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仕事に疲れたらこれ観たい。アラサー労働者に寄り添う国内ドラマ15作(『獣になれない私たち』編)

小さな生活の声を掬い上げた国内映像作品をまとめてみました。何かと心が忙しいアラサーにドンピシャな名作、約50作。きっと1年くらいは生き延びられるはず……!

50作まとめてみると「仕事」「恋愛」「夢」とテーマがざっくり分かれたので記事を分けることにした。近年の名作映画&ドラマ1本をベースに、その時々の境遇に合わせた作品を紹介していくよ。最初は『獣になれない私たち』編・15作(“夢”をテーマにした『花束みたいな恋をした』編はこちら、“恋愛”をテーマにした『G線上のあなたと私』編はこちら)。

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『獣になれない私たち』あらすじ

脚本家・野木亜紀子が現代の労働問題や女性差別に踏み込んだ社会派エンターテインメント。優秀で気配り上手だが、それ故に身も心もすり減らしていく主人公・深海晶を新垣結衣が演じた。職場では上司の理不尽なパワハラに耐え、プライベートでは恋人にどこか“女性らしさ”を求められている。周りは変わらないまま、深海だけが少しずつ何かを諦めていく。人が少しずつ病んでいく様子を残酷に見せてはいるが、同じ境遇の者に優しく寄り添うような物語にもなっている。隅から隅まで現代の労働者に寄り添った作品。(配信:hulu)

ドリカム度:★☆☆☆☆
共感度:★★★★★
救われ度:★★★★☆

ドリカム度 →アラサーが観て夢が持てるかどうか
共感度 →アラサー視点で共感できるか
救われ度 →観終わった後に「人生なんとかなりそうだ!」と思えるかどうか

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●現状を変えたいがどうしたらいいかわからない

『獣になれない私たち』では、理解し合えない人間模様が描かれていて、そうした中でどう生きていけばいいのか改めて考えさせられる。そんな本作のような人間関係や社会状況を捉えた作品を4作。

『彼女たちの時代』
(脚本:岡田惠和)

ドリカム度:★☆☆☆☆
共感度:★★★★★
救われ度:★★★★☆

ままならない日々を過ごす全20代が共感するはず。理不尽な社会の中で自分の存在意義について考える26歳の葛藤を描いたドラマ。浮き立つような出来事もないままぼんやりとした日常を過ごす主人公、大手食品会社に勤務するもファミレスに出向させられ理不尽な目に遭う千津、「男には負けたくない」と仕事に奮闘するが職場では女性差別を受ける次子、不動産販売会社に出向させられ厳しい上司の元で売り込みをする啓介……女が、男が、社会で生きるということとは何なのか。華やかな展開はないけれど、だからこそ私たちの問題として感じ取ることができる。ちなみに、本作を制作するにあたって、オマージュしたのが山田太一脚本の『想い出づくり。』。
 
【配信】
FOD、Amazonプライム(レンタル)

『想い出づくり。』
(脚本:山田太一)

ドリカム度:★☆☆☆☆
共感度:★★★★☆
救われ度:★★☆☆☆

男女雇用機会均等法が施行される前の社会状況を描いた物語。ひょんなことから出会った24歳の女性たち(森昌子、古手川祐子、田中裕子)が結婚までに何か強烈な思い出を作りたいと奮闘する。周囲からは結婚の話ばかりされ、仕事では出世できるわけでもなく雑務を淡々とこなす。そんな社会のなかで、周囲に流されることなく自分の人生を生きたいと願う女性たちの姿は今観ても共感できる。

【配信】
Paravi

『問題のあるレストラン』
(脚本:坂元裕二)

ドリカム度:★★★★☆
共感度:★★★★☆
救われ度:★★★★☆

坂元裕二が労働問題や女性差別に踏み込んだドラマ。男性社会のあらゆる問題を抱えた女性たちがレストランを開店する物語で、『獣になれない私たち』に近い質感がある。はぐれたものたちで始めた店が徐々に成長していく展開は痛快。一方で、性別関わらず共に働ける社会への願いと分かり合えなさの両軸を描いていて、坂元裕二の社会への冷静な目線も感じられる。ちなみに、特に「きらきら巻き髪量産型女子」と言われていた藍里が好きだった。

【配信】
FOD

『わたし、定時で帰ります。』
(脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子)

ドリカム度:★★☆☆☆
共感度:★★★☆☆
救われ度:★★☆☆☆

残業しがちな日本人に訴える、新たな働き方とは。「仕事に犠牲は必要!? パワハラ攻略(秘)計画」とか「任せるとは信じる事完璧すぎ上司の弱点」とかドストレートに現代社会の課題に切り込んでいきながら解決まで導いてくれる教材的ドラマ。しかし、最終的には仕事ができなければ解決できない問題ばかりなので複雑な気持ちにはなる。

