北原灯

小説を書きたいです。うさぎと暮らしています。昔、ねことも暮らしていましたが、今はいませ…

北原灯

小説を書きたいです。うさぎと暮らしています。昔、ねことも暮らしていましたが、今はいません。

マガジン

  • ワタクシゴトですが

    ブログのような、日記のような、雑記のような。日常の独り言みたいなものを収めています。

  • 短いお話

    1話完結の短編です。ジャンルは様々になると思います。

  • おしゃべりは、いつもふたりで

    猫のきなこと、うさぎの道明寺。ふたりだけでいる時は、かの子(お世話係)がいる時よりもすこしだけおしゃべりです。寝る前に読める、穏やかで心のざわつかないお話。(に、なる予定)

最近の記事

樹木葬

先週、一昨年他界した祖母の納骨式に参列してきました。 樹木葬という、ちょっと変わったものだったので、すこし書き留めておこうと思います。 その前に、少しだけ家族的な背景を。 祖母は母親代わりに私を育ててくれた人で、とても穏やかな人でした。 私の母は気性が荒く自由奔放で、気性が荒く独占欲の強い父とソリが合わずに離婚したのですが(なぜ結婚したのかは永遠の謎)、父方に託された当時7才の私を不憫に思って、週3日、通いでわが家に来てくれていたのが母方の祖母でした。 ただ、母方の祖母とい

    • 精神安定ミント

      ファミマのチョコミントパンケーキとエッセルスーパーカップのチョコミントアイス。 別々に食べてもおいしいけど、アイスをのせて食べてもおいしい。 ミニチュアスナイパーも狙っちゃうくらい。 ミント苦手な人にはゲテモノ食いに見えるかもしれませんが。 子どもの頃からミントやチョコミントが大好きです。 ミント苦手な友人は脊髄反射的速度で「ハミガキコ食べてるみたいで」と眉をひそめますが、食用のハミガキコがあるならむしろ食べてみたいわ、と。 それくらい好き。 こういう時、「あなたの萌え

      • 選んでもらった本を読む

        最低でも月に1冊は小説を読もう、そう決めて早5ヶ月がたちました。 しかし、読んだ本はまだ2冊半。(実用書はノーカウント) 月に1冊というのだって、かなり余裕をもたせた数字だったはずなのに。 このままでは小説を見ただけで自己否定感がわき起こる嫌なリレーションができてしまうかもしれない。 それはマズい。 そんなわけで、今月は少し早く読めそうな内容の本を選ぶことにしました。 ズルいかな? と思いつつ、でも普段こういうアプローチで本を読むことはないから、逆におもしろいものに出会えたり

        • おしゃべりは、いつもふたりで(7)

          『とっておきの休日~何もしない宣言と恐怖のテレビ』  今日は何もしない。  ごはんを食べたり、テレビを見たり、道明寺やきなこと遊んだりはするけれど、それ以外は絶対に何もしない。  そう心に決めたかの子の前に今、最大の敵が姿を現わした。  テレビ――人類が生み出した史上最悪の情報モンスターが今、10連勤明けのかの子に牙をむこうとしているのだ。  髪も梳かず顔も洗わず、当然のようにパジャマ姿でソファに横たわるかの子。  これからどんな苦難が待ち受けているのか、この時はまだ、かの

        マガジン

        • ワタクシゴトですが
          5本
        • 短いお話
          1本
        • おしゃべりは、いつもふたりで
          7本

        記事

          オリジナルは偶然と経験の産物

          明日は夫の誕生日なので、ただいまチーズケーキを焼いています。 45分焼けばできあがり。一晩おけば、より味が馴染むそうで。 いま夫は出張に出ていて明日帰ってくるから、ちょうどいい。 けど、夜は外で食事しようと思ってお店を予約したんだった。 じゃあ、いつチーズケーキ食べるんだろう。 食事をして、帰ってくるのはきっと22時過ぎ。 多分、お酒も入っているはず。そこからのチーズケーキ? ……まぁ、いいか。もう焼いちゃってるもの、仕方がない。 そんなわけで、45分。さっき洗い物をしたので

          オリジナルは偶然と経験の産物

          おしゃべりは、いつもふたりで(6)

          『とっておきの休日~前夜の狂乱』 仕事からの帰り道、かの子は乗り換えついでに駅ナカでお惣菜を買った。  トマトとアボカドのサラダを200グラム、小さなハンバーグをふたつ、ブルーベリーのパンと塩パンがひとつずつ、チキンとチーズのグラハムサンドを1パック。  飲み物は家の近くのコンビニで買おう。両手首にぶら下げたたくさんのビニール袋を見てそう思ったのに、紅茶のリーフを量り売りしている店の前で足が止まってしまった。 〈ダージリン ファーストフラッシュ、入荷しました〉  もう、そんな

          おしゃべりは、いつもふたりで(6)

