見出し画像

【ショートショート】表彰台

偉業を達成した男性にインタビュアーがマイクを向けている。
「苦節二年。今のお気持ちはいかがですか」
「まさに感無量です。」
 男性が立っていたのは表彰台だ。しかしただの表彰台ではない。それは高さがエベレストをも凌ぐ超巨大な表彰台だった。二年前の今日、突然現れたなんか四角くて青い体で黄色い唇をした謎の宇宙人がどかんと太平洋に落っことしていったものだ。
 それを見て多くの人々は困惑したが、一部の人間は沸き立った。
 それは登山家である。
 世界で最も高い山であるエベレストを1953年にエドモンド・ヒラリーが初登頂して以来、彼らには「世界で最も高い場所は既に登頂済み」という悩みがあった。それがある日突然、目指すべき目標が空から落っこちてきたのだ。それから二年、多くの登山家が挑んだ表彰台に、一人の男性が登頂を果たしたのだ。
「今日は私の人生で最も素晴らしい記念日になりました」
 男性は誇らしげにそう告げて、謎の感動を人類にもたらしたのだった。


更なる活動のためにサポートをお願いします。 より楽しんでいただける物が書けるようになるため、頂いたサポートは書籍費に充てさせていただきます。