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【岸辺露伴 ルーヴルへ行く】作品に敬意を払え【ネタバレあり】

こんばんは、如月伊澄です。
タイトル長いね。

タイトルの通り、ネタバレありです。
映画視聴してから読むのをオススメします。










「警告された上でよォ~一線を踏み越えてくるってことは、ネタバレされる””覚悟”があるってことだよなァァ~?」







【作品に敬意を払え】

全編を通してのテーマとして「作品に敬意を払え」がある、と思いました。
いい作品のお手本のように、導入で全てしっかり説明されているんですね、だから視聴者はすっと物語の世界に入っていけるし、そのメッセージ性に戸惑わず進むことができる。

そこに差し込む光は、暗闇の荒野に進むべき道を切り開いてくれる。

考えたことをお話していきますね。
それを話す前提として、まずこちらの記事を読んでいただきたいのですが、長いので「ンなもん読みたくねーよ」という方は、せめて下にある文章だけでも読んでいただけると嬉しいです。

簡単にまとめると「最初はこれから何が始まるか説明するパートですよ」ということ。大まかな設定や前提条件を予め共有しておくことで、視聴者が映画の世界に入り込みやすくすることを狙います。

あえて冒頭から読者の興味を惹くような結論を持ってくることで、関心や興味を引き、そこからカメラを遠景に切り替える導入方法を「インパクト有線型」の導入といいます。

最初に強めの結論を持ってくることで、視聴者の関心を引き出す方法ですが、一見してネタバレのようにも見えて、前後の流れを打ち切っているので、そうはなりません。

さて、前提条件を開示したところで本編に戻りましょう。

「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」の始まりは、ある古物商のところへ露伴先生が買い物(取材)に来るところから始まります。

作品の価値もわからない、人を見る目もない。
盗品を扱い、作品に敬意を払うことさえしない店主に、露伴はヘブンズドアーで「全ての作品に敬意を払うこと」と書き込みます。

この導入により視聴者は「露伴先生の人柄とリアリティへのこだわり」「”ギフト”と呼ばれる不思議な能力を扱うことができる」「漫画家であり、人気作家である」と、キャラクターの設定や前提条件を把握することができるようになっています。

これにより全くジョジョ、岸辺露伴シリーズを知らずに、ただサスペンス映画として見に来た人でも置いて行かれることなく、物語を楽しむことができるでしょう。

名探偵コナンの映画で「怪しい取引に夢中になって、黒ずくめの男に~子供になっていた!」を毎回やるのも、たぶんこのためです。

さらに言えば、この導入はこの後の物語の流れを、あらすじのように書き切っています。

キーワードとしては「骨董品(絵画含む)」「贋作と真作(露伴先生はそれを見抜くことができる眼をもっている)」「作品への敬意」「ヘブンズドアーは窮地を乗り越える力がある」そんな感じでしょうか。

続けて担当編集の泉クンとの日常とオークション。
ここでは泉クンのキャラクターと露伴先生との関係性を描きながら、今回の核心となる「黒い絵」に近づいていきます。

露伴先生に縁深い「蜘蛛」も出てきますね。
見ながらいつ「味もみておこう」をしないかハラハラしていました。
結局しなかったけど、隠れている裏でやってるんじゃないかと思える映し方をしていて、凄かった。

物語は「黒い絵」を中心にルーヴルへと集約されていきます。
過去から連なる恨みと憎しみ、後悔の物語。

もしかすると「ネタバレ」と書いているのに、平気で読み進めている読者がいるかもしれないので、物語の核心と終わりについては触れないでおきますが、今回の騒動の原因は「作品への敬意がなかった」ことがあるのではないでしょうか。

もし父親が「作品への敬意」をもって仁左右衛門に接していたら、彼が”黒”に執着しすぎることはなかったのかもしれません。

跡継ぎの弟が「作品への敬意」を払っていれば、奉行所にタレこむことはなかったかもしれませんし、結果奉行が刺されることも、仁左右衛門の狂気が引きずり出されることもなかったかもしれない。

贋作師が、グループが、贋作作りに手を染めなければ、世界一邪悪な黒い絵は誰の目にも触れることなく、今も倉庫で眠り続けていたのかもしれない。

誰もが「作品への敬意」を忘れ、己が見栄に、欲に、金に眼が眩み、その邪悪を、漆黒を生み出してしまった。

全ては最序盤に露伴先生が書いた言葉「全ての作品に敬意を払うこと」ができていれば、こんな痛ましい出来事は起こらなかったのでは。

だからこそ「作品に敬意を払える」露伴先生こそが、過去との鎖を断ち切る形で、恨みと悲しみ、憎しみと後悔の物語にピリオドを打ったのではないか、と思えるのです。

つまり、全ては導入で説明されていて、それを裏付ける根拠として本編のストーリーがある。
一貫したテーマがあるからこそ、視聴者は迷わずその物語に身を任せ、エンディングまで世界観を、ストーリーを楽しむことができるのでしょう。

【この物語が教えてくれること】


「作品へ敬意を払え」

この言葉は現代社会の私たちへ、鋭い刃を突きつけます。

SNSが発達し、心ない言葉を作者に投げかける人。

誰かの絵柄を学習させ、まるで自作のようにAI出力された絵を発表するもの。

違法アップロードに盗作、その他いくつもの創作に関わる問題に私たちは直面しています。

その根底にあるのは、この「作品への敬意」の欠落ではないでしょうか?
ないがしろにされた作品達の復讐が、恨みや憎しみが、いつかその牙を剥く日が来るのかも知れません。

例えば、いつの間にか自分のパソコンからアップロードされている「世界一黒い絵」とか、ね。


【ひとこと】
最初のコメント、ジョジョとチェンソーマンが交ざってる気がする。
「ことだよなァァ~?」はデンジっぽいな、なんか。


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