          143日目の再スタート

          はじめまして、北原灯と申します。 noteの存在を知ったのは数ヶ月前。すぐに登録をしました。 しかし実際に投稿をしたのはそこから数ヶ月たったあと。 しかも、いくつか投稿したらぽっかり間が空いてしまう始末。 ああ、やはりこうなってしまったか……と自己嫌悪に陥っている暇があったら一文字でも書こう。 そう思い直して、自分勝手に何となく封印していたブログ的な、いや、日記的な、いやいや、裏紙に走り書きしたメモ的な雑記を書くことにしました。 そもそも、なぜ封印した方がいいと思っていたの

          143日目の再スタート

          おしゃべりは、いつもふたりで(5)

          『ハレとケ、というほどではないけれど』19時ちょうど、道明寺の部屋の片隅で機械的な音が小さく鳴った。 それを合図に、もっぱら寝室として使っているロフト部分から、真っ黒い影が動きだした。 無灯の室内で黒いものが動いても、普通の人間ならちょっとわからないかもしれないが、今ここにいるのは道明寺ときなこだけ。カーテンのひかれていない窓から差し込むわずかな街の灯さえあれば、お互いを察知することは十分に可能だ。 「今日はかの子は遅いのか?」 いま開いたばかりの自動給餌器から1粒、2粒

          おしゃべりは、いつもふたりで(5)

          魔王としもべ

          無彩色の魔界の空に、一羽の黒鳥が飛んでいた。 鬼女の顔を持つその鳥は、間近で聞けば寿命を奪うと伝わる金切り様の鳴き声をあげながら、魔界で最も高い山の頂にそびえる魔王の城を目指している。 魔城は宙を貫く尖塔を無数に有し、バルコニーには朽ちたツタと腐臭を放つ屍の花が満ちて——いたのは、1年ほど前の話。 いまやそこには淡い紅色の沈丁花が咲き乱れ、塵ひとつ落ちてはいない。 花を散らさぬよう、黒い翼は鈍く光る真鍮の手すりにそっと舞い降りた。 微かな風に沈丁花の花びらが揺れる。 辺りに漂

          魔王としもべ

          おしゃべりは、いつもふたりで(4)

          『二本足サイド(2)』電話の向こうから母の笑い声が聞こえてきた。 「雪、降ってるんだって?」 私のところに遊びにきていた母が、東京は暑すぎるといって札幌の家に帰っていったのが一昨日の夜。空港で見送って帰る途中、なんだか寒いと思ってはいたけれど、まさか3月に雪が降るとは。 「先週、上野に連れていってもらったとき、桜、咲いてたわよね」 「そうだね、早咲きの種類だったらしいけど」 「変なところね、東京って」 たまたま例年より暑かったり寒かったりしているだけで、別に東京が変な

          おしゃべりは、いつもふたりで(4)

          おしゃべりは、いつもふたりで(3)

          『二本足サイド(1)』「あら、きなこチャン。お久しぶり、元気ぃ?」 頭のてっぺんから噴出したような高い声で、母はきなこにあいさつをした。 「相変わらずゴージャスなしっぽねぇ。襟巻きにしちゃいたい」 シルバーフォックスの襟巻きを外して壁のハンガーにかけながら、うふふと笑う母。彼女を見るきなこの視線はいつにもまして冷たい。 「で? こっちの黒いうさチャンは……さくらチャンだった?」 「道明寺だよ」 「ああ、そうだったわ。アナタ、桜餅は道明寺派だものね。葉っぱばかり食べる子

          おしゃべりは、いつもふたりで(3)

          おしゃべりは、いつもふたりで(2)

          『ヒトの言葉』テレビの中、数人の男女が早口で持論を熱く語っていた。 きなこはソファで丸くなりながらそれを見つめ、何となくわかったときには一度、全然わからなかったときには二度、まばたきをした。 「言葉、ずいぶんわかるようになったみたいだな」 すこし離れたところから道明寺が声をかけた。シルバーのラックに足を投げ出して、大して興味もなさそうに、しかし少年のように潤んで輝く瞳はしっかりときなこを捉えている。 「早口だとまだわからないこともあるけど、だいたいは」 「たいしたものだ

          おしゃべりは、いつもふたりで(2)

          おしゃべりは、いつもふたりで(1)

          『満月の夜は何かが起こる』電気のついていない部屋の中、雑に開けられたカーテンに身を隠すようにしてきなこは窓の外を見た。 「今日は満月なのね」 都会の空に星は少ない。今日は余計に少ない気がする。金曜だから、皆、夜の街にくりだしているのかもしれない。 しかし月はまわりに誰もいなくなってもおかまいなしで、一寸の欠けもない堂々とした姿で静かにいつもの場所にいた。 「なによ、ちょっとかっこいいじゃない。ねぇ、道明寺?」 返事はない。そのかわり、部屋の奥の空気がかすかに動いた。

          おしゃべりは、いつもふたりで(1)