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知らなかった業界コンテストを「実況」で伝える異色すぎる番組がNHKでスタート

日本国内には、業界のスキルアップを目的に開催されているコンテストが数多く存在することをご存知だろうか。大小合わせて年間に100を超える大会が行われているものの、一般的にはほとんど知られていないのが現状である。『ニッポン知らなかった選手権 実況中!』とは、そんな“日本の技術力”を支えている業界コンテストを紹介する番組なのである。

テレビの世界では、高い技術を持った人をスタジオに呼んで大会を開いたり、ときにはタレントと対決させたりする企画は珍しくない。しかし、この番組が従来と大きく異なるのは、見せることを目的としない業界コンテストにカメラが潜入している点である。つまり、多くの人が「知らなかった」大会の様子を「ガチ」でそのまま取り上げている点だ。しかも、ナレーションではなく、実況で伝えるのがコンセプトである。

過去に取り上げた大会の一部を紹介すると、大手牛丼チェーン店の盛りつけ技術大会、3日間にわたって開催される左官の技能大会、トリマーたちによる犬のトリミング大会、雪のない季節に開催する除雪車の技術大会、警備会社内の警備訓練の大会、大手美容クリニックの脱毛技術の大会、心臓バイパス手術を想定した外科医たちの吻合技術大会など。いずれも「へぇー、知らなかった!」と唸ってしまう大会ばかりだ。

どれも普通なら実況されない競技ばかりというのは、僕にとっては大きなモチベーションになる。実況はアナウンスブースの中で大会の映像を見て行ない、勝手に選手のニックネームをつけたりして、競技を盛り上げる。収録は勢いを重視して、最初から最後まで止めずに通しで行うのもかなり珍しいと思う。

アナウンスブースの中の様子。

また、有名タレントがまったく出てこないのも大きな特徴である。バラエティ番組は、複数の人気タレントが、スタジオでVTRを見てコメントするのがセオリーだが、ここにはコンテストの出場者から解説者、実況するアナウンサー(僕のこと)に至るまで有名タレントはひとりもいない。あくまでも業界コンテストで披露される技術力、そしてそこに見える人間ドラマという、企画で勝負しているのである。

ネットに魅力的な動画が溢れ返るこの時代、テレビの強みと言えば、長い歴史で培った信頼感だと思う。非公開の業界コンテストに多いときで40台ものカメラを投入して撮影ができるのは、やはりテレビというメディアの力だ。つまり、この番組には「テレビでしかできないことは何か」を考え抜いたテレビマンの答えも詰まっているのだ。

また、企画したプロデューサーやディレクターはもちろん、大会を撮影して編集する人、画面に効果音や音楽を付けて整えてくれる人、CGやテロップを作ってくれる人、取材に向けてリサーチしてくれる人、映像を技術的にチェックをしてくれる人…わずか一回のオンエアに至るまで、多くの人たちと一緒に作り上げる喜びがあるのもテレビの良さだと思う。

放送は3か月、全9回限定とはいえ、NHK総合での放送には新たな視聴者からの反響や意見が寄せられるだろうし、それによって、これまでに気付けなかった発見があるだろう。なにより、コンテストの出場者たちはうれしいに違いない。というわけで、放送開始は7月12日よる11時(予定)。「知らなかった」技術と「実況」に徹底的こだわった『ニッポン知らなかった選手権 実況中!』は多くの人に見てもらいたいのである。

もしも、実況がうるさすぎたら、ごめんなさい。

作り手である番組のプロデューサーとディレクターのインタビューもあるので、興味ある人は以下のリンクをどうぞ。



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