【配信】
Paravi


●晶のように仕事はデキるけど頑張れないとき

仕事をテキパキこなせる優秀な晶は、それ故に理不尽な仕事に振り回されることばかり。仕事に責任感はあっても、モチベーションはダダ下がる。そんな晶のような状況でどうにか頑張らなくてはならないときに観たいドラマ3作。

『タブロイド』
(脚本:井上由美子)

ドリカム度:★★☆☆☆
共感度:★★☆☆☆
救われ度:★★★☆☆

女性バディものならばこれ!26歳・新米新聞記者が夕刊紙に左遷させられ、年下記者・くるみとぶつかりながらも現場に向かっていく1話完結もので、事件を通して“メディアとは何か”を問う。また、社会で都合よく利用されてきた女性たちが主人公となる回も多く、そのどれもが女性を被害者としてではなく強かに描く。脚本家・井上由美子が女性たちにエールを送っているようなセリフがさりげなく入っていて、一言一言に泣けてくる。

【配信】
FOD

『重版出来!』
(脚本:野木亜紀子)

ドリカム度:★★☆☆☆
共感度:★★★★☆
救われ度:★★★★☆

仕事へのモチベが下がった時に観たい。一筋縄ではいかない漫画家たちや理不尽な出来事に振り回されながらもひたむきに仕事に向き合う主人公を見てると、自分も頑張ろうと思える。成果を出すためなら非常になれる“ツブシの安井”、初動で頑張りすぎてすぐに息を切らしてしまう新人漫画家や、夢を諦めきれないベテランアシスタント……夢と現実の残酷さもきっちり描いてる。

【配信】
Paravi

『忘却のサチコ』
(脚本:大島里美 狗飼恭子 山岸聖太)

ドリカム度:★★★★★
共感度:★★★☆☆
救われ度:★★★★★

仕事のモチベを上げつつ、癒しもくれるグルメドラマ。結婚式当日に恋人に逃げられて以降、仕事がままならなかった主人公が、ある定食を食べたことで美食に目覚める物語。文芸誌の編集者として完璧に仕事をこなす主人公だけど、彼女もまた傷ついたり挫折をしたりしていて、おいしいご飯を食べることでなんとか頑張れているんだと思うと勇気が出てくる。お仕事系としても、ラブコメとしても面白い。ほかほかのおにぎりが食べたくなる。

【配信】
Paravi

●晶みたいに優秀ではないけど悩みには共感する

晶に対して感情移入するものの、私は仕事ができない……どちらかといえば、人付き合いが苦手で社会に馴染めなかった朱里(黒木華)に近いかも。仕事ができない人たちの葛藤を描いたドラマ5作。

『ボクの就職』
(脚本:竹山洋)

ドリカム度:★★☆☆☆
共感度:★★★★☆
救われ度:★★★☆☆

会社にうまく馴染めない新入社員の青年が、困難を乗り越えながら成長していくヒューマンドラマ。ズルくならなければ生き残れない社会の在り方に疑問を抱く主人公は、私たちそのものでもある。また、唯一の女上司として働きながら、“女”としての業務には突っぱねる宝田(かたせ梨乃)の存在も良い。本作の主題歌は、忌野清志郎「サラリーマン」。

【配信】
Paravi

『ゆとりですがなにか』
(脚本:宮藤官九郎)

ドリカム度:★★☆☆☆
共感度:★★★★★
救われ度:★★☆☆☆

仕事ができなすぎる坂間と、気弱な山路に共感しかない。上司と部下に板挟みに悩む、ゆとり第一世代・29歳の男たちのドラマ。食品会社に勤めるも成績不振で居酒屋に出向させられた坂間、小学校の教師として生徒や親や教師同士の問題に悩む山路、何かとふらふらしてるまりぶ。セクハラやパワハラはなくてもなんだかしんどい人生を可笑しみ込めて描く。

【配信】
Hulu

『恋愛結婚の法則』
(脚本:樫田正剛、金子ありさ、大森美香)

ドリカム度:★★★★★
共感度:★★★★☆
救われ度:★★★★★

90年代の働く女性たちが抱える仕事や恋の悩みを描いたラブストーリー。32歳独身OLが主人公。苦情センターから営業部に配属され、慣れない仕事でミス連発。肩たたきに遭う寸前であることも自覚している。会社からはお荷物だと思われ、年下の同僚からは嫌味を言われる日々。そんなさえない主人公をキョンキョンがはつらつと魅力的に演じてくれてて嬉しい。また、物語後半になっていくと、主人公最大モテ期がやってくるのでドリカム度は星5。

【配信】
FOD

『ダメな私に恋してください』
(脚本:吉澤智子)

