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北原灯
2018年3月31日 00:49
無彩色の魔界の空に、一羽の黒鳥が飛んでいた。鬼女の顔を持つその鳥は、間近で聞けば寿命を奪うと伝わる金切り様の鳴き声をあげながら、魔界で最も高い山の頂にそびえる魔王の城を目指している。魔城は宙を貫く尖塔を無数に有し、バルコニーには朽ちたツタと腐臭を放つ屍の花が満ちて——いたのは、1年ほど前の話。いまやそこには淡い紅色の沈丁花が咲き乱れ、塵ひとつ落ちてはいない。花を散らさぬよう、黒い翼は鈍く光