
シェイクしてキンキンに冷えたカクテルはヌルくなる前に飲みきってしまいたい。でもそんな飲み方したらひどく酔っ払うし、飲みきったらまたすぐ次を頼まないといけないし、でもせっかくバーに来たのだからゆっくりしたいし、なんて考えていると酔いも出費も酷くなる一方という恐ろしい状況になる。
常に財布の中身が哀愁を帯びている僕のような庶民にとって、ショートカクテルは自宅で飲むのが最も安全で理にかなっているのだ。
ホワイトレディのレシピは、ジン30ml、ホワイトキュラソー15ml、レモン15ml。要するに氷とこいつらをシェイカーにぶちこんで振り回していればできあがる。何の技術もいらない。極端な話、コタツに入ってテレビ見ながらでもできる。
そしてそんないい加減なスタイルで作ってもそこそこ美味しいカクテルができあがる。特に今回のホワイトレディは抜群の出来だった。今まで作った中では一番だ。ベースのジンに使ったフランスのジン、ジーヴァインフロレゾンが持つ華やかな特性が生かされていた。
ちなみにジンと言えばビーフィーター、ゴードン、タンカレー、ボンベイなどのドライジン、いわゆるロンドンジンが一般的だけど、フランスのジンはまるで世界が違う。(エギュベルとコレしか知らないけど。)圧倒的に飲みやすいしお上品だ。さすがフランスだ。さすがセルジュ・ゲンズブールだ。「ジュテームモワノンプリュ」と言わざるを得ない。
ちと酔っ払いすぎてしまったか。
次はこのジンでジンリッキー、もしくはギムレットを作ってみよう。
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