ドリカム度:★★★★★
共感度:★★★★☆
救われ度:★★★★★

仕事に失敗して自信を失った時に観たい。資格なし、特技なし、貯金なし、その上に貢ぎ体質な女子を、悲哀を見せずにポップに演じる深キョン最高。そして魅力的な男子からモテまくるという夢のような展開。この深キョンのおかげでダメな自分のことも肯定された気分になる。

【配信】
FOD

『恋ノチカラ』
(脚本:相沢友子)

ドリカム度:★★★☆☆
共感度:★★★★★
救われ度:★★★★★

クリエイティブに属すも仕事ができず庶務課に左遷、仕事も恋もイマイチで夜な夜なワインを飲む日々が続く30歳OLが主人公。ヘッドハンティングされたと思ったら人違いでガッカリされるし、雑な扱いも受ける。“選ばれなかった”側の人間を魅力的に見せてるところも好き。本作における深津絵里の天真爛漫な演技は『ブリジットジョーンズの日記』のレニー・ゼルウィガーみたい。

【配信】
FOD

●晶が仕事終わりや日曜日に観てそうなドラマ

晶が仕事終わりに息抜きできる唯一の場所といえば、クラフトビールバー「5tap」。もし「5tap」がなかったとしたら、これを観て気分をリフレッシュさせてるんじゃないか……な3作。

『架空OL日記』
(脚本:バカリズム)

ドリカム度:★★★☆☆
共感度:★★★★★
救われ度:★★★★★

気分が落ち込みがちな日曜の深夜とかに観たい。バカリズムがOLになりきって綴ったブログを映像化した作品。仕事に対する鬱々した気持ちを、O Lたちが悪口で発散していく様子が痛快。友達よりも仕事の愚痴は吐き出しやすいけど、友情と呼べるほど手堅い関係性でもない。OL同士の微妙だけど特別な関係性を垣間見れる。

【配信】
Hulu

『住住』
(脚本:バカリズム、オークラ、安部裕之)

ドリカム度:★★★★☆
共感度:★★★☆☆
救われ度:★★★★☆

バカリズム×若林×二階堂ふみが同じマンションに住んでたらーー3人が徐々に仲良くなっていく様子が面白い。3人がなんとなく共有していそうな鬱屈感が、夜中同僚たちと会社でダラダラ話すあの雰囲気と重なる。この時間がずっと続けばいいのにという気にさせてくれるので、こちらも日曜深夜に観たい。EMCのエンディングが全てを表してて好き。

【配信】
Hulu

『すいか』
(脚本:木皿泉、山田あかね)

ドリカム度:★★★☆☆
共感度:★★★★☆
救われ度:★★★★★

何もかも手放したくなるときに観たくなるドラマ。信用金庫に勤める34歳独身OL・基子と同期・馬場ちゃんを軸に物語が展開されていく。馬場ちゃんは3億円を横領して逃亡する一方、基子は大学生の大家、売れない漫画家、大学教授と下宿生活を送ることに。お金を手にして孤独になった馬場ちゃんと、下宿所で温かな関係性を築いていく基子。自分で何かを選択するということ、誰かと食事をして会話をするということ、そして日常の尊さについて考えさせられる。

【配信】
Hulu

【まとめ】

ということでまず最初は「仕事」にまつわるドラマを中心に15作品。“観ず嫌い”な作品も結構あったんだけど、改めて観直してみると、疲弊した市井に目を向けたドラマってたくさんあったんだなと知る。でも本当に素晴らしい作品を見つけるのは、砂漠で砂金を見つけるようなもの……。

そもそも晶のように超多忙な一人暮らし民は、カルチャーに費やす時間もお金も気力もないかもしれない。ある作品に何時間も費やしてる間に、仕事の電話が来ないか心配だし、もしその作品が自分に合わなかったとしたら落ち込む。確実に自分に合う作品であるかもわからないものに、大事な時間を使うことが不安な人も多いんじゃないかな。そうしてカルチャーから徐々に離れていく。『花束みたいな恋をした』の麦くんはまさにそういう人だった。

だけど、国内ドラマは多忙な社会人とカルチャーを再び繋いでくれる。セリフは説明的でわかりやすくて、やり残した仕事を片付けながらでもある程度ストーリーを把握することができる。それは決して“正しいみかた”とは言えないけれど、ふと耳に入ってきたセリフが誰かを救ってくれることだってあるかもしれない。真剣に観るのはそこからでもいいんじゃないかと思う。そうしてまたカルチャーの魅力に気がついていく。

国内ドラマはダメだとか言われがちだけど、私はそうは思わない。主人公たちの叫びは市井の声そのもの。それに真剣に向き合ったとき、私たちは見て見ぬ振りをしてきたものに気付かされる。


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