しあわせの青い鳥 1/2
春の霞がたなびく夕映えの坂道を自転車でゆっくりとくだってゆく母の背後(うしろ)姿。・・・・・
——母について憶えていることはほとんどありませんが、夕日の中に消えていく母の背中は、淡い色彩を暈した背景をともなって今も私の眼裏(まなうら)によみがえります。
母の背中がおぼろに霞んで見えるのは、うっすらとした春霞が夕景色を包んでいたばかりではなく、しだいに遠ざかり行く母を、薄い涙の膜を透かして見送っていたためかもしれません。
私自身は記憶にないのですが、夕暮れ時になると母は近所の親