マガジンのカバー画像

Random Walk

288
執筆したショートストーリーをまとめています。
運営しているクリエイター

2023年12月の記事一覧

【ショートショート】クリスマスの忘れ物

【ショートショート】クリスマスの忘れ物

「ねえ、なんでこのケーキ屋さんはクリスマスツリーをまだ片付けないの? もうクリスマスは過ぎちゃってるよ」
 無垢な瞳をした少年にそう話しかけられて、店内の掃除をしていた私はピシリと固まった。そういえば片付けろと言われていたツリーを店の外に出しっぱなしだった気がする。私は少年を引き連れてツリーの所まで行き、「MerryCristmas」と模られたオーナメントにちょっとした細工をする。
「ほら、ここに

もっとみる
【ショートショート】表彰台

【ショートショート】表彰台

偉業を達成した男性にインタビュアーがマイクを向けている。
「苦節二年。今のお気持ちはいかがですか」
「まさに感無量です。」
 男性が立っていたのは表彰台だ。しかしただの表彰台ではない。それは高さがエベレストをも凌ぐ超巨大な表彰台だった。二年前の今日、突然現れたなんか四角くて青い体で黄色い唇をした謎の宇宙人がどかんと太平洋に落っことしていったものだ。
 それを見て多くの人々は困惑したが、一部の人間は

もっとみる
【ショートショート】白骨化スマホ

【ショートショート】白骨化スマホ

「白骨化スマホを手に入れたんです」
 同僚のアレックスが嬉しそうにそう告げてきた。
「……は?」
 思わず目が点になる。白骨化、スマホ? アレックスは来日してからまだ日も浅いのでときどき不思議な日本語になるのだが、しかし白骨化スマホとはいったいなんだろうか。
 戸惑っているこちらの様子に気がついたのか、アレックスがポケットからスマホを取りだしてこちらに見せてきた。
 目の前に差し出された物を見て、

もっとみる
【ショートショート】荒野を行く

【ショートショート】荒野を行く

ガタゴトと音を立てて、一台のトラックが荒野を走り抜けていく。
運転席では男性がハンドルを握っている。
助手席にも男が一人座っており、不貞腐れた様子で運転席とはそっぽを向いて窓の外を眺めている。
「なあ、そんなに怒るなって。俺が悪かったからさ」
運転席の男が宥めるように言うが、助手席の男は視線を窓の外へと向けたままだ。しかし運転席の男は諦めることなく、なあ、おい、としつこく何度も声をかけ続ける。しば

もっとみる

【ショートショート】初期ステータス

「ふあああ……おはようございます、博士。なんです、そのおもちゃの銃みたいなものは」
研究所二階の自室から降りてきた助手は博士が手にしているものを見て首をかしげる。博士は徹夜したのか真っ赤な目で興奮気味に告げた。
「おお、助手ちゃんか。見たまえ、ついに完成したぞ。これがゲームの中に入れる装置じゃ!」
言いながら問答無用で助手の女の子にビームを浴びせる博士。
ビビビビ。
「ちょっ、まっ、私まだパジャマ

もっとみる