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【ショートショート】白骨化スマホ

「白骨化スマホを手に入れたんです」
 同僚のアレックスが嬉しそうにそう告げてきた。
「……は?」
 思わず目が点になる。白骨化、スマホ? アレックスは来日してからまだ日も浅いのでときどき不思議な日本語になるのだが、しかし白骨化スマホとはいったいなんだろうか。
 戸惑っているこちらの様子に気がついたのか、アレックスがポケットからスマホを取りだしてこちらに見せてきた。
 目の前に差し出された物を見て、ようやく意味が分かった。
「ああ、なるほど。スケルトンってことね」
 彼が差し出してきたスマホは筐体が透明なプラスチックで出来ていた。90年代後半に流行った、いわゆるスケルトンカラーというやつだ。本当は英語だと「クリア」が正しいのだけど「透ける」の語感から「スケルトン」という呼び名で定着してしまった。
 嬉しそうにスマホを触っているアレックスを見ながら、そういえば自分も初めて手にした携帯電話はスケルトンカラーだったな、なんてことを懐かしく思い出すのだった。



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