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短歌

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#青春

山茶花

山茶花を一本手折らん繁りあう枝より青き空に手を入れ

ゆるゆると壁這う蜘蛛の小さきは止まりてただに汚点となりぬ

短夜の童子の時を悲しみて樹木は齢をふかめいるらん

遥かなる記憶ゆすりて脳髄を突き抜けてゆく野風春風

血を流さず河の流れに逆らわず生きるや我は人形となりて

寂しさを拭く

カラカラと紡ぎいる糸切れたままオイテケ堀に沈む夕焼け

誰彼のせいにしてしばし忘れたるも逃れられ得ぬ自らのこと

PCに埃たまりていることも寂しさのひとつ寂しさを拭く

アスファルトの下は全部土である・・・想い想われ九重連山

「鄙びた」とう演出もよし旅人である私は秘湯に浸る

誰よりも君の味方であることを忘れてないか今日問うている

風に舞うさくらひとひら地に還り何もなかったように時過ぐ

過去となる時の宿命(さだめ)を閉じ込めて物語りせん古きアルバム

空澄みてあるかなきかのたまゆらの風のかけらが髪に残りぬ

残業の疲れを纏う男らと並びぬホームの風を受けつつ

駱駝の瞑想

瞑想もいいが寂しき公園の膝を折りたる駱駝の背中

革ツナギ吊るせば丸き吾のかたち残しておりぬ抱き寄せてみん

ブタ草の季節にズーズー鼻鳴らす花粉症時期ブタと化したり

不思議なることのいくつか調べずにいれば神秘は神秘のままで

横長のバスタブ浅く湯を張れば日本列島の形に沈む

鉛筆を削れる世代というよりは器用な我と不器用な君

乗り越える少しの力の源は引きずるものの負荷にこそあれ

いつだって中途

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