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一帯一路の研究について覚書

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(写真はThe Straits Timeの2017年の記事から)。

今回は、過去2週間、米国社会科学協議会のインター・アジア・アカデミーに参加してみての一帯一路構想に関しての覚書。

一帯一路構想についての研究はここ数年で凄まじい量に増えている。そして、中国語・英語・日本語の他、かなり多くの国の研究者が関心を持っていることもあり、先行研究を全てカバーしていくのが不可能になりつつある。

それでも主だった既存の研究は、大きく分けて3種類に分けられる。

リアリスト(国際関係論)

1つ目が、国際関係論で言うところの古典的リアリストのスタンスで、中国による覇権主義として一帯一路構想について考察しているもの。これらの作品は、主に超大国間の覇権争いの一部としてこのプロジェクトを観る。20世紀以来、アメリカが覇権国家として君臨してきたのが、冷戦後の一極状態からの変化として捉える。ある者は、中国が米国に取って代わるプロセスと考え、他の者達は多極化の現れと考える。

例えばある人は、「多極化」という言葉で、アジア(人口や経済)、EU(経済、政治体制、アイディア)、米国(軍事力や教育)など、やや異なる分野に強みを持つ3つ、勢力均衡を保つ方向に向かうものとしてみる。中国のアジアにおけるNo.1のポジションはおそらくゆらがないけれど、アジア地域においてさえ、経済や人口で中国は全体の3分の1の勢力を越えないという推測がある程度たっているので、アジア域内でさえも、中国、インド、ASEAN、日本など、多極から成る構造になると考える。

経済地理学、デイビッド・ハーベイ

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内容はアジアの歴史・政治・思想・社会・文化・経済などについて、古典から最新の研究の動向、日々の発見など広く論じます。 人文学・地域研究・哲学・歴史・アジア各国などに関心のある方におすすめです。

土屋喜生(シンガポール国立大研究員・歴史学博士・東南アジア学修士、法政大学国際政治学学士)がグローバル・アジア研究について報告していきます